前回は「織田家に仕え始めた秀吉〜民衆の底力・兵農分離以前の軍隊・清洲城塀の迅速な修理・「桶狭間の戦い」の秀吉・今川義元の本陣と今川軍〜」の話でした。
信長と秀吉の謎:桶狭間の戦いの謎
桶狭間・田楽狭間の戦いの時の秀吉の活躍に関しては、詳しいことは分かっていません。
多くは、想像や創作の域を出ません。
戦前から長い間、「信長が今川義元を側面から奇襲した」という説が流布していました。
この説は、戦前の参謀本部の公式見解だったとも言われます。
1990年頃から「側面奇襲」は見直され、「信長が正面攻撃をした」という説もあります。
おそらく参謀本部の考えは、
我が大日本帝国よりはるかに
国力が上の米国との戦争・・・
そもそも「主要軍需物資の大部分を米国から輸入していた」大日本帝国。
よりによって、最強国であり「軍需物資を頼っていた」米国と戦っては、「勝ち目はない」のです。
どう考えても、
我が国が不利だ・・・
ここで、「桶狭間の信長の側面奇襲」を大々的に持ち上げて、
信長の如く、奇襲攻撃に成功すれば、
米国にも勝てるかもしれない!
「桶狭間の如く戦う!」と宣伝したのでしょう。
正常な頭脳と神経を持つ人間にとっては、どう考えても「米国に勝てるはずがない」戦争でした。
考えようによっては、
信長は、準備万端で自国奥深くへ
義元を誘い込み・・・
一気に雌雄を決して、
勝利したのだ!
こう思い込むことで、「大日本帝国の勝利」を自分に言い聞かせていたのかもしれません。
この「引きつけて奇襲攻撃」の最たる戦略コンセプトが、日本海軍の「日本近海での迎撃」だったのでしょう。
謎に満ちた今川義元の本陣の位置:三人の天下人が全員関与
今川義元が討たれた時、谷間にいたのか山上に陣取っていたかすら諸説あり、真相は不明です。
織田家は経済力が高く、今川家には及ばないものの8,000人ほど動員は可能だったでしょう。
それでも軍事力が劣り、25,000人の今川軍に対しては「1/3程度の劣勢」です。
そこで、平野での戦いではなく、「本陣を奇襲」で勝利したのでしょう。
いわば「信長の大出世のきっかけ」となった桶狭間の合戦。
これほど有名な大合戦の「奇襲なのか正面突破なのか」という基本的真相が不明であること。
そもそも「田楽狭間」という「谷にいた」と言われる今川義元の本陣。
別の説では、「田楽狭間にいたが、本陣は山の上だった」という話もあります。
なにもかもが「不明」であり「真相が分からない」こと。
それは、後の天下人の信長・秀吉・家康全員が関わっている点で、「非常に不可解なこと」でもあります。
信長公記他で色々な描かれ方をしていますが、書籍によって実に様々です。
情報を集めた形跡がない武田信玄:山本勘助の「桶狭間」への関与説
「戦いの真相」は不明なことが多く、多くは伝聞・二次情報によります。
戦国時代の合戦では、ベスト10入り確実の「桶狭間の合戦」。
その「真相が謎」というのは不思議です。
戦好き・軍略好きの武田信玄なら、諜報部隊を総動員しても調べて記録に残しそうです。
名前 | 生年(一部諸説あり) |
毛利元就 | 1497年 |
今川義元 | 1519年 |
武田信玄 | 1521年 |
上杉謙信 | 1530年 |
織田信長 | 1534年 |
そもそも、戦国時代において「やや年上」であり、老練な印象が強い信玄の「さらに2歳上」の義元。
「桶狭間」での失態から、長年愚将のように扱われてきた義元ですが、一定以上の力量があったのは間違い無いでしょう。
信玄にとって「家柄が上で、先輩である」義元の不慮の死。
しかも、自分より「13歳も歳下の若造」信長が引き起こした大事件。
今川義元が
首を取られた、だと?!
そんなバカなことが
あるか!
詳しく合戦の状況を
調べて、報告せよ!
ははっ!
諜者・忍者たちを大至急尾張へ向けます!
武田信玄は「全力で真相を調べたはず」なのに、「情報を集めた形跡がない」のです。
「謎の軍師 山本勘助(管介)が関わっていた説」もあります。
「山本勘助説」もまた後世の創作でしょう。
仮に勘助が関わり、「今川義元敗死」に結びついたとしたら、
「桶狭間」のことは、
記録には残すまい・・・
信玄は「あえて深追いせず、記録にも残さない」姿勢だったでしょう。
ところが、山本勘助の存在すら不確かであり、近年は「勘助(管介)は実在するも、立場が不明」という存在。
「記録に残さない」であれば、「不明」である理由もあるでしょう。
そして、武田信玄が駿河に侵攻したのは、「桶狭間」の8年後の1568年。
仮に「信玄が勘助に指示し、今川義元敗死の黒幕」であれば、駿河侵攻は遥かに早かったはずです。
すると、「桶狭間への勘助関与説」は否定されます。
とにかく、謎多き「桶狭間の合戦」の真相。
歴史を転換した極めた大きな合戦・事件、三人の天下人が全員関与したにしては、謎が多すぎるのです。
次回は上記リンクです。