前回は「欧米における「小柄なYamamoto」の圧倒的存在〜慎重すぎるほど熟慮するキング司令官・イライラが爆発するハルゼー司令官〜」の話でした。
山口司令官の提言を生かそうと考える山本長官
南雲機動部隊の「中途半端」とも言える真珠湾奇襲攻撃に対して、
・・・・・
今ひとつ納得がいかない山本長官。
宇垣
参謀長・・・
まだ、南雲の機動部隊には、
余力があるな・・・
はっ!
十分すぎるほどの余力があります。
第二次攻撃をする
準備ができていたくらいですから・・・
うむ・・・
そうだな・・・
ここで、山本長官は暫し瞑目して考えます。
・・・・・
そして、第一航空艦隊司令長官人事で紛糾し続けた「真珠湾攻撃前」の協議を思い起こします。
実際に、かなり
困難が大きかった真珠湾奇襲攻撃だったが・・・
確かに当初の予定よりも
遥かに上手くいった攻撃だ・・・
「乾坤一擲の超大作戦」であった真珠湾奇襲攻撃。
山本長官は「連合艦隊の空母損失ゼロ」を心から願っていたものの、
現実問題としては、
ハワイに大打撃を与える以上・・・
こちらの空母一隻ほどは
撃沈されるのもやむを得ん・・・
こう考えていたに違いないでしょう。
この「山本長官の懸念」を吹き飛ばして、南雲機動部隊の奇襲攻撃は極めて順調に行きました。
ただ、「米空母への大打撃」が完全な空振りに終わってしまいました。
こちらの空母一隻に
全く損失が出ていないのは何より・・・
だが、だがだ・・・
米空母への打撃もまたゼロか・・・
実は「事前に日本海軍の攻撃をある程度想定していた」米国。
これは、「事前に日本海軍の攻撃を察知していた」から空母を避難させたのでした。
ここで、山本長官は「山口司令官の発言」を思い出しました。
作戦計画中に、山口がハワイ周辺の基地を叩くことを
主張していたな・・・
はっ!
山口らしい作戦です。
宇垣参謀長と山口司令官は、海兵同期(40期)です。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 専門 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 航空 | 連合艦隊司令長官 |
40 | 宇垣 纏 | 大砲 | 連合艦隊参謀長 |
40 | 大西 瀧治郎 | 航空 | 第十一航空艦隊参謀長 |
40 | 福留繁 | 大砲 | 軍令部第一部長 |
40 | 山口 多聞 | 航空 | 第二航空戦隊司令官 |
海兵40期の話を、上記リンクでご紹介しています。
それほど親しい関係ではありませんが、「気心知れた仲」の二人。
その山口の考えを、
今、活かせないだろうか・・・
山本長官は「空母への打撃ゼロ」に対して、「新たな攻撃での戦果拡大」を狙います。
閃いた山本長官と山口司令官:途中のミッドウェー島攻撃
南雲の帰り道は、
行きの航路よりだいぶ南だな・・・
はっ!潮の流れから、
内地への最短距離を考えています。
帰り道に、どこか
米海軍の基地を攻撃できないか?
帰り道のやや南寄りに、
ミッドウェーがありますが・・・
よし!ならば、帰り道に
南雲にミッドウェーを攻撃させよう!
それは
良い案と考えます。
ちょうど、この頃、山口司令官も閃きました。
そう!
そうだ!
今こそ、私が内地での作戦計画の際に主張した、
ミッドウェー島を攻撃すべきだ!
山口司令!
それは良い案です。
ハワイだけでなく、複数の基地を攻撃すれば、
点と点がつなげ、面となる。
米海軍に
大打撃を与えられるぞ!
「参謀長」同士の宇垣纏と草鹿龍之介:機動部隊への追加攻撃命令
よし!
宇垣参謀長よ!
南雲長官に
打電せよ。
引き続き、
「ミッドウェー島を攻撃せよ」と。
ははっ!
承知しました。
連合艦隊司令部より、
第一航空艦隊司令部へ!
今度は
何だ?
機動部隊は、続けてミッドウェー島を
攻撃せよ!
はっ?
なんだって?
攻撃完了して、凱旋将軍のような「晴れやかな」気持ちでいた草鹿参謀長。
分かっておるな!
ミッドウェーだ!
・・・・・
司令部からの新たな指令に、突然冷や水を浴びせられた気持ちになります。
なんなんだ!
急に!
意気揚々としていた草鹿参謀長でしたが、大嫌いな宇垣参謀長から意外な要求を突きつけられました。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 専門 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 航空 | 連合艦隊司令長官 |
40 | 宇垣 纏 | 大砲 | 連合艦隊参謀長 |
41 | 草鹿 龍之介 | 航空 | 第一航空艦隊参謀長 |
もともと「仲が悪い」というよりも、「一期上の宇垣を毛嫌いしていた」草鹿参謀長。
宇垣も草鹿も「参謀長」ですが、宇垣は「連合艦隊参謀長」で草鹿は「第一航空艦隊参謀長」です。
いわば宇垣が「後方の総参謀長」であり、草鹿は「最前線の参謀長」でした。
もともと「仲が悪い」上に「似たような職務」であったことが、草鹿の心に火をつけました。
こんな馬鹿なことが
あるか!
だから、
宇垣さんは大嫌いなのだ!
「参謀長」同士とも言える宇垣と草鹿で、不協和音がガンガン鳴り響きました。
とにかく、
機動部隊はミッドウェーを攻撃しろ!
急にそんなことを
言われても、出来ません!
これは
山本長官の「命令」だ!
・・・・・
なぜ、
こんなことに・・・
意気揚々としていたところに、冷や水をバシャっと浴びせられ、怒り心頭の草鹿参謀長でした。
次回は上記リンクです。