前回は「昭和天皇の「・・しよ〜」という強力な決意〜日本の歴史に太い筋を入れる「昭和天皇独白録」・最重要時代「昭和」・支那事変と三国同盟〜」の話でした。
大日本帝国の運命決めた「蒋介石との妥協」:昭和天皇の意思を表す言葉

1937年、正に「泥沼化」を超えて「超泥沼化」していた日中戦争。
そもそもは大日本帝国が支那(中国)に対して、一方的に侵略したのが支那事変でした。

昭和天皇は、当時の支那事変から、日米戦争に至る経緯を明確に整理した語っています。
昭和天皇私はなんとかして、
蒋介石と妥協しよー(ママ)と思い・・・



杉山(元)陸軍大臣と
閑院宮参謀総長を呼んだ・・・
蒋介石と妥協をすることを大本営・帝国政府に命じようとした昭和天皇。



丁度この頃北満の国境に
カンチャズ島事件が起っていたので・・・
「カンチャズ島事件」は、小さな事件でしたが、ソ連軍軍艦を関東軍が撃沈した事件でした。
つまり、1937年頃、満洲付近で、大日本帝国とソ連が紛争を続けていたことを物語っています。



世間へは、この為に呼んだものと
「カムフラージ」されたが・・・



実は、対支意見を求める為に
呼んだのである・・・
ここで「カムフラージュ」を、当時昭和天皇が語った「カムフラージ」と記載している点も大事です。



昭和天皇が当時語った
言葉をそのまま記載します・・・
これは「昭和天皇の言葉」への尊重であり、言葉の微修正は「無用であり不敬」と考えているのでしょう。
「支那事変解決」模索していた昭和天皇:「一ヶ月」明言した杉山大臣


丁度この頃、総理大臣であったのが近衛文麿です。
| ランク | 家格 | 家 |
| 1 | 摂家 | 近衛・一条・九条・鷹司・二条 |
| 2 | 清華家 | 三条・西園寺・徳大寺・久我・花山院・大炊御門・菊亭 |
| 3 | 大臣家 | 正親町三条・三条西・中院 |
| 4 | 羽林家 | 姉小路・冷泉・四条・正親町・持明院・ 今城・堀河・岩倉・綾小路・久世など |
| 5 | 名家 | 烏丸・坊城・梅小路・日野・北小路など |
| 6 | 半家 | 竹内(清和源氏)・西洞院家(桓武平氏)など |
公家の中で「別格」とされたのが、「五摂家」と呼ばれる五つの家でした。
さらに「五摂家」の中でも、筆頭だった近衛家。
明治から昭和の時代には、「近衛兵」という皇居を守る軍隊・兵隊がいました。
このことからも、「筆頭中の筆頭」であることが分かる近衛文麿。
三度組閣した近衛文麿は、この頃は一回目の第一次近衛内閣でした。



若し陸軍の意見が私と
同じであるならば・・・



近衛(文麿)に話して、
蒋介石と妥協させる考であった・・・
この頃、「支那事変不拡大派」であった近衛総理は、陸軍を止められませんでした。



支那事変は、
ある所で止めるべきだ・・・
後に、対米戦開始の頃に、参謀総長であった杉山元は、1937年頃は陸軍大臣でした。



支那を
叩き潰すのだ!
当時の陸軍省は、異様なほど「支那事変拡大派」でした。
諸説ありますが、当時の参謀本部(陸軍)は、「支那事変不拡大派」が一定数いたようです。



これは満洲は田舎であるから、
事件が起こっても大した事はないが・・・



天津北京で起こると必ず
英米の干渉が非道くなり・・・



彼我衝突の虞が
あると思ったからである・・・
昭和天皇は、「満洲あたりならば、多少の武力衝突は良い」と考えていたようです。
ここで、興味深い表現は「非道く=ひどく」です。
「ひどくなる」という言葉は、一般的には「酷くなる」が多いですが、「非道く」もあります。
この「非道く」は、対象に対して「非道である」意味も含んでいると思われます。



当時、参謀本部は事実、石原莞爾が
采配を振つていた・・・



参謀総長と陸軍大臣の
将来の見通しは・・・



天津で一撃を加へれば、
事件は一ヶ月内に終るといふのであった・・・
この件は、後に杉山陸軍大臣が、対米戦の頃に参謀総長の時に、昭和天皇に叱責されることになります。


「近衛日記」と呼ばれる「平和への努力」などの書籍にも記載されている、この「一ヶ月」問題。
手記などの表現では、「杉山陸軍大臣の独断」のようにも感じられます。
ところが、昭和天皇の独白によると、参謀総長も「同意見の一ヶ月」だったことが分かります。
ただし、この時の参謀総長は閑院宮載仁親王であり、「お飾り」の傾向が強い人事でした。
いずれにしても、この頃、昭和天皇が「支那事変解決」の考えを持っていた事実は、重要です。



これで暗に私の意見とは
違っていることが判ったので・・・



遺憾ながら、妥協のことは
云い出さなかった・・・
大日本帝国憲法上、明らかに「国家のトップ」であった昭和天皇。
ところが、昭和天皇が「支那事変解決推進」を考えていても、そうはならなかったのでした。

