前回は「後輩への鉄拳制裁に「暗い顔」した伊藤整一〜「大和特攻」の草鹿と伊藤・超特急海軍将校育成機関海軍兵学校・「鉄拳の嵐」と軍人の基礎〜|草鹿龍之介11・一海軍士官の半生記・エピソード」の話でした。

「抜け穴もユーモアもある」海兵生活:原爆をいち早く理解した草鹿

「何かと鉄拳」であった海軍兵学校における学生生活。
この中、
山県正郷いけない、
制裁してやる!



足を開け、
歯を食いしばれ!
まだ一学年であった草鹿龍之介の2期上の分隊伍長補・山県正郷から受けた鉄拳。



既に当分隊で
制裁済!
これは、「他の分隊の半分以下の鉄拳」で済ませる為の、「後輩を庇う鉄拳」でした。



・・・・・
山県と同学年であった伊藤整一は、「鉄拳」に対して「暗い顔」をしていました。
| 卒業席次 | 名前 | 職務 |
| 5 | 山県 正郷 | 第26航空戦隊司令官 |
| 15 | 伊藤 整一 | 第二艦隊司令長官・軍令部次長 |
| 17 | 高木 武雄 | 第六艦隊司令長官 |
| 21 | 西村 祥治 | 第二戦隊司令官 |
| 26 | 阿部 弘毅 | 第11戦隊司令官 |
| 45 | 角田 覚治 | 第一航空艦隊司令長官 |
| 85 | 原 忠一 | 第五戦隊司令官 |
| ? | 志摩 清英 | 第五艦隊司令長官 |
| ? | 岡 敬純 | 海軍次官 |
山県正郷、伊藤整一自身も、「2年前は同じ立場」でした。
「鉄拳の辛さ」を身に染みて知っていましたが、「規則」である以上、やらざるを得ませんでした。



堅苦しき兵学校生活にも、馴れて来ると、
そこには抜け穴もあれば、ユーモアもある。



ある日、私はその日の最後の授業である、
理化学実験を人一倍早く済ませ・・・



寝室に帰り、並んでいるベッドの間にしゃがんで、
脚絆の手入れをしていた。
若い頃から優秀であり、バリバリ理系が多い海軍軍人の中でも、特に理系肌であった草鹿。
後に、連合艦隊参謀長となり、最後は第五航空艦隊司令長官となります。


1945年8月6日に、原爆が落とされた際には、当時は「新型爆弾」としか分かりませんでした。
この中、帝国海軍では、草鹿がいち早く、



これは原子爆弾に
違いない!
「原子爆弾だ」と、喝破したと言われています。
海兵生徒が「勇気百倍」する名物海兵羊羹:帝国海軍の階級社会


若い頃から、理化学実験なども得意で、要領よく実験を早く終えた草鹿龍之介。



そこへ、三学年生徒が二人、これも早めに
寝室に帰ってきた。



この二人は、私のいるのに気が付かぬらしく、
何事か面白そうに話し合っていた。



私は何気なく立ち上がったら、
二人は一寸驚いた様子であったが、



おい、草鹿、
一寸来い!



と言った。私はまた何か小言でも言われるのか
と思い、その前に言って、不動の姿勢を取り・・・



はい、
何ですか・・・



と言った。二人は被服はこの蓋を開け、
中から江田島羊羹を一本取り出し、



ここで一緒に
早く食え!



と言った。早速食ったが、
甘かった。
優しい先輩もいたようで、実に刺激的で楽しい面もある兵学校生活だったようです。



どこかから密輸入したものを、密かにやろうと
思ったところを・・・



思わぬ私に発見されたと思い、
私を買収したのであった。
ところが、この「羊羹をくれた」のは、「好意」ではなく「買収」だったようです。
「買収」とは穏やかではありませんが、高校生から大学生の「買収」は微笑ましいです。



我らが生徒であった当時、兵学校では
日曜以外は酒保は許されぬ。
「酒保」とは、様々な食べ物や飲み物を販売する部署です。



三度三度の食事は、
栄養十分である。



然し、美味いものは一週間の中、
大体水曜日の昼食に、ライスカレーが出ることがある。



或いは余分に汁粉が付くこともあり、
羊羹が付くこともある。



羊羹汁粉は、
特別の調理場で作る。



この調理場には、
一本の煙突が立っている。



午前の執銃訓練の際、
気の利いた下士官の教員が・・・



目標前の羊羹煙突!
前へ進め!



と
号令をかける。



銃を肩に歩武堂々と
行進を起こす。



見ると、平素は悄然と孤立している煙突から、
煙が出ているではないか。



勇気
百倍する。
海兵の学生たちの大好物だった、大人んきの「海兵羊羹」。
教官自身も「美味しい」と思っていたであろう「海兵羊羹」が作られる時、煙突から煙が出て、



勇気
百倍だ!
草鹿たち、若い海兵生徒たちは、厳しい訓練の中「勇気百倍」しました。
いかにも、若々しく、健気な海兵生徒たちの日常生活が語られています。
ここで、草鹿が「下士官の教員が」と、「下士官」とわざわざ説明している点が重要です。
| 職位 | 立場 |
| 将官 | 大将・中将・少将 |
| 佐官 | 大佐・中佐・少佐 |
| 尉官 | 大尉・中尉・少尉 |
| 少尉候補生 | 海兵卒業生 |
| 下士官 | 士官の命令を受ける兵の中の上の立場 |
下士官は、将官・佐官・尉官の下であり、海兵卒業生が即座になる少尉候補生よりも下でした。
わざわざ「下士官」と説明するほど、帝国海軍は「明確な階級社会」であったことがよく分かります。
比較的マイルドな性格であった草鹿龍之介。
その草鹿から見ても、「士官と下士官は全然違う立場」だったのでした。

