山口多聞第二航空戦隊司令官の熱意〜噛み合わぬ山本長官と南雲長官の関係・海軍兵学校の先輩と後輩と・詰め寄る山口司令官〜|真珠湾奇襲攻撃5・太平洋戦争

前回は「山本五十六の決意〜奇襲攻撃実行部隊の猛訓練・反対続けた南雲忠一司令長官・奇襲攻撃の最高責任者の憂鬱・空母赤城・加賀・翔鶴・瑞鶴の四隻の奇襲部隊へ・怒る山口司令官〜」の話でした。

目次

山口多聞第二航空戦隊司令官の熱意

山口多聞第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

攻撃部隊から外された、山口多聞司令官率いる第二航空戦隊。

山口司令官は懇願します。

ここまで、ここまで
ずっと・・・

ここまで、
みんなで一生懸命やってきてたんだ!

最後の最後で外されては、
私は第二航空戦隊の部下等に合わせる顔がない!

なんとしても、
我々も攻撃部隊に加えてくれ!


極めて優秀な山口多聞司令官。

戦略的才能は山本五十六に匹敵すると言われ、激情家でした。

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山本長官は、困り果てます。

山口司令官の気持ちは、
よく分かる。

痛いほど
よく分かるのだが・・・

・・・・・

噛み合わぬ山本長官と南雲長官の関係

南雲忠一第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

荒々しい性格で知られる南雲忠一長官は、山本五十六司令長官とは性格が合いません。

山本とは盟友関係にある、井上成美 第四艦隊司令長官。

井上がかつて軍令部 軍務局第一課長としていた頃、軍令部の権限を大幅に強化する法案に反対していました。

井上成美 第四艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

反対する井上に、痺れを切らした法案推進派の南雲。

酔った勢いで、

井上の馬鹿!
貴様なんか殺すのは、何でもないんだ!

短刀で脇腹をぐさっとやれば、
貴様なんかそれで終わりだ!

と詰め寄ったことがあります。(「山本五十六」阿川弘之)

酔っていても、山本長官は上司に対して、こういうことは絶対に言いません。

上司に対しては、
「言って良いことと、悪いこと」がある。

一線を越える南雲は、
信頼できん!

山本とは全く気が合わず、元々は水雷専門の南雲忠一。

それにに対し、山口多聞は自分と同じく航空中心で考え方も似ています。

山口司令官は、
発想が合うし、好きだ!

自分の職を賭して押し切り、ハワイ真珠湾奇襲攻撃を軍令部の裁可を得た山本長官。

最も大事な空母を
緒戦で沈められたらどうするのか?

という反論に対する配慮もあり、双方の話し合いの結果、やっと「空母四隻」で決着したところでした。

それを、簡単に覆すわけにもいきません。

出撃空母を六隻にして、
山口も連れてゆきたいが・・・

また、
軍令部と揉めてしまう・・・

永野が山本を可愛がったように、山本は山口が可愛いですが、軍の人事に私情は挟めません。

山本長官は山口司令官を諭します。

まあ、山口。
お前の気持ちはよく分かるが、今回は勘弁してくれ!

内地で戦果報告を
待っててくれ!

山口司令官は絶対に折れません。

いや、
絶対に行きます!

ハワイまでは距離が長いため、給油する必要がありますが、出撃後は途中に日本側の港がなく、洋上給油となります。

航続距離がやや劣る第二航空戦隊の空母 飛龍・蒼龍の二隻。

飛龍・蒼龍は、他の空母と足並揃えて侵攻するのに難があったのが実情でした。

海軍兵学校の先輩と後輩と:詰め寄る山口司令官

新歴史紀行
第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)

同じ海軍兵学校卒業生として、山口司令官(40期)は山本長官(32期)の8期下になります。

「後輩の山口」が「山本先輩」に詰め寄ります。

海軍兵学校卒業期名前役職
28永野 修身軍令部総長
31及川 古志郎海軍大臣
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
39伊藤 整一軍令部次長
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
日本海軍幹部の役職と海軍兵学校卒業期(1941年9月)

我々が足手まといであったら、
攻撃後に我々を太平洋でほったらかしにしてくれ!

他の空母等は
我々を見捨ててくれても構わない!

とにかく、
なんとか我々も参加させてくれ!

山口の言う気持ちは、
よく分かる・・・

山口多聞と山本五十六は、もともとウマが合う仲でした。

戦艦を最重視する、いわゆる「大艦巨砲主義」が日本海軍の主流です。

その中、航空機による空母機動部隊の編成を共に、強く主張している間柄です。

さらに、山本が海軍首席代表をつとめたロンドン軍縮条約などでも山口も一緒に随行し行動を共にしました。

1934年のロンドン軍縮条約に海軍首席代表として出席する山本五十六(Wilipedia)

山本五十六が空母赤城(ハワイ奇襲部隊の航空艦隊旗艦)の艦長であった時のこと。

着艦に失敗しそうになった航空機に対し、山本艦長(当時)は信じられない行動を起こします。

危ない!

パイロットと航空機を
救え!

なんと「山口と共に飛行機が飛行看板から落ちないように飛び乗って支えた」というのです。

これは現実的には無理であり「創作」と考えられます。

こういう逸話があるほど、山口とは肝胆相照らす仲です。

山口よ。
お前の気持ちは、痛いほどよく分かる。

永野が山本に対して、思ったことと同じことを感じます。

山本長官、
私はこの攻撃に人生を賭けたい!

人情家の山本長官。

そうか。
山口がそこまで言うのか

一方、軍令部の伊藤次長(39期)は山口司令官の海軍兵学校1期上で、山口司令官の性格をよく知っています。

伊藤整一軍令部次長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

ああ、山口か・・・
あいつは強情だから・・・

一度決めたら、
なかなか他人の言うこと聞かないな・・・

ハワイ真珠湾奇襲攻撃実行部隊の連合艦隊、そして作戦指揮する軍令部。

それらの最重要人物たちとして、海軍兵学校の卒業期の近い同窓生が集まり、対峙したのです。

海軍軍人として、乾坤一擲の奇襲作戦は、
ぜひ参加させて欲しい!

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