前回は「日本の中枢である京・山城・近畿を抑える明智光秀〜近畿管領の前触れ・鉄砲をかき集めた信長・「鉄砲の明智」の長篠の戦いでの役割〜」の話でした。
織田家オールスターの長篠の合戦:明智光秀の不在
織田家オールスターの長篠の合戦に、なぜか不在の明智光秀。
長篠の合戦が勃発した1575年の頃は、織田家の方面軍で成立していたのは、柴田勝家の北陸方面軍くらいでしょう。
もう少し後に、中国地方から毛利を攻める役割を担う羽柴秀吉ですが、まだ羽柴方面軍は未完成です。
そして、滝川一益の関東方面軍は成立の気配すらない時期です。
織田四天王の「光秀以外全員」及び佐久間信盛・丹羽長秀たち「織田家オールスター」の出陣した長篠。
信長は光秀に、目前に迫っていた丹波攻略の戦略・準備等を指示していたのでしょう。
軍事も政治もできるのは、私以外には、
猿(秀吉)かキンカン頭(光秀)!
だが、京を任せるには、
朝廷との関係が重要だ!
その点、朝廷から嫌われている
猿ではダメだ!
そして、信長は考えに考えた挙句に、
余が不在の京を任せられるのは、
光秀のみ!
という結論に至りました。
武田オールスターとの対峙:四天王の一人が不在の織田と武田
精強を誇っていた武田家ですが、この7年後にあっさり滅亡します。
長篠合戦時の武田家は、多くの名将がバリバリの現役。
なかでも、超強力な騎馬隊を率いる「赤備えの男」がいます。
「天下統一」を推進するためには、「早めに武田家に可能な限りの打撃」を与える必要があります。
光秀自身、そして明智軍が鉄砲に優れていたら、「明智軍を長篠に出陣させる」最善でしょう。
結果的に明智軍がいなくても、織田家は大勝します。
どうもここが不可解です。
「光秀といえば鉄砲」というのは、事実とは少し異なった誇張であったのか。
あるいは「鉄砲の明智軍」を長篠に出陣させるよりも、光秀と明智軍を西に配置する、他に優先すべき理由があったのか。
両方の要素があったと考えます。
この時、「明智軍の鉄砲隊」は光秀と共に在京していたのか。
あるいは、「明智軍の鉄砲隊」は信長が直卒して、一部を長篠に連れて行ったのか。
上杉家への押さえとして海津城に詰め続けた高坂昌信(春日虎綱)以外の、武田四天王が全員出陣した長篠。
この意味では、「織田・武田共に四天王の一人が不在」という共通点があります。
まさに、「武田家にとっての上杉」が「織田家にとっての京」だったとも考えられます。
光秀の大いなる飛躍:足利家との関係
長篠の戦いのわずか2年前の1573年。
織田信長が足利義昭を京都から追放し、足利幕府を解体しました。
この時点で「足利幕府は事実上、消滅した」のですが、足利義昭は毛利家に保護されます。
そして、「事実上、消滅した」とはいえ、まだ現将軍である足利義昭。
毛利家の領土である鞆で、「打倒信長」の暗躍を続ける足利義昭。
打倒、
信長!
何がなんでも、
信長は倒したい!
といっても、実態はよく分からず、足利義昭が「吠えていただけ」とも言えます。
私を推戴してくれたと思ったら、
「利用するだけ」だったとは!
とにかく、
信長を撃滅したい!
「鞆幕府」の権威や権限に関しては、疑問符がついています。
織田家が突出していたとは言え、武田・上杉・北条・毛利という大勢力が、まだまだ大勢います。
そして、顕如率いる一向一揆もまだガンガン戦っている状況。
それらの勢力に、グルッと包囲されている織田家。
長篠の合戦当時は、「まだどうなるか分からない」状況です。
「前政権が倒されて、明確な政権がない」微妙な時期でした。
後世、愚将のように描かれている武田家当主・武田勝頼。
実はかなりの勇将で、武田家の版図は武田勝頼の代で最大となります。
実際、徳川家康は武田勝頼に押しまくられ、かなりの領土を失っていました。
ひょっとすると、
武田が織田・徳川を倒すかも・・・
という希望的観測もあったでしょう。
その中、光秀は長篠へ向かうのではなく、京で西を守り、丹波侵攻の準備に専念していたのです。
そして、それが出来たのは、優れた武将がキラ星の如くいた織田家においてもなお、「明智光秀のみ」だったのでした。
1567年に織田信長に「支え始めた」と言われる明智光秀。
名前 | 生年(一部諸説あり) |
織田信長 | 1534年 |
柴田勝家 | 1522年 |
滝川一益 | 1525年 |
明智光秀 | 1528年 |
丹羽長秀 | 1535年 |
羽柴秀吉 | 1537年 |
1570年頃までは「織田・足利両属」だったと見られるも、長篠の合戦まで「仕官後8年しか経過していない」光秀。
そして、「比較的年長」とはいえ、柴田勝家・滝川一益の方が年齢が上です。
さらに、柴田は超譜代の重心であり、滝川も「長年、信長に仕えている」存在でした。
この頃、明智光秀の「大いなる飛躍」が始まったのでした。
次回は上記リンクです。