前回は「辞任すべきだった松岡洋右〜リッベントロップ「独ソ戦は不可避」と大島情報・「独ソ戦は1/2」の認識だった松岡・日本に強い疑念を持つ米国〜」の話でした。
松岡外相を見限っていたハル長官:ドイツの根幹に迫る「大島情報」

日本にとって「天変地異の出来事」となった独ソ戦。
実は、独ソ戦は、リッベントロップ独外相が松岡外相に事前通告していました。
Ribbentrop今やGermanyとSovietの
戦争は不可避である!
さらに、ドイツ語に流暢で、ヒトラーやリッベントロップ外相とドイツ語で直接話せた大島大使からは、



どうやら、本気でヒトラーは
ソビエトに進行する模様・・・
ドイツ軍がソ連に侵攻する可能性が「極めて高い」という情報が、外務省に寄せられていました。
もともとバリバリの陸軍軍人である大島の情報は、こと戦争に関しては確かでした。
ところが、これらの独外相通告と「大島情報」に対して、



まさか、
ドイツがソ連を・・・



そんな二面作戦という
愚の骨頂をヒトラーはやるまいが・・・
正常な頭脳を持つ人間ならば、「独ソ戦ほぼ100%」と判断する状況にも関わらず、



ドイツがソ連侵攻する
可能性は50%くらいか・・・
「50%くらい」と「甘い」を超えて愚かな判断をした松岡外相。



渡欧中、米国に参戦阻止と援蒋中止を
趣旨とする個人メッセージを出した・・・
松岡外相は独自判断で、米国に「参戦阻止」と「援蒋中止」を申し出るメッセージを出しました。





JapanのMastuokaから
メッセージだと・・・



なに、我がUnited Statesの
参戦中止と・・・



Chinaの蒋介石への
援助の中止を求める、だと・・・



なんなんだ・・・
何を言いたいのだ?



なにを一方的に
求めているのだ・・・



こんなバカを相手にするのは
時間の無駄だ・・・
ハル国務長官の視線から考えると「笑止千万」であった松岡メッセージ。



Nomuraと話していた方が
まだマシだ・・・
すでにハル長官は、「松岡とは交渉の余地なし」と決めていました。



帰京後、米国の返事をみたところ、
吾輩の考えと違っていた・・・
松岡外相が「自らの考えと異なる」米国の回答を受け取ったのは、「当然のこと」でした。
米政府から「最も敵対視」されていた松岡:米ソに対する誤認識


「大東亜戦争全史」では、この頃の帝国政府と大本営大幹部の言葉が詳細に記録されています。



変なものになったのは、
中間に人が入ったからだ!
米国政府からの返答が「変なもの」になったことを、人のせいにした松岡外相。
まさか、米国政府から「自分が見限られていた」とは夢にも思っていなかったのでしょう。
米国のオレゴン大学を卒業した松岡洋右は、自他共に認める「超米国通」でした。



私は米国という国家を
よく知り・・・



米国人の考え方を
十二分に理解しているのだ!
おそらく、「米国人の考えを、日本人で最も理解している」と考えていた松岡外相。
松岡メッセージが「変なもの」になったことに対して、「自分が原因」とは決して思わなかった松岡。
実は、すでに松岡は米国政府から「突っぱねられていた」ことを示していました。



もちろん支那事変を
やめれば、上手くゆくかも知れぬが・・・



それは
適当ではない・・・
「支那事変をやめるかどうか」は、最終的に陸軍の了解を得る必要があります。



「支那事変をやめる」は
選択肢にはない・・・
ところが、「支那事変をやめる」は、微塵も考えていなかった陸軍の統帥部。
どこまでも、松岡外相の論理はズレていました。



結局最後に米国を
つかむ事に狂いを生じた・・・
「米国をつかむ」も何も、すでに米国から「完全に敵対視」されていた大日本帝国。



Matsuokaは
消えた方が良い・・・
さらに、「最も敵対視」されていたのが自分自身とは夢にも思っていない松岡外相。
独自の「松岡理論」を捲し立て続ける松岡外相は続いて、



独ソ戦が短期に終わると
判断するならば・・・



北を先に
やるべし!



ドイツがソ連を
料理した後に・・・



対ソ問題解決と言うても
外交上は問題にならぬ!
とにかく、「松岡理論」によれば、ドイツがソ連に楽勝することが大前提でした。
ドイツのソ連侵攻に対し、参謀本部の久門有文中佐は、



ヒトラー、
誤てり!
こう叫び、参謀本部もまた「独ソ戦でドイツは苦戦する」分析でした。
それにも関わらず、軍事素人であった松岡外相は、勝手に「ドイツ楽勝」と判断しました。
軍人が大嫌いであった松岡にとって、



陸軍は軍事のことを
やっておれば良い・・・



外交の判断にまで
口だすな、バカ共めが・・・
このように、帝国陸軍に対して、強い反感を持っていたのでしょう。



米国はソ連を
助けることは事実上出来ぬ!



元来米国は
ソ連が嫌だ!
「米国がソ連が嫌」は事実でした。
その事実を元に、「米国はソ連と組まない」と勝手に決めつけた松岡外相。
後のヤルタ会談は、当時の松岡外相にとって「信じられない事態」でした。
そして、猛烈な誤判断と信じられない甘さで、松岡外相は帝国政府を引っ張っているつもりでした。

