映画「連合艦隊」〜山本五十六と伊藤整一・日本海軍・戦艦大和・菊水一号作戦〜|太平洋戦争

前回は「おすすめ映画「連合艦隊」〜日本海軍の歴史・山本五十六・戦艦大和・司馬史観と司馬遼太郎〜」の話でした。

目次

山本五十六と東條英機

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

今回は、同映画に登場する人物を取り上げて、日本海軍と連合艦隊の本質に迫ってゆきたいと思います。

まずは山本五十六です。

おそらく、A級戦犯として諸外国から攻撃を最も受けている東條英機と同程度に高い知名度でしょう。

東條英機 内閣総理大臣兼陸軍大臣(国立国会図書館)

とにかく、

日本海軍といえば、
山本五十六!

という抜群の知名度を誇る山本五十六。

第二次世界大戦・大東亜戦争・太平洋戦争に詳しくない方も、多くの方は山本五十六を知っています。

この映画では、山本長官は頑ななまでに「真珠湾奇襲攻撃」を主張します。

奇襲攻撃のような
奇手を実施しなければ・・・

米国に
勝つのは不可能!

そして、軍令部の反対を押し切る模様が、非常にうまく描かれています。

冷静沈着な伊藤整一軍令部次長

伊藤整一 軍令部次長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

開戦時、真珠湾奇襲攻撃に猛烈に反対していた、伊藤整一軍令部次長。

こんな、博打のような作戦は、
承認致しかねます・・・

写真からもわかるように、優等生肌の伊藤整一。

伊藤次長は、真珠湾奇襲攻撃に徹底して反対しました。

伊藤は、軍人ならぬ穏やかそうな表情の方です。

山本五十六が真珠湾奇襲攻撃を主張した際に、海軍作戦統括の「事実上の最高意思決定者」軍令部次長だった伊藤。

次長は政府高官であり、大変大きな権限を持ちます。

伊藤は最後の最後まで、「危険すぎる」と真珠湾奇襲攻撃に反対しています。

戦艦大和(Wikipedia)

ところが、最後には真珠湾奇襲攻撃を山本に押し切られます。

山本長官が辞任をチラつかせて、
強硬手段に出てきた・・・

しばらく「作戦を指示する」軍令部にいた伊藤。

左上から山本五十六 連合艦隊司令長官、伊藤整一 第二艦隊司令長官、有賀幸作 大和艦長、草鹿龍之介 連合艦隊参謀長
(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、Wikipedia)

真珠湾奇襲攻撃後、ミッドウェー海戦などで、日本海軍は米海軍に押しまくられます。

そして、ついに山本五十六長官が米軍機に撃墜され、戦死。

・・・・・

もはや「日本海軍が米海軍に勝つ」のは、100%なくなった状況となりました。

伊藤整一第二艦隊司令長官:海上特攻

1944年末、その伊藤整一軍令部次長は、敗戦間際に「第二艦隊司令長官」として登場します。

対米戦の日本海軍の最前線の第二艦隊。

「最前線」といっても、日本海軍にはもはや「特攻隊の攻撃」しか打つ手がありませんでした。

日本海軍の特攻隊を指揮していたのは、宇垣纏第五航空艦隊司令長官でした。

宇垣纏 第五航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

もはや原油もほとんどなく、「日本海軍の軍艦・艦艇の出番はない」と考えられていた、その時。

菊水一号作戦が発令されました。

その命令は、「第二艦隊を率いて、沖縄に殴り込みをかける」事実上の海上特攻作戦でした。

沖縄に突入し、
米艦隊を砲撃せよ!

そして、その第二艦隊を指揮をするために、戦艦大和に乗艦します。

最後に、対米戦いの最前線へ。

「海上特攻」作戦を、伊藤長官以下第二艦隊に伝えにきたのは、草鹿龍之介 参謀長。

草鹿龍之介 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

開戦時に、第一航空艦隊参謀長だった人物です。

沖縄へ戦艦大和以下の
第二艦隊を突入させます・・・

大和以下の第二艦隊には、
空母がない・・・

護衛機は
本土から出撃するのか?

護衛戦闘機は
つきません・・・

空母がなく、護衛戦闘機もいない戦艦・巡洋艦・駆逐艦からなる第二艦隊。

沖縄周辺には、米軍の空母が10隻以上います。

米空母がたくさんいる海域周辺へ、「空母なし・護衛戦闘機なし」の戦艦部隊で突っ込む作戦。

どう考えても、「沖縄まで辿り着くことは不可能」な状況です。

この海上特攻は、
無理だ!

・・・・・

内心、草鹿参謀長は、

私も
不可能・無理だと思う・・・

ここに至り、草鹿参謀長は「切り札」を切ります。

一億総特攻の
先駆けとなって頂きたい・・・

・・・・・

やむを得ない・・・
行きましょう・・・

敗戦直前の1945年4月に「一億総玉砕」の先駆けとして「海上特攻」作戦指揮を決意します。

映画「連合艦隊」では、この草鹿参謀長の発令に対して、

・・・・・

逡巡する伊藤長官は、配下の駆逐隊司令たちの顔を眺めて、黙り込んでしまいます。

長官!
行きましょう!

行きましょう!
沖縄へ!

お供します!

こうした部下たちの声に押されるかのように、伊藤長官は頷く演出となっています。

このプロセスには諸説ありますが、軍令部次長にいた伊藤長官。

伊藤長官は、日本海軍の本質を理解していたのでしょう。

戦艦大和を残したまま、
敗戦を迎えるわけにはいかぬ、ということか・・・

山本長官に押し切られた
とは言え・・・

対米戦の始まりとなる、
真珠湾奇襲攻撃を認めた軍令部次長であった私・・・

私が責任を持って、
突入しよう・・・

第二艦隊司令長官として戦艦大和に座乗し、残り少ない艦隊を率いて一路沖縄目指します。

戦艦大和 vs 米機動部隊:坊ノ岬海戦

米海軍の総攻撃を受ける戦艦大和(Wikipedia)

日本近海を出動した大和率いる第二艦隊は、早くも米軍に場所を探知され、総攻撃を受けます。

「そもそも不可能」と考えられていた、大和沖縄突入。

戦艦大和は、米軍航空隊から次々と爆撃・雷撃を受けます。

被弾が続き、速度が落ちて大きく傾斜する大和。

もはや沖縄突入は
不可能!

作戦を
断念する!

突入を判断した伊藤長官は総員退去を命じ、残存する駆逐艦に可能な限りの救命を指示します。

出来るだけ、多くの
若者たちを救助せよ!

彼らは、
「これからの日本」に必要だ!

私はこの作戦の指揮官であり、
司令長官・・・

伊藤長官自らは長官室へと行き、鍵を下ろしました。

私は責任を取り、
戦艦大和と共に海に沈もう・・・

そして、その扉は二度と開かれることなく、大和は沈没します。

大きな雲を上げて沈没する戦艦大和(Wikipedia)

映画「連合艦隊」は海軍内からキーパーソンを数名選び、その方々を軸にストーリーを展開します。

それぞれの人の立場が変わっている様子を、実にうまく描いています。

この映画では、旧日本海軍の大きな流れが分かりますので、おすすめします。

ぜひご覧ください。

連合艦隊(東宝)
新歴史紀行

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