山本長官の強い信念〜猛反対する軍令部と南雲長官・奇襲攻撃案を突き返した伊藤整一軍令部次長・懊悩の果てに・奥の手禁じ手に踏み切った山本長官〜|真珠湾奇襲攻撃2・太平洋戦争

前回は「真珠湾奇襲攻撃の肖像〜山本五十六の信念・日独伊三国軍事同盟に猛反対・奇襲攻撃の実施計画推進者・大西瀧治郎と源田実〜」の話でした。

目次

山本長官の強い信念:猛反対する軍令部と南雲長官

山本五十六連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山本が、いつ頃からハワイ奇襲攻撃を考えていたのかは不明です。

日独伊三国軍事同盟締結直前に、連合艦隊司令長官となった山本。

この頃から、日米開戦を念頭に考えていたに違いないでしょう。

山本五十六

米国と
開戦か・・・

山本から、作戦実施計画を任された大西瀧治郎・源田実。

彼らは困難を極める中、なんとか実施計画をまとめ上げます。

そして、奇襲攻撃成功のため、

日本海軍航空隊I

月月火水木金金で
猛練習だ!

猛烈を超えた、苛烈な猛訓練を行っていました。

源田実 第一航空参謀(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
源田実

訓練は
順調に進んでいる・・・

一方で、このハワイ奇襲攻撃は、

日本海軍幹部A

いくらなんでも、
「ハワイを奇襲攻撃」とは危険すぎる・・・

日本海軍幹部A

米海軍の
本拠地だろ・・・

日本海軍幹部A

流石に
無理だろう・・・

永野修身 軍令部総長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

「危険すぎる作戦」は、作戦統括する軍令部からも猛反対を受けます。

さらに、作戦を統括する永野修身軍令部総長が反対しました。

永野修身

真珠湾奇襲攻撃は、
投機的要素が強すぎる・・・

作戦実施予定の最高指揮官である、南雲忠一第一航空艦隊司令長官も猛烈に反対していました。

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
南雲忠一

真珠湾を
奇襲攻撃か・・・

そもそも米太平洋艦隊の総本部のハワイへ近づくことすら容易ではないのです。

山本五十六

悟られないようにこっそりと大部隊で近づいて、
米海軍と基地を奇襲攻撃をしろ!

南雲忠一

えっ・・・・・
流石にそれは・・・

航空に関しては素人同然の南雲司令長官。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

そして、南雲長官を補佐する、南雲機動部隊の草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長。

草鹿龍之介

そんな無茶なこと、
出来るわけないだろう!

草鹿龍之介

山本長官は一体
何を考えているんだ!

南雲忠一

そうだ!
無理!

草鹿参謀長もまた、真っ向から反対します。

奇襲攻撃案を突き返した伊藤整一軍令部次長

伊藤整一 軍令部次長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

連合艦隊へ作戦を指示する軍令部の「事実上の最高意思決定者」である伊藤整一次長。

伊藤整一

こんな無茶な案を、
裁可することはできない・・・

山本長官以外、皆が猛反対です。

草鹿龍之介

山本長官は、博打が好きだから、
こんな投機的なことを考えるのだ。

永野修身

日本海軍の虎の子の空母を全部ハワイに行かせて、
やられてしまったらどうするんだ?

みな、どうあっても賛成しません。

第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)

軍令部が同意しなければ、「作戦実行部隊」に過ぎない連合艦隊。

ハワイ奇襲攻撃を実施することは、不可能です。

米国と断絶・戦争となった時には、米国に大きく依存していた軍需物資の確保が喫緊の課題です。

日本の軍需物資の依存度(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

なかでも、ほとんど「米国に頼っており、内地(日本本土)でほとんど産出しない原油」の確保。

原油確保は、最優先事項です。

「原油がなければ、戦艦・空母が動かせない」のです。

伊藤整一

ハワイ奇襲攻撃なんて無茶なこと言ってないで、
南方を攻撃・占領して、早く原油を確保して下さい!

海軍兵学校卒業期名前役職
28永野 修身軍令部総長
31及川 古志郎海軍大臣
32山本 五十六連合艦隊司令長官
39伊藤 整一軍令部次長
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
日本海軍幹部の役職と海軍兵学校卒業期(1941年9月)

優等生肌の伊藤次長は山本長官の7期下の後輩です。

山本五十六

危険なことは
百も承知だ!

山本五十六

だが、これをしなければ
米海軍には勝つことは絶対にできない!

山本五十六

米海軍に勝つのは、
通常のやり方では、絶対に不可能なのだ!

懊悩の果てに:奥の手・禁じ手に踏み切った山本長官

新歴史紀行
世界の原油生産量 1940年(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

山本五十六長官には、

山本五十六

南方資源地帯を
最優先で確保する戦略は分かる・・・

山本五十六

分かるのだが、
そういう「普通の作戦」では米国には絶対に勝てん!

山本五十六

真珠湾奇襲攻撃こそ
日本の生きる道!

「真珠湾奇襲攻撃しかない」という強い信念がありました。

山本五十六

通常の手段では、
ハワイ奇襲攻撃の了承を得ることは不可能!

悟った山本長官は、遂に奥の手を考えます。

その「奥の手」は組織、とりわけ軍においては「禁じ手」とも言える事でした。

山本五十六

この手しかないが、
これを使って良いものか・・・

山本長官は懊悩し、悩みに悩んだ事でしょう。

悩み抜いた挙句、山本五十六は米国と対峙するため、あえて「禁じ手」を使う事を決意しました。

山本五十六

この手は、
本当は禁じ手だ。

山本五十六

本意ではないが、
この手を使うしかない。

山本五十六連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

「意を結した」山本長官。

山本長官は、海軍省及び軍令部の大幹部たちに伝えました。

山本五十六

ハワイ奇襲攻撃を
了承頂けないなら・・・

山本五十六

それならば、
私は連合艦隊司令長官を辞任します・・・

次回は上記リンクです。

新歴史紀行

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