前回は「霧の中を彷徨い始めた大日本帝国〜破綻したトラウトマン工作・陸軍「南京攻略」独断と彷徨する外交・「南京攻略命令」発令の謎〜」の話でした。
政府を振り回し始めた帝国陸軍:大日本帝国の運命決めた支那事変

後世の視点から考えると、第二次世界大戦・大東亜戦争は、日米戦争中心となります。
そして、日米戦争前の遥か前から開始していた支那事変のウェイトは低い傾向があります。
その一方で、実は当時、支那事変は、大日本帝国にとって「アキレス腱以上の根幹的存在」でした。
第二次世界大戦当時の政治家・軍人の回想録・手記を読むと、支那事変が頻繁に登場します。

昭和天皇独白録この報(トラウトマンによる日中和平構想)を
広田弘毅外相から聞いた昭和天皇は・・・



よかったね。



と、嬉しそうに
うなずいた。
この支那事変に対しては、昭和天皇は、当初から明確に「非拡大派」でした。
ところが、満洲事変でいわば「大成功を収めた」陸軍は強硬に「拡大派」でした。
| 帝国陸軍 | 支那事変への方針 |
| 陸軍省 | 不拡大 |
| 大本営 | 拡大 |
陸軍省「不拡大派」、大本営・軍部「拡大派」の傾向はあった一方、陸軍全体として「拡大派」でした。





一体、どういうことだ?
なぜ、こういうことが起こる?
ところが、トラウトマン独大使の「日中和平工作」は、あっけなく潰れてしまいました。
日米関係がこじれた・悪化した最大の理由の一つである支那事変。
いわば、大日本帝国の運命を左右したのが、支那事変でした。





やがてトラウトマン工作は
雲散霧消した。
1937年12月に「大きく進展」したトラウトマン工作は、一気に悪化して、雲散霧消してしまいました。



かくなっては近衛の不拡大方針も、
前途の見透もいよいよ難しくなって来たので・・・



近衛は陸軍部内の強硬論を
抑えさせる意味を以て・・・



第五師団長の板垣(征四郎)を
陸軍大臣に起用した。
1938年頃から、帝国政府は帝国陸軍に振り回され始めていました。
この状況打破のために、第一次近衛内閣を率いた近衛総理は板垣征四郎を陸相に任命しました。
「陸軍のロボット」板垣征四郎と「泥田に足を突っ込んだ」帝国


当時、陸相となった板垣征四郎は、石原莞爾とセットで語られることが多いです。
| 陸軍士官学校卒業期 | 名前 | 生年 |
| 16 | 土肥原賢二 | 1883 |
| 16 | 永田鉄山 | 1884 |
| 16 | 板垣征四郎 | 1885 |
| 21 | 石原莞爾 | 1889 |
板垣と陸士同期には、永田鉄山、土肥原賢二など、著名な人物が多数います。
まさに「華の陸士16期」とも言えるほど、多彩な人物を輩出しました。


石原莞爾と比較すると、風貌からも「キレ者」という感じがあまりない板垣征四郎。



近衛の肚では、板垣が来たならば、
陸軍部内は和平論が勝つだろうと思ったのであったが・・・



事実来て見ると、案に相違して板垣は
完全に軍の「ロボット」となって終わったのみならず・・・



陸軍省の態度は却って
強硬となり・・・



支那事変は、遂にのっ引きならぬ泥田に
足を突っ込んで仕舞った。





板垣征四郎さんを
陸相に据えて、陸軍を抑える!
このように考えた近衛首相でしたが、「陸軍のロボット」だった板垣は、真逆の効果となりました。
「陸軍を抑える」どころか、正反対の「陸軍を増長」させることとなった、板垣人事。
こういう点もまた、近衛文麿の政治的見識の低さを表しているかも知れません。
その一方で、「ならば、誰が陸将として相応しかったか?」は難しい問題です。
そもそも、「陸軍が承認する人物でなければ、陸相になれなかった」時代となっていました。



我が陸軍が承認する人物でないと、
陸相に出しません!



つまり、我が陸軍を「抑える」人物ならば、
承認しません!
このような状況において、陸軍を抑える人事は、極めて困難でした。



隠しては支那事変処理に関する
前途の見透しは全く立たぬ・・・



国内世論はそろそろ倦怠の兆を
示して来た・・・



そこで国内人心転換策として
新たに日独伊三国同盟を締結し・・・



国民の敵愾心を英米に振り向け、
支那の方はうやむやにして終わろうという・・・



面白からぬ空気が陸軍部内に
起こった。
ここで、昭和天皇は、重大な発言をしています。
最終的に、大日本帝国の運命を決定づけた日独伊三国同盟。
イタリアはともかく、ドイツ・ヒトラーと手を握った大日本帝国は、米英に潰されてしまいました。
この日独伊三国同盟もまた、「支那事変うやむや」に起因するという事実。
支那事変の影響は、当時の大日本帝国のあらゆる面に波及しました。
そして、支那事変は、最終的に大日本帝国を奈落の底へ落とす最大の原因となりました。

