霧の中を彷徨い始めた大日本帝国〜破綻したトラウトマン工作・陸軍「南京攻略」独断と彷徨する外交・「南京攻略命令」発令の謎〜|昭和天皇独白録17・昭和の真実

前回は「独トラウトマン主導の日中和平工作〜昭和天皇と蒋介石が望んだ日中和平・「陸軍が政権運営」の帝国政府・奇妙で不思議な国家運営と無力な広田外相〜」の話でした。

目次

破綻したトラウトマン工作:陸軍「南京攻略」独断と彷徨する外交

New Historical Voyage
Oskar Paul Trautmann駐中国ドイツ大使(Wikipedia)
Trautmann

この私が日中和平工作を
進めよう・・・

新歴史紀行
蒋介石 中国国民政府主席(Wikipedia)
蒋介石

承知した・・・
日本と和平交渉しよう・・・

New Historical Voyage
昭和天皇(Wikipedia)
昭和天皇独白録

この報を広田弘毅外相から
聞いた昭和天皇は・・・

昭和天皇

よかったね。

昭和天皇独白録

と、嬉しそうに
うなずいた。

1937年、トラウトマン独大使が働きかけた日中和平工作「トラウトマン工作」。

日中両国のトップが「大いに前向き」であり、両国の「格上だった」ドイツが仲介していた和平。

西洋の論理では、「和平目前」であったのが当時の状況でした。

Trautmann

あとは細かな
双方の要望の調整か・・・

日本と中国の大使館に高い立場で勤務経験があり、日中両国の情勢に通じていたトラウトマン。

おそらく、トラウトマンは安堵して、本国にも「日中和平間近」を連絡していたでしょう。

New Historical Voyage
松井石根 上海派遣軍司令官(Wikipedia)
松井石根

ここは、徹底的に
蒋介石を叩くべきです!

ここで、後に「南京大虐殺」で名高い松井石根軍司令官が登場します。

もともと、孫文・蒋介石と親しかった松井は、蒋介石を支援し続けていました。

ところが、「松井の視点」から見て、蒋介石は「反日に転じた」と考えていました。

松井石根

おのれ、蒋介石め・・・
あれほど支援してやったのに・・・

松井石根

もう良いわ!
蒋介石を潰してくれるわ!

松井司令官の視点から見れば、「日中和平」は問題を大きくするだけの「論外の方針」でした。

松井石根

とにかく、私に
南京を攻略させてください!

松井石根

南京など、すぐにでも
陥落させます!

松井石根

そうすれば、蒋介石は
和平に応じざるを得ないでしょう!

松井石根

そして、我が帝国は、和平交渉で強い姿勢で
支那に臨めます!

この松井司令官の「強すぎる具申」に対して、

昭和天皇独白録

が、このとき既に参謀本部は
松井石根軍司令官の強い意見具申にもとづき、

昭和天皇独白録

南京攻略の
命を下していた。

参謀本部は、「南京攻略の命令」を出していました。

これで、トラウトマン工作は「全て終わり」となりました。

Trautmann

一体、どういうことだ?
なぜ、こういうことが起こる?

「西洋の外交論理」では「意味不明な事態」であり、トラウトマンは理解に苦しんだでしょう。

霧の中を彷徨い始めた大日本帝国:「南京攻略命令」発令の謎

New Historical Voyage
武藤章 陸軍軍務課長(Wikipedia)

昭和天皇独白録には記載されていませんが、この「陸軍の独断」を推進したのは武藤課長でした。

武藤章

とにかく、支那事変は
ガンガン拡大するのだ!

武藤章

我が帝国陸軍は、
支那軍など、即座に叩き潰せるのだ!

New Historical Voyage
石原莞爾 参謀本部第一部長(別冊 1億人の昭和史1930年 恐慌と軍拡のはざまで 毎日新聞社)
石原莞爾

上海へは兵力を
増強しない!

武藤課長の上役であった、石原部長は、当時明確な「不拡大派」でした。

帝国陸軍支那事変への方針
陸軍省不拡大
大本営拡大
支那事変への大本営・陸軍省方針

統帥権を握っていたのは、大本営であり、石原部長が絶大な権限を握っていました。

そして、武藤課長は陸軍省の中枢の軍務局にいましたが、陸軍省は「統帥権を持たない」立場でした。

つまり、「軍に命令を下す」のは大本営であり、「石原部長がNoであれば、軍は動かない」はずでした。

ここで、どのように大本営が松井司令官に「南京攻略」の命令を下したのか。

あるいは、石原莞爾部長が「渋々ながら命令を下した」のか。

石原莞爾の性格から考えて、「渋々応じる」とは、到底考えられません。

若い頃から「傲岸不遜の典型例」であった石原莞爾は、上役に対しても絶対に我を貫きました。

昭和天皇独白録

まさに歴史の
転換点であった。

昭和天皇独白録

南京攻略に成功した
日本政府は・・・

昭和天皇独白録

かねて提示していた和平条件を
加重して通告・・・

昭和天皇独白録

やがてトラウトマン工作は
雲散霧消した。

トラウトマン工作に対して、「破綻」ではなく「雲散霧消」と表現している昭和天皇独白録。

まさに「成立するはず」だった日中和平は、霧のように消えてしまいました。

そして、このあと、大日本帝国は霧の中を彷徨うにして日米戦争に突入します。

New Historical Voyage

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