前回は「「別格の科学力」を有したドイツ帝国〜アインシュタインとプランク・大英帝国との「手頃な講和」望んだヒトラー・「愚策」の独ソ戦〜」の話でした。
「松岡外交の守護神」斎藤良衛の登場:密接だった満鉄と外務省

米国「1941年6月21日附対案」に付随してきた、「国家侮辱文書」のハル「オーラル・ステートメント」。
これらに対する検討のため、7月10日及び12日に連絡会議が開催されました。
7月10日の連絡会議の際には、
松岡洋右今日は特別に外務省顧問の
斎藤良衛さんに来てもらいました・・・





斎藤で
御座います・・・
かねてから、松岡外相とは極めて懇意な間柄であった斎藤外務省顧問。
| 名前 | 生年 | 役職 |
| 杉山 元 | 1880 | 参謀総長 |
| 松岡 洋右 | 1880 | 外務大臣 |
| 永野 修身 | 1880 | 軍令部総長 |
| 斎藤良衛 | 1880 | 外務省顧問 |
| 近衛 文麿 | 1891 | 総理大臣 |
外務省顧問は、役職としては「連絡会議に参加する立場ではない」です。



私は超ベテラン
外交官です・・・



これまでに著作や論文も
多数書きました・・・
その一方で、1880生まれで、松岡外相・杉山参謀総長・永野軍令部総長と同年齢だった斎藤。
| 地域 | 覇者 |
| 西欧 | ドイツ |
| 東亜 | 大日本帝国 |
| 米州 | 米国 |
| ロシア | ソ連 |



松岡外相の
「世界四大ブロック」こそ・・・



我が大日本帝国の歩むべき
道である!
そして、松岡構想の最大の支持者であった斎藤。
いわば、斎藤は「松岡外交の守護神」でした。
かつて、松岡が満鉄総裁だった時に、満鉄理事を務めた斎藤。
松岡や斎藤の経歴を見れば、満鉄と外務省が密接な間柄であることが分かります。
斎藤が「出てきた」のは、「松岡外相の援護」のためであったことは、明白でした。
「全てが論外」の斎藤分析:「三国同盟脱退」「日本の発展妨害」





今回の対案とオーラル・ステートメント
に関して、説明頂きます・・・



おのれ、ハルの
野郎めが・・・
内心怒り心頭だった松岡外相は、まずは斎藤外務省顧問に発言を求めました。
一、国際関係及国家の本質に関する合衆国及日本国の観念
両国政府は国家の本質に関する各自の伝統的観念並に社会的秩序及国家生活の基礎的道義的原則は引き続き之を保存する
二、欧州戦争に対する両国政府の態度
日本政府は三国条約の目的が過去に於ても又現在に於ても防御的にして挑発に依らざる欧州戦争の拡大防止に寄与せんとする
合衆国政府は欧州戦争に対する態度は現在及今後も防護と自国の安全と之が防衛の考慮に依てのみ決せられる
三、日支間の和平解決に対する措置
支那国政府及日本国政府が相互に有利にして且受諾し得べき基礎に於て戦闘行為の終結及和平関係の恢復のため交渉に入る
四、両国間の通商
本諒解が両国政府に依り公式に承認されたるときは合衆国及日本国は両国の一方が供給し得て他方が必要とするが如き物資を相互に供給すべきことを保障
五、太平洋地域に於ける両国の経済的活動
日本国政府及合衆国政府は両国が夫々自国経済の保全及発達のため必要とする天然資源(例えば石油、ゴム、錫、ニッケル)の商業的供給と相互協力
六、太平洋地域に於ける政治的安定に関する両国の方針
両国の何れも太平洋地域に於いて領土的企図を有せざることを声明す
七、比律賓(フィリピン)群島の中立化
日本国政府は合衆国政府が希望する時期に於て合衆国政府と比律賓の独立が完成せられるべき際に於ける比律賓群島の中立化のための条約締結への用意


「大東亜戦争全史1」には、この時の斎藤の発言などが細かく描写されています。



今、世界は現状維持と
現状打破、・・・



民主主義と全体主義とが
まんじ巴となって戦っている・・・



ハルの対案は、
現状維持であり、民主主義である・・・
高級官僚らしく、斎藤は、当時の世界状況をまずパッと描きました。
| 世界の陣営 | 方針 | 主義 |
| 米国・大英帝国など | 現状維持 | 民主主義 |
| 大日本帝国・ドイツ帝国など | 現場打破 | 全体主義 |
このように、陣営の方針と主義を明確に分析してみせた斎藤。



現状維持国は一致して、
日本圧迫に乗り出すものと思う・・・



この案の中で、「支那政府」という文句を
使っているのが、曲者である・・・



これは、日支基本条約を取り消せ、
というのと同じだと思う・・・
最初から、「日本が到底呑めない」状況を喝破してみせた斎藤。



満洲は支那に復帰すべきものであると
考えている・・・



本案は、要するに日満華共同宣言を
白紙に戻して、日支交渉をせよというのである・・・
二番目の「日満華共同宣言・白紙」も、絶対に帝国は呑めません。



治安駐兵を
認めていない・・・



無条件撤兵を
目標としている・・・
対案では「無条件撤兵」とは一言も触れていませんが、こう分析した斎藤。



防共駐兵を
非認している。



日本は日支の緊密な提携を
企図しているのに対し・・・



米国は支那に於ける無差別待遇を
主張している・・・



これでは、東亜新秩序の建設の如きは
不可能である・・・
ここまで聞いただけでも、帝国としては「検討の余地なし」の分析でした。



日支和平交渉解決の根本を
日米両国間で決めて・・・



その範囲内で日支直接交渉を
させようと考えている・・・



日本に対しては、三国条約より
脱退せよと云わぬばかりのことを述べている・・・



日本の将来の経済発展を妨害し、
米国が東洋の市場を自由に占める・・・



南西太平洋の「南西」と云う字を
削っている・・・



これは、北太平洋に重大な関心を
払っていることを実証している・・・
とかく官僚的・学者的分析ですが、一言で言えば「全てが論外」とも言わんばかりの斎藤分析。
「三国同盟脱退」は陸軍から見れば、「論外以下」でした。
さらに、「米国=日本の発展を妨害する国家」ならば、話し合う余地はありません。



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これでは、何のために連絡会議を開いているのか、が不明になる程、激烈な分析でした。



・・・・・
とにかく「明確な分析」である斎藤の援護射撃の後に、満を持して松岡外相が話します。

