前回は「長州藩士「異人の靴を頂いても薩摩とは和睦せぬ!」〜夢の薩長同盟・中岡慎太郎「飛躍しすぎ」の薩長同盟論・「無国籍人」脱藩藩士〜」の話でした。
坂本龍馬と中岡慎太郎「薩長の感情を融和」:「あり得なかった」薩長同盟

幕末維新の歴史を生んだ薩長同盟。
確かに、薩長同盟が幕末維新を成立させる原動力でした。

司馬遼太郎幕末、薩摩と長州が手を結べば、
倒幕が可能であることは常識であった。
司馬遼太郎は、「竜馬がゆく」などで、このように述べています。
確かに後世の視点から見れば、「薩長同盟こそ、のみが倒幕(討幕)を可能にした」とも言えます。
その一方で、「薩長同盟以外の倒幕(討幕)の原動力」の可能性も当時はあったはず、と考えます。


田中光顕は、「維新風雲回顧録」において、当時の状況を緻密に語っています。
薩長同盟の機運がどのように盛り上がったか、というと、やはり中岡慎太郎らの活動によります。



異人の靴を頂いても、
薩摩とは和睦なぞ出来るものか!



いかにも恥入る
次第だ!



死者に対して、和解は
出来ぬということであれば、



戦国時代にあって、敵国と和睦は出来ぬ
ことになる。



そんな理屈は
あるまい!
長州藩士の内部で、薩長同盟に対して「侃侃諤諤」を超えた議論がなされた、と田中は記録しました。


これは当然のことであり、禁門の変で「煮湯」というよりも、「熱湯を飲まされた」長州藩士たち。
田中の話では、中岡たちが「薩長同盟を説いて回った」のは、「禁門」の翌年でした。
どう考えても、薩長同盟などあり得ない状況の中、中岡慎太郎たちは苦闘しました。



諸隊の中、一番頑固なのは、
奇兵隊であった。



此の間に於いて、提携運動を起こした
坂本、中岡等の苦心というものは、並大抵のものではない、



勤王倒幕の第一線に立って、
剣戟砲丸の間に活躍した勇士の功も、



無論没すべからざるものだが、
と同時に、両先輩が両藩の感情を融和せしめて、



共同作戦の下に、維新の機運を開いた努力を
忘れてはならない。
当時、土佐藩士であり、坂本龍馬・中岡慎太郎の後輩だった田中光顕は、このように述べています。
中岡慎太郎「天下を興さんものは必ず薩長両藩」:微動し始めた薩長の和





もし両先輩が存在しなかったら、
薩長の聯合は行われなかったかもしれない、



そうなると、維新の大業は、
完成しなかったかもしれない、



完成しても、余程遅れることになったと
見ねばならない。
現代の視点から見て「必須だった」薩長同盟。
田中光顕は、昭和初期の「明治維新の香り」が残存する中、このように断言しました。
| 名前 | 生年 | 所属 |
| 大村 益次郎 | 1825 | 長州 |
| 西郷 隆盛 | 1827 | 薩摩 |
| 武市 瑞山 | 1829 | 土佐 |
| 大久保 利通 | 1830 | 薩摩 |
| 木戸 孝允 | 1833 | 長州 |
| 坂本 龍馬 | 1835 | 土佐 |
| 中岡 慎太郎 | 1838 | 土佐 |
| 山縣 有朋 | 1838 | 長州 |
| 高杉 晋作 | 1839 | 長州 |
| 久坂 玄瑞 | 1840 | 長州 |
| 伊藤 博文 | 1841 | 長州 |
| 田中 光顕 | 1843 | 土佐 |
多数の、というよりも、無数の志士たちが東條した幕末維新。
薩摩藩と長州藩は大藩であり、特に薩摩藩の潜在力は絶大でした。
ただし、他にも大藩は多数ある中、とにかく「薩長同盟ありき」だった坂本龍馬と中岡慎太郎。



中岡は、「時勢論」の中に
於いて、予言している。



自今以後、天下を興さんものは、
必ず薩長両藩なるべし、



吾思うに、天下近日の中に、
二藩の命に従うこと、



鏡にかけて見るが
如し。



而して他日、国体をたて、外夷の軽侮を絶つも、
亦この二藩に本づくなるべし、



これまた封建の天下に
功あるところなり。



事実、天下の風雲は、
中岡の名言したように動いていたのである。
「薩長による倒幕(討幕)を予言した」というよりも、「倒幕を決意して実行した」中岡慎太郎。
中岡慎太郎は、当時「時勢論」という著書において、「薩長同盟から倒幕計画」を高らかに述べました。
この主張こそ、中岡慎太郎の真骨頂でした。
中岡のように明確すぎるほどの論理を立てて、計画を進めるのは苦手だったであろう坂本龍馬。
この点では、「理論の中岡慎太郎」と「実行の坂本龍馬」の両輪がグルグルと回ったのが奇跡でした。
中岡慎太郎よりも一足先に脱藩した坂本龍馬の話を上記リンクでご紹介しています。
1862年3月、土佐藩を脱藩した坂本龍馬。
そして、中岡慎太郎の脱藩は、その翌年の1863年9月のことでした。
坂本龍馬の脱藩と比較すると、中岡慎太郎の脱藩は、「どうにもならない状況」の後でした。
この点では、確かに実行力があった坂本龍馬。
とにかく「幕末を動かし、討幕を実現した原動力は、土佐の坂本龍馬と中岡慎太郎」とハッキリ断言した田中光顕。
田中光顕は、「薩長同盟の真実」を赤裸々に語り、大先輩たちを大いに持ち上げたのでした。


