前回は「井伊直弼が想定しなかった展開〜「やむを得ない時」と岩瀬忠震の判断・誠実な岩瀬に感動したハリス・アロー戦争の衝撃・巨大国家清国を蹂躙していた欧米列強〜」の話でした。
米国に翻弄され続けた徳川幕府:ペリーとハリスの卓越した外交術
夷狄との条約など
もってのほか!
我が神州の土地を
汚す気か!
幕末に、米英仏などとの折衝が急速に増え、降って湧いた「日米通称修好条約」の締結の話。
1853年にペリー提督が江戸にやってきて、
Hello!
Japanのみなさん!
我がUnited Statesと
条約を結びましょう!
じょ、条約ですか・・・
困ったな・・・
江戸期にも様々な諸外国との折衝がありましたが、「鎖国体制」にあった日本。
「長崎のみがただ一つの窓口」と表現される鎖国政策ですが、実は他にも「窓口」がありました。
1.長崎・出島:徳川幕府の公式窓口(オランダ・中国)
2.対馬・宗氏:徳川幕府が公認・間接的関与(朝鮮)
3.蝦夷・松前氏:徳川幕府が半公認・間接的関与(蝦夷及びアイヌ)
4.薩摩・島津氏:徳川幕府は非公認だが事実上黙認(琉球・中国・東南アジア)
表立っては、オランダ・朝鮮・中国と付き合ってきて、「新たな条約を締結」した経験が少なかった幕府首脳たち。
困りきった幕府首脳は、
とりあえず、
先送りしよう・・・
検討致しますので、
来年、いかがでしょうか?
OK!
また来年来ます!
メリケン(米国)は、かなり遠い国と
聞いている・・・
これだけの大艦隊を引き連れて、
来年は来ないだろう・・・
ペリーが再来航するのは、
早くて2,3年後か・・・
このような「甘い観測」をしていた徳川幕府。
ところが、翌1854年に、
Hello!
Japanのみなさん!
約束通り、
また来ましたよ!
うわっ・・・
本当に来たよ・・・
そして、前回は軍艦4隻だったペリー艦隊は、軍艦9隻に大増強していました。
た、大変な
軍艦の数だ・・・
約束通り、
条約を締結しましょう!
約束は守っていただきますよ!
Japanのみなさん!
Edoを砲撃しても
良いんだぜ!
や、やむを
得まい・・・
こうして、ペリーの圧力によって1854年に「日米和親条約を締結させられた」徳川幕府。
ま、これで
メリケンとの話は当面なし・・・
こう思っていた徳川幕府でしたが、「甘い観測」でした。
Hello!
Japanの皆さん!
その後、「和親条約に基づいて」米国公使としてやってきたハリス。
新たな条約を
締結しましょう!
な、なんで・・・
この間、締結してばかりでは・・・
先年締結した
和親条約で十分かと・・・
No!
全然違います!
今は、世界中が激動の
時期!
新たな条約や、貴国と我が国に多大な
メリットがあります!
・・・・・
ここで、徳川幕府が真剣に検討したものの、
新たな条約は
絶対にならん!
孝明天皇は「絶対反対」で「絶対に譲らない姿勢」でした。
猛烈な逆風を浴びて意気消沈の井伊直弼:辞任の申し出から開き直りへ
ハリスとの交渉は
私にお任せを!
うむ、
そなたに任せたぞ・・・
とにかく、孝明天皇の勅許は
大前提と考えている・・・
公家どもに工作して、
孝明天皇の勅許はなんとか得たい、と考えている・・・
しばらく、ハリスとの
交渉は先延ばししておいてくれ・・・
承知致しました。
「やむを得ない」場合は?
・・・・・
とにかく
「勅許が先」だ・・・
だが、進退窮して
「やむを得ない」場合は・・・
致し方なかろう・・・
締結するしかないだろうな・・・
とにかく「勅許優先」を明確にしていた井伊直弼。
ここで、「やむを得ない」時は、「しばらく引き伸ばししても、どうにもならない」事態を想定していたでしょう。
とりあえず、
大老の言質は取った・・・
頭脳明晰であった岩瀬は、あらゆる状況を想定のもと、ハリスと交渉に向かいました。
とにかく、早くこの
条約を締結しないと・・・
貴国もChinaの
ような目に遭ってしまいますよ!
た、確かに・・・
ここは「やむを得ない」時だ・・・
分かりました。
締結しましょう。
なんと、井伊の「先延ばししろ」という命令に反して、たった一日で締結に至ってしまった岩瀬。
Very Good!
Iwaseさん、それでは締結しましょう!
これで、これで
我が徳川にとって良かったのだ!
そして、大手奮って江戸城に戻った岩瀬。
大老!
メリケンと日米通商修好条約を締結しました!
この岩瀬の報告に、天地がひっくり返るほど驚いた井伊大老。
な、なんと!
もう締結したのか!
「先延ばしにしろ」と
命じたではないか!
大老!
「やむを得ない」場合と判断しました。
このままでは、我が国は
隣の清(中国)のようになってしまいます!
メリケンは、我が国を守ってくれることを
約束してくれました!
・・・・・
確かに「やむを得ない場合・時は」と「言ってしまっていた」井伊大老。
どうにも、岩瀬に反論できず、がっくりして、
分かった・・・
とにかく下がれ・・・
はっ!
これは本当に困った
事態になった・・・
勅許前に無断で
条約締結して・・・
あの孝明天皇が
「仕方ないですね」というはずがない・・・
私の
責任だ・・・
意気消沈してしまった井伊直弼。
勅許を得ずに、条約締結した
井伊大老はけしからん!
諸大名からも猛烈な攻撃を受けて、御三家からも猛烈な逆風を浴びた井伊大老。
大老を
辞任します・・・
「大老辞任」を幕閣に申し出ましたが、
いや・・・
井伊大老がいなくなっては、徳川は終わりです・・・
井伊大老と岩瀬殿は、
我が国のために判断された・・・
これは、徳川幕府にとっても、
我が国にとってもベストだったのでは・・・
このように幕閣から慰留された井伊大老。
確かにそうだ!
私が正しい!
開き直って、瞳を光らせた井伊大老。
次の手を考えていました。