薩摩の圧倒的軍事力とパワーを操った大久保利通〜久光の「秘蔵っ子」・「維新のN傑」に見る薩摩と長州への評価・同時代の視点と長州軍団〜|大久保利通2・人物像・エピソード

前回は「日本の近代を生み出した男・大久保利通〜明治維新の四傑と薩長・岩倉と大久保の暗躍・討幕の創作者たち・圧倒的パワーを有していた徳川・大政奉還の大奇策〜」の話でした。

新歴史紀行
大久保利通(国立国会図書館)
目次

「維新のN傑」に見る薩摩と長州への評価:同時代の視点と長州軍団

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左上から時計回りに、明治維新の元勲:木戸孝允、岩倉具視、大久保利通、西郷隆盛(Wikipedia)

「維新の元勲」と呼ばれ、「明治維新の三傑」の一人とされる大久保利通。

明治維新期において、不動の存在感を放っています。

筆者は、この三人に岩倉を加えて「維新の四傑」と考えるのが最も史実に合うと考えます。

維新の四傑(新歴史紀行)

・薩摩:西郷隆盛・大久保利通

・長州:木戸孝允

・公家:岩倉具視

いずれにしても、「維新の三傑の1/3が薩摩」であり「維新の三傑の1/2が薩摩」です。

つまり、「薩摩が明治維新の原動力」であったことが、「維新の〜傑」に現れています。

維新の十傑(山脇之人「維新元勲十傑論」)

・薩摩:西郷隆盛・大久保利通・小松帯刀

・長州:木戸孝允・大村益次郎・前原一誠・広沢真臣

・肥前:江藤新平

・肥後:横井小楠

・公家:岩倉具視

まだ「明治維新の香り」が漂っていた1884年には、山脇之人が「維新元勲十傑論」を著しました。

この「維新元勲十傑論」で目立つのは、長州出身者が非常に多いことです。

山脇の主観とはいえ、明治維新が成立して16年後に出版された、同時代の本書籍の視線は重要です。

山脇「維新元勲十傑論」では「維新の十傑の4/10が長州」であり、薩摩を抜いています。

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作家 司馬遼太郎(司馬遼太郎の戦国 朝日新聞出版)
司馬遼太郎

明治維新は、世界史で見ると、
極めて流血が少ない革命であり・・・

司馬遼太郎

「無血革命」と呼んで
良いでしょう・・・

筆者も好きな司馬遼太郎は、「明治維新は無血革命」と言っています。

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新政府軍と彰義隊の激闘(歴史道vpl.15 朝日新聞出版)

実際には、明治維新では「多数の血が流れた」のが事実でした。

そのため、筆者は明治維新は「無血革命ではなく、明確な軍事力による革命」と考えます。

大久保利通

私が、その「軍事力の源」である
薩摩藩を引っ張ったのだ・・・

西郷隆盛

おいどんは、
薩摩軍の采配をとったごわす!

そして、確かに「討幕軍の根源的パワー」を持った薩摩を動かした人物が大久保でした。

薩摩の圧倒的軍事力とパワーを操った大久保利通:久光の「秘蔵っ子」

New Historical Voyage
薩摩国父 島津久光(国立国会図書館)
島津久光

私は、
西郷が大嫌いなのだ!

薩摩藩の「事実上の藩主」であった島津久光は、「終生、西郷が大嫌い」でした。

西郷隆盛

おいどんは、
久光様を好かん!

お互い「大嫌い」だった島津久光と西郷隆盛。

「大嫌い」というよりも「憎しみ合っていた」という表現の方が、この二人には適切であり、

西郷隆盛

久光様は、我が主君であり、
師である斉彬様を殺害した・・・

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薩摩第11代藩主 島津斉彬(国立国会図書館)
島津斉彬

西郷は、
実に使える・・・

島津斉彬

だが、西郷を使いこなせるのは、
私くらいだろう・・・

「幕末きっての明君」の評価が高い、前藩主の島津斉彬は、「西郷を世に送り出した」人物でした。

西郷隆盛

斉彬様がいなかったら、
おいどんは・・・

もし、斉彬が「具眼の士」でなかったならば、西郷が「表舞台に出てくる」ことはなかったでしょう。

そして、歴史上に「西郷隆盛」という名前が刻まれることがなかったと思われます。

西郷隆盛

その斉彬様を
殺しおって、おのれ・・・

終生、こう思い込んでいた西郷は、英雄にありがちな「超思い込みが強い」人物でした。

島津久光

・・・・・

「斉彬暗殺の真相」は闇ですが、おそらくは、「腹違いの弟・島津久光は無関係」だったでしょう。

そして、「久光の周囲が計画した暗殺」であったと筆者は考えいます。

島津斉彬が暗殺された頃の、西郷の話を上記リンクでご紹介しています。

西郷隆盛

久光様とは、
全然合わん!

「事実上の薩摩の最高権力者」である久光と、終生反目した西郷は、二度目の島流しを喰らいました。

島津久光

とにかく、
西郷は大嫌いだ!

こちらも「思い込みが強い」人物だった島津久光。

もちろん、島津の軍事力の指揮権は島津久光が握っていたのであり、

西郷隆盛

久光様の元では、
おいどんは働きたくなか!

これでは、西郷の「出る幕」があるはずがありませんでした。

大久保利通

久光様・・・
この一蔵に全てお任せを・・・

ここで、登場するのが大久保利通(当時は「一蔵」という名前)でした。

島津久光

一蔵は、
かなり使えるし、ウマが合うな・・・

島津久光

精忠組とは
上手くやりたいし、一蔵は側近にしよう・・・

幕末の三大巨大グループ

・長州・松下村塾:高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋など

・薩摩・精忠組:西郷隆盛、大久保利通、有馬新七、大山綱良など

・肥前・義祭同盟:江藤新平、副島種臣、大木喬任など

そして、島津久光の「秘蔵っ子」としての役を演じ続けた大久保利通。

大久保利通

久光様・・・
薩摩は討幕に向かうべきです・・・

島津久光

ううむ・・・
一蔵がそういうならば・・・

幕末維新期の薩摩圧倒的軍事力とパワーを操った男こそが、大久保利通でした。

そして、憎しみあった島津久光と西郷隆盛の狭間で、時代を変化させました。

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