超高圧的なハルの「通告」〜松岡外相を「消したらどうか」の米要望・「棚ざらし」だった米国との交渉・「比較的穏当」だった米国対案|陸海軍の迷走24・日米開戦と真珠湾へ

前回は「ゾルゲが探知した最高機密「新国策」〜改訂の意義が不明瞭な曖昧性・帝國陸海軍未曾有の大動員と関特演・独ソ戦に全て向けたスターリン〜」の話でした。

目次

「棚ざらし」だった米国との交渉:「比較的穏当」だった米国対案

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1941年6月頃の日本政府・大本営幹部:左上から時計回りに、松岡洋右外相、近衛文麿首相、永野修身軍令部総長、杉山元参謀総長(Wikipedia)

帝国政府・大本営の最高幹部の協議において、捲し立て続けたのが松岡外相でした。

陸海軍部新国策 決定:1941年6月27日(抜粋)

第二の二

帝国は自存自衛上南方用域に対する各般の施策を促進す

之が為対英米戦準備を整へ、先づ「対仏印泰施策要項」及「南方施策促進に関する件」に拠り先づ「南方施策促進に関する件」に拠り)仏印及泰に対する諸方策を完遂し以て南方進出の体制を強化す帝国は本号目的達成の為対英米戦を辞せず

第二の三

独ソ戦に対しては三国枢軸の精神を基調とするも暫く之に介入することなく密かに対ソ武力的準備を整へ自主的に対処す。此の間固より周密なる用意を以て外交交渉を行う。

独ソ戦争の推移帝国の為(極めて)有利に進展せば武力を行使して北方問題を解決し北辺の安定を確保す

第二の四

前号遂行に方り各種の施策就中武力行使の決定に際しては対英米戦争の基本態勢の保持に大なる支障なからしむ

その結果、新たに「新国策」が1941年6月27日に決定、1941年7月2日に御前会議で裁可されました。

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大東亜戦争全史1(服部卓四郎 著、鱒書房)
大東亜戦争全史1

この間、前記米国の
6月21日附対案は・・・

大東亜戦争全史1

棚ざらしに
なっていた・・・

新国策は、決定・裁可となったものの、この頃の帝国にとって「最重要であったはず」の米国との協議。

この「最重要国」米国との協議が「棚ざらし」という、異様すぎる状況が続いていました。

米国:1941年6月21日附対案(抜粋)

一、国際関係及国家の本質に関する合衆国及日本国の観念

両国政府は国家の本質に関する各自の伝統的観念並に社会的秩序及国家生活の基礎的道義的原則は引き続き之を保存する

二、欧州戦争に対する両国政府の態度

日本政府は三国条約の目的が過去に於ても又現在に於ても防御的にして挑発に依らざる欧州戦争の拡大防止に寄与せんとする

合衆国政府は欧州戦争に対する態度は現在及今後も防護と自国の安全と之が防衛の考慮に依てのみ決せられる

三、日支間の和平解決に対する措置

支那国政府及日本国政府が相互に有利にして且受諾し得べき基礎に於て戦闘行為の終結及和平関係の恢復のため交渉に入る

四、両国間の通商

本諒解が両国政府に依り公式に承認されたるときは合衆国及日本国は両国の一方が供給し得て他方が必要とするが如き物資を相互に供給すべきことを保障

五、太平洋地域に於ける両国の経済的活動

日本国政府及合衆国政府は両国が夫々自国経済の保全及発達のため必要とする天然資源(例えば石油、ゴム、錫、ニッケル)の商業的供給と相互協力

六、太平洋地域に於ける政治的安定に関する両国の方針

両国の何れも太平洋地域に於いて領土的企図を有せざることを声明す

七、比律賓(フィリピン)群島の中立化

日本国政府は合衆国政府が希望する時期に於て合衆国政府と比律賓の独立が完成せられるべき際に於ける比律賓群島の中立化のための条約締結への用意

米国の提案は、上記のようなものでした。

超高圧的なハルの「通告」:松岡外相を「消したらどうか」の米要望

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左上から時計回りに、近衛文麿 首相、Franklin Roosevelt米大統領、Cordell Hull米国務長官、松岡洋右 外相(国立国会図書館、Wikipedia)
日本国:附属追加書(抜粋)

三、日支間の和平解決に対する措置

(三)経済的協力-国際通商関係に於ける無差別待遇の原則を本号に適用

(八)満洲国に関する友誼的交渉

四、両国間の通商

現下の国際的非常事態の継続中日本国及合衆国は相互に通常の又は戦前の数量に達する迄物資の輸出を許可すべし

近衛文麿

新国策も大事だが、
米国との交渉をなんとかしなければ・・・

近衛文麿

このままでは
本当に米国と戦争になってしまう・・・

もともと「米協調派」であった近衛首相は、米国との関係改善に意を尽くしていました。

ここで、日米交渉のベースとなるのが「米国対案」と「日本附属追加書」でした。

実は、この二つ以外に「もう一つ」の書類がありました。

Hull

私の
オーラル・ステートメントです!

両国政府の正式声明である文書以外に、ハル国務長官の「オーラル・ステートメント」がありました。

ハル「オーラル・ステートメント」

不幸にして政府の有力なる地位に在る日本の指導者中には国家社会主義の独逸及其の征服政策の支持を要望する進路に対し抜き差しならざる誓約を与へ居るものあること

及之等の人が是認すべき合衆国との諒解の唯一の種類は合衆国が自衛に関する現在の政策を実行することに依り

欧州の戦闘行為に捲き込まるるが如き場合には日本がヒットラーの側に於て戦ふことを予見するが如きなるものべしとの確証が長年に亘り日本に対し真摯なる好意を表し来れる筋寄りの報告を含む世界中有ゆる筋より益々本政府に達しつつあり、

日本国政府の「スポークスマン」に依り何等理由なきにも拘らず為されたる三国同盟の下に於ける日本の誓約及意図を強調せる最近の公式声明(複数)の論調は看過し得ざる態度を例証し居れり

斯る指導者達が公の地位に於て斯かる態度を維持し且公然と日本の興論を上述の方向に動かさんと努る限り現在考究中の如き提案の採択が希望せらるる方向に沿ひ実質的結果を収むるための基礎を提供すべしと期待するは幻滅を感ぜしむることとなるに非程ずや

故に国務長官は本政府は日本国政府が全体として諒解案の目的を構成するが如き平和的進路の追求を希望するものなることに関し現在迄に与へられたるよりも一層明白なる何等かの指示を期待せざるを得ずとの結論に遺憾ながら到達せり、

日本政府は日本国政府が斯かる態度を表明せられんことを真に希望するものなり

このハル国務長官のオーラルステートメントの主張。

端的に言えば、

Hull

Hitlerベッタリの
Matsuokaが邪魔だ・・・

Hull

我がUnited Statesと
真面目に交渉したかったら・・・

Hull

Matsuokaを
消したらどうだ・・・

「松岡外相更迭」を希望するものだったのでした。

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