前回は「松岡洋右外相の運命の予言「南へゆくのは危険」・「東へ侵攻」を目論んだ山本長官・西と南と東の三方作戦〜」の話でした。
世界四大ブロックの一つ「東亜の覇者」目指した大日本帝国

1941年4月13日に、自ら主導して日ソ中立条約を締結した松岡洋右。


スターリンにも
大歓迎された・・・



ずっと緊張関係にあった
我が国とソ連で中立条約締結!
かなり傲岸で独断専行の性格であった松岡外相は、この頃に絶頂期を迎えていました。



この松岡は
大政治家なのだ!
おそらく、松岡外相は内心、自身を「大政治家・大外相」と考えていました。
米国のオレゴン大学を卒業し、英語がかなり達者であり、日本きっての米国通だった松岡。



世界を西欧・東亜・アメリカ・ロシアの
四つのブロックに分けて考えるのが良い・・・



そして、それぞれの
ブロックで指導者がいるべきだ・・・
「世界を四大ブロック」に分割して考えた、松岡構想。
当然、アメリカ地域とロシア地域の覇者は、それぞれアメリカとロシアでした。



そして、東亜を我が大日本帝国が
指導する!



そして、西欧はドイツが
強そうだ・・・
米国の大学を卒業した松岡は、当然「親米派」であり、同時に「親ソ派」でした。
当初、ドイツに対して「好感を持っていなかった」と言われる松岡。
ところが、松岡はドイツと付き合いを深める間に、ドイツの精強さに瞠目しました。



これは、ドイツは西欧の
覇者となるのは間違いない・・・


そして、日独伊三国同盟を猛烈に推進した松岡外相。



まずは、四大ブロックのうち、
西欧の覇者ドイツと手を組んだ・・・
ついで、日ソ中立条約締結を推進した松岡外相の頭の中には、



ついで、四大ブロックのうち、
ソ連と手を組んだ・・・
この頃、すでに支那事変の佳境にあった大日本帝国は、実際「東亜の覇者」でした。
この時点で、「四大ブロックのうち二つと手を組んだ」ことになった松岡構想。



あとは、ドイツとソ連と
組んで、米国とは上手く付き合うのだ・・・
ドイツとソ連と手を組んで、米国に圧力をかけつつ「上手く付き合う」方針を固めていました。
歴史を知っている後世から考えると、少し間が抜けた感じがしないでもない「松岡構想」。
その一方で、当時の世界情勢においては、「一定の論理を持つ構想」でした。
甘い認識だった松岡洋右外相:日本に「独ソ戦」を事前に伝えたドイツ


この松岡構想によると、「大日本帝国+ドイツ+ソ連」の同盟を推進するはずでした。
親ソであり親独となっていた、自称「大外務大臣」の松岡外相は、世界中を飛び回っていました。



私が世界中を
飛び回って、帝国を守るのだ!
そもそも「軍人嫌い」だった松岡外相。
近衛内閣で外相就任を要請された際、



私が外相を
引き受ける以上・・・



軍人などに外交に
口出しはさせません!
こう大見得を切って、軍人、特に陸軍が主導権を握っていた政治状況に対して、



陸軍は
少し黙っておれ!
「陸軍主導の政治」を否定する姿勢を明確にしました。
そして、ドイツ外務大臣のリッペンドロップとも「ツーカーの仲」となっていた松岡外相。



いやぁ、
リッペンドロップ外相!





Matsuokaさん、
ようこそGermanyへ!
ここで、ヒトラー最側近の一人であったリッペンドロップは、



Japanは意思決定が
異常に遅い・・・



いつもHitler総統も
イライラしているが・・・



なんといっても、Japanは
同盟国であり、陸海軍ともに強力だ・・・



ここは、我がGermanyの
最重要戦略を伝えておいた方が良いな・・・
日本の動きが鈍いことに、苛立ちを感じていたドイツ首脳部。
一方で、当時のドイツにとっては「最強の友邦」だった大日本帝国。


訪独した松岡大臣の話が、大東亜戦争全史1(服部卓四郎 著、鱒書房)に描かれています。



Matsuokaさん、
大事な話があります・・・



実は、我がGermanyは
なんとかしてSovietを打倒したい・・・



!!!!!
大日本帝国としては、「同盟中のドイツ」が「中立条約締結中のソ連」と戦争するのは困る事態です。
ドイツによるソ連侵攻が現実となると、双方の「板挟みになってしまう」立場となる松岡外相。



いや、それは・・・
本気ですか?



我がGermanyの軍事力なら、
3,4ヶ月でSovietを屈服させられるだろう・・・



本気でドイツは
ソ連に侵攻する気なのか?
松岡外相は怪訝に思いましたが、リッペンドロップ外傷としては「通告」のつもりでした。
ところが、このリッペンドロップの発言を「開戦への意思表示」と受け取らなかった松岡外相。
その直後の1941年5月28日に、リッペンドロップ外傷にメッセージを送りました。



本気ではないと思うが、
釘を刺しておいた方が良いな・・・
「釘を刺す」程度に考えていた松岡外相は、



今の国家情勢を考えると、
ドイツがソ連と武力的衝突は避けて欲しい・・・
このように「武力衝突を避ける」ことを明確に要望しました。
ところが、すでに「ソ連侵攻決定済み」だったリッペンドロップ外相は、



今さら、Matsuokaは
何言っているんだ?



まったく何なんだ・・・
こっちは「通告した」だけなのだ・・・
苛立ちを隠せませんでした。
「ソビエトを打倒する」というドイツの超重要国家機密に対する松岡外相の姿勢。
この姿勢こそが、日本の外交の舵取りであった松岡外相の「甘さ」でありました。