前回は「新生日本をつくった男・小栗忠順〜超徳川ファースト・名門旗本の家柄・井伊直弼と共に徳川支える・横須賀に見た日本の将来・尊敬の念を明らかにした東郷平八郎長官〜」の話でした。

化政時代の太平の治世に生誕:徳川将軍の治世と名門旗本

1827年7月16日に、名門の小栗家に生まれた小栗忠順。

駿河台に位置する
小栗家を盛り立て、徳川のために!
1827年は文政年間であり、文化時代・文政時代で合わせて「化政時代」と呼ばれる時代です。



私が第十一代将軍
徳川家斉である!
小栗が生まれた頃は徳川家斉の治世で、世の中は概ね治っていました。
1827年は、のちに明治維新となる一大革命・変革が起きた1868年の41年前です。
ところが、小栗が生まれた時代は、江戸は平穏で人々は徳川将軍の治世に満足していました。


後に「勝者」となる薩長側の視点で描かれることが多い、幕末と明治維新。
少なくとも、ペリー来航の頃までは、「徳川幕府中心」の世界でした。
そして、諸藩の大名といえども役職のある幕臣・旗本と同等か格下でした。
特に、現代の大臣にあたる「奉行」に対しては、



〜様(幕臣)も
お変わりなく・・・



その方も、
息災で何よりよのう・・・
藩主といえども、奉行に対しては部下のような立場でした。
そして、当時の日本政府である徳川幕府の中枢を握っていたのが、小栗らの名門旗本たちでした。
数ある旗本の中でも、2500石という大身の旗本に生まれた小栗忠順は、



私が将来の徳川家を、我が国を
動かす一人になるのだ!
おそらく、小さな頃から「自分は別格」であることを強く意識していたでしょう。
そして、将来自分が奉行となって、徳川幕府を差配する期待が高い小栗家に生まれ、



猛烈に勉強するが、
ただ机の上で学ぶだけでは不十分!



俺は、武士でもあり
鍛錬にも力を入れるのだ!
小さな頃から、一生懸命勉強した小栗忠順。
10歳ころの忠順は、勢い込みすぎて「悪童」とも呼ばれるほどでした。
現代の小学校高学年頃には、「自己の未来」を強く意識していたのでしょう。
安積艮斎から懸命に学んだ小栗忠順:「見山楼」出身の俊英たち


そして、8歳の頃から、当時著名な朱子学者であった安積艮斎(あさか ごんさい)の門を叩きました。



あなたが
小栗家の剛太郎さんですね・・・
幼名は「剛太郎」と呼ばれた忠順は、安積艮斎の私塾である「見山楼」に入門しました。


幕末維新期の私塾で最も有名なのは、吉田松陰の松下村塾です。
寺子屋や藩校などの教育機関が、極めて充実していた江戸時代。
統計の取り方にもよりますが、江戸時代の日本人の識字率は世界と比較してもトップ層でした。
そして、各地に百花繚乱のごとく存在したのが私塾で、私塾は「ある師匠に私淑する」雰囲気でした。



ただ実行あるのみ、だ!
諸君、初心を貫け!
過激な発想で知られる吉田松陰は、実は安積艮斎の私塾「見山楼」で学んでいた時期がありました。


「見山楼」で学んだ俊英は、小栗以外には、吉田松陰、高杉晋作、清河八郎らがいます。
さらに、小栗の同僚となる旗本・栗本鋤雲や、身分が低かった岩崎弥太郎も学んだ、と伝えられています。
非業に倒れてしまった清河八郎もまた、幕末の英雄の一人には違いなく、凄まじい面々です。



みなさん、
一緒に朱子学を学びながら・・・



諸外国の事情も
学びましょう!
当時、外国の事情にも詳しく、勃興しつつあった海防論にも影響力を持った安積。
この安積の私塾で学んだのは、まだ8歳であった小栗忠順ではなく、



忠順よ・・・
安積先生の元で、しっかり学ぶのだ・・・
当然、小栗家の意向でしたが、この「見山楼」で学んだことは、小栗忠順に強い影響力を与えました。
さらに、小栗が恵まれていた事情がありました。
それは、実は「見山楼は小栗家の屋敷内」にあったことです。
つまり、安積艮斎は高名な学者といえども、「小栗家の居候同然」であり、



小栗家の坊ちゃんには
しっかり教え込まねば!
小栗家の跡取りとなる「剛太郎(忠順)坊ちゃん」は、別格の扱いだったでしょう。
そして、剛太郎(忠順)には多大な気を遣いながら、懸命に教えたでしょう。



この子は、頭脳明晰で、
しっかりしている・・・



この子は将来大人物に
なるだろうから、力を入れよう!



私は思うことを
ハッキリ主張するのだ!
後年、幕臣たちの中でも「ハッキリ物申す」ランキングでは、「勝とトップを競った」小栗。
この小栗の「ハッキリした性格」は、既に若者の頃から醸し出されていました。



小栗家の坊ちゃんは、
私が学問を叩き込んで見せよう!
「居候の高名な学者」安積艮斎に叩き込まれた小栗少年。



世界は広い!
私も懸命に学んで広い視野を!
懸命に学んだ小栗は、極めて優れた「視野の広い」人物となり、幕末を駆け抜けてゆきます。