「超一級資料」信長公記〜太田牛一が生きた「信長の時代」の記録・「桶狭間」前夜の生き生きとした描写・信長「鎧をつけ、立ったまま食事」〜|桶狭間の戦い1・信長公記1

前回は「時には憂鬱になった信長〜リアリティあり過ぎる描写とフロイスの文章力・16世紀「二大覇権国」のポルトガル・「世界分割」トルデシリャス条約〜」の話でした。

目次

「超一級資料」信長公記:太田牛一が生きた「信長の時代」の記録

New Historical Voyage
信長公記(太田牛一著、中川太古訳、新歴史紀行)

今回は、織田信長の第一級資料と名高い、信長公記の話です。

ルイス・フロイス「日本史」と比較して、淡々とした事実の描写が羅列されている傾向が強い信長公記。

「織田信長の一代記」であり、織田信長の家臣であった太田牛一が江戸時代初期に書いた説が有力です。

1527年生まれの太田牛一にとって、主君であった信長は7歳年上でした。

名前生年
毛利元就1497年
北条氏康1515年
今川義元1519年
武田信玄1521年
太田牛一1527年
長尾景虎(上杉謙信)1530年
織田信長1534年
島津義弘1535年
羽柴(豊臣)秀吉1537年
徳川家康1543年
太田牛一と戦国大名の生年

太田牛一と著名戦国大名たちの生年をまとめると、上の表になります。

「桶狭間」の時は34歳(数え年、以下同)、「本能寺」の時は56歳だった太田牛一。

牛一は、「本能寺」後は丹羽長秀に使え、その後、秀吉に仕えた説が有力です。

太田牛一

故意に削除したものはなく、
創作もしていない・・・

太田牛一

これが偽りであれば、
神罰を受けるであろう・・・

太田牛一自身がこう記しているように、創作らしきものは少なく、「事実」がほとんどと思われます。

一部の年代等に誤記がありますが、ほぼ正しい歴史と考えて良さそうです。

長秀・秀吉に仕えた時代に、編纂を始めた説が有力である信長公記。

その一方で、様々な細かな記録も多く、筆者は牛一が信長家臣の頃からメモをとっていたと考えます。

牛一の年齢を考えると、「60歳頃から編纂開始」と考えるのは、不自然に感じます。

この辺りは歴史的考究が重要ですが、本文の内容と牛一の年齢から、筆者はこのように考えます。

とにかく、「織田信長とその時代の超一級資料」である信長公記は、極めて重要な記録です。

「桶狭間」前夜の生き生きとした描写:信長「鎧をつけ、立ったまま食事」

新歴史紀行
織田信長像(岐阜駅前)(新歴史紀行)

織田信長が幼少の頃から、細かな記録が多い信長記。

今回は、桶狭間の戦いの記録を読んでみましょう。

信長記

永禄三年(1560年)五月十七日、
今川義元は沓掛に陣を構えた・・・

佐久間盛重

今川方は十八日夜に
大高の城へ兵糧を補給し・・・

佐久間盛重

織田方の援軍が来ないうちに
十九日朝の潮の干満を考えて・・・

佐久間盛重

我が方の砦を攻撃すること
確実との情報を得ました!

織田信長

うむ・・・
分かった・・・

信長記

十八日夕刻になってから、
佐久間盛重、織田秀敏から信長に報告した・・・

「桶狭間」前夜の様子を、詳細な日にちのみならず、大体の時間まで細かく描写する太田牛一。

「大体の記憶」や「曖昧な記憶」もあるかもしれませんが、全体的に整合性は取れています。

信長記

しかし、その夜の信長と家老衆との
談話には、作戦に関する話題は少しも出ず・・・

信長記

いろいろ雑多な
世間話だけで・・・

織田信長

さあ、夜も更けたから
帰宅して良いぞ!

信長記

と退出の
許可が出た・・・

このあたりは、「桶狭間前夜」の有名な話で、信長公記が元です。

織田家家老

運の尽きる時には
知恵の鏡も曇るというが・・・

織田家家老

今がまさに
その時だ・・・

信長記

と、皆で信長を評し、
嘲笑しながら帰った・・・

信長記

予想どおり、夜明け方、
佐久間盛重、織田秀敏からから・・・

佐久間盛重

すでに鷲津山・丸根山の両砦は
今川方の攻撃を受けております!

信長記

との報告が
入った・・・

信長記

この時、
信長は「敦盛」の舞を舞った・・・

織田信長

人間五十年、下天の内を
くらぶれば・・・

織田信長

夢幻の
ごとくなり・・・

織田信長

ひとたび生を得て、
滅せぬ者のあるべきか・・・

信長記

とうたい
舞って、

織田信長

法螺貝を吹け!
武具をよこせ!

信長記

と言い、鎧をつけ、
立ったまま食事をとり・・・

信長記

兜をかぶって
出陣した・・・

フロイス「日本史」と比較すると、特段の主観はなく、とにかく事実の羅列です。

その一方で、とても生き生きした描写です。

「鎧をつけ、立ったまま食事をとり」のあたりが、いかにも信長らしいです。

この辺りは定説化しており、有名な話が多いですが、報告者の名前、内容が詳細です。

「佐久間盛重、織田秀敏」と二人の名前をきちんと挙げ、「誰が、何を、いつしたか」が明確です。

明確で、生き生きとした描写である信長公記は、読むと引き込まれる不思議な世界です。

次回も、「桶狭間」を読み進めます。

New Historical Voyage

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次