前回は「日本の帝王から海外へ雄飛する信長〜無官の信長・三職推任問題・征夷大将軍か関白か太政大臣か・信長に相応しい官職・独自の官職を模索・「信長の弟子」たちが四方で活躍・各方面軍団長たち〜」の話でした。
織田家の圧倒的パワー:膨大な富と太い海外との繋がり
武田信玄が亡くなり、1573年に浅井・朝倉を滅亡させた織田家。
そして、京都から現将軍・足利義昭を追放するという強硬手段に出た信長。
この時期以降の織田家は、以前にも輪をかけて凄まじい勢いで膨張してゆきました。
そして一気に武田家を滅亡に追い込んだ織田家及び信長。
この頃、日本全国で1800万石ほどの生産量を持っていたと見られます。
そして、織田家は600万石程度を有する存在となりました。
つまり「日本全国の1/3」を握った圧倒的勢力となった織田家。
とは言っても「まだ1/3」という見方もあります。
他の「2/3が大連合を組めば、織田家を倒せる」ようにも思えますが、そもそも「大連合」はあり得ません。
九州だけでも、大友・龍造寺・島津が三つ巴で争い、とても「大連合」を構築できる状況にはありません。
現実として「可能性は0%」ですが、仮に「織田家以外が大連合軍を組んだ」とき。
それでも、「織田以外の大連合軍」は、織田家には叶わなかったでしょう。
圧倒的経済力を持っていた織田家は、その膨大な富を一手に握っていました。
当時、日本で鉄砲は多数国内生産していました。
ところが、肝心の鉄砲を打つために必要な硝石は国内では産出できませんでした。
「輸入頼り」だった硝石は、多くは堺経由で日本に入ってきていました。
大友が押さえている博多、あるいは島津家の坊津などにも入ってきていたでしょうが、
OtomoやShimazuも
硝石が欲しいらしい・・・
Japanで最もお金持ちは
Odaだ!
やっぱり、
Odaに売るのが一番だな!
最強の経済力を有し、宣教師たちとも太い繋がりを持っていた織田家。
硝石や新兵器等も織田家がダントツだったのが現実でした。
そのため、他の大名たちが「束になっても叶う相手ではない」状況でした。
中世を抹殺した帝王・信長の視線:天皇より上の存在
「中世を抹殺した帝王」はどのような立場で、その仕事を仕上げて海外に雄飛してゆくのか。
そこで、「三職推任」問題となります。
当時「正親町天皇に退位を迫っていた」とか「圧力をかけていた」という説もあります。
信長としては、
日本の帝王は、
私なのだ!
天皇・朝廷は、
別に存在しても構わないが・・・
あくまで「国内」向けだ!
このくらいに思っていたのでしょう。
征夷大将軍・関白・太政大臣、いずれに就任するににしても、
「朝廷から任命される」
形式は困る・・・
余が「天皇・朝廷より下」と、
海外に誤解されるのではないか。
信長の懸念はこれだったでしょう。
実際、幕末にハリスがやってきて、日米修好通商条約を結ぶ時、徳川幕府は「天皇の勅許」を目論みます。
ハリスが来た頃の話を、上記リンクでご紹介しています。
この後、大老 井伊直弼が条約締結を強行しますが、序列が明確な海外にとっては、理解不能な事態でした。
What ?
徳川幕府の決定を、
天皇が反対して潰した?
一体、この国の最高意思決定者は
誰なんだ?
徳川幕府は、
外交権を持っているのではないのか?
この事態が生じたのは、1858年。
信長が「三職推任」問題で悩んでいた1580〜82年頃の、約280年後の話でした。
約300年後に起きた問題を、すでに認識していた信長。
信長には世界における「日本の立ち位置」が、くっきりと見えていたのです。
今の歪な状況は、
海外諸国に誤解される。
信長が目論んだ「新たな地位」:天皇・朝廷より遥かに上の存在
信長が「朝廷をなくす」「天皇制を廃止する」ことを考えていたという説もあります。
ところが、そういう荒っぽいことをすると、国内の収まりがつきにくくなります。
国内が混乱するのは、
望ましくない!
現実的では
ないわ!
信長は非常に合理的なリアリストですから、無駄なことは避けるはずです。
名称は、
別にどうでも良い・・・
むしろ、既存の朝廷任命の職には興味がなかったでしょう。
自分で「覇王」なり「帝王」を想起させる「新たに創り出す地位・職務」を考えていたでしょう。
「岐阜」という
名前を作った時のように・・・
未来的で、
世界に通用する名前が良いわ!
その過程で、
一時的に征夷大将軍でも、
関白でもなってやってもよいが・・・
くらいに思っていたように思います。
ただし、
「一時的」だ!
どうでも良いから、「天皇・朝廷より下」と
誤解されることだけは避けなければ!
中世を抹殺した男にとって、「天皇の下位としての武家」の立場の打破が最重要でした。
「日本の国家像の打破」こそが、中世抹殺の最終章だったのです。
「公家より武家が下」という
異常事態を、余が是正せねば!
それが出来るのは、
余しかいない!
余は、
天皇より上なのだ!
安土城をつくった信長。
安土城の一角に、「自らを神に擬す」かのような施設をつくります。
これは、キリスト一神教のキリシタンにとっては、「絶対受け入れられない」事態でした。
少なくとも、日の本の国においては、
余が天皇・朝廷より遥かに上の存在!
それを、全員に理解させるためには、
「余が神である」ことを理解させるのが最も早い!
キリシタンの考えをしっかり理解し、「地球が丸い」ということも理解した先進的頭脳の持ち主・信長。
信長にとっては「神となること」すら、
余は「日本の帝王」で
あるのだ!
「日本の帝王」となり、海外に飛躍するための方便に過ぎなかったのです。
次回は上記リンクです。