滝川一益と北条氏政の睨み合い〜北条氏政の思惑・御館の乱と反武田同盟・本能寺の変と関東の王のプライド・そもそも北条領だった北関東・氏政の怨念〜|滝川一益6・人物像・軍事能力・エピソード

前回は「急速な出世から暗転した滝川一益〜北条家のプライド・関東の王としての自負・光る北条氏政の瞳・名将の父氏康を継ぐ者が選ぶ道〜」の話でした。

滝川一益(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研
目次

北条氏政の思惑:御館の乱と反武田同盟

戦国大名 北条氏政(Wikipedia)

上杉謙信亡き後勃発した、上杉家の後継問題は「御館の乱」という内乱に至りました。

上杉謙信の後継者として、謙信の姉の息子・景勝と養子・景虎が争いました。

実は、景虎は北条氏康の七男で北条氏政の実の弟でした。

そして、上杉家に人質同然で送られました。

戦国大名 上杉謙信(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

「北条家からの人質」である北条三郎を見た謙信は、

北条三郎よ!
気にいったぞ!

お前に私の以前の名前、
景虎を与えよう!

あまりに北条三郎を気に入った上杉謙信は、元の自分の名である景虎を与え、上杉景虎と名乗らせました。

後から考えれば、上杉謙信のこの行為は「非常に軽率であった」でしょう。

その後、

うう・・・・・

急死してしまった謙信。

後継を決めないまま、亡くなってしまったのでした。

普通に考えれば、「謙信の身内=姉の子である景勝」が後継者となりますが、

上杉景虎様は、
謙信公に大変気に入られて、「景虎」の名前を頂戴した身・・・

景虎様こそ、
謙信公の後継者に相応しい!

この声に、謙信に「関東管領職を委ねた」上杉憲政が同調しました。

実の弟・上杉景虎に対して、北条氏政は、

当然、後継者は
我が弟の上杉景虎に決まっておる!

実弟を支援しました。

氏政としては、

三郎(景虎)が上杉を継げば、
北条+上杉の強力な勢力が誕生するわ・・・

という下心もあったでしょう。

ところが、

戦国大名 武田 勝頼(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

私は、上杉景勝殿を
支援する!

武田勝頼が上杉景勝側に周り、一気に景虎側が弱くなりました。

最終的には、地で地を洗う争いとなり、氏政の実弟・上杉景虎(北条三郎)は自刃に追い込まれたのでした。

おのれ!
武田勝頼!

弟の恨み、
晴らしてくれるわ!

これで、プライドの高い北条氏政は激怒して、「武田との完全なる断交」を決定しました。

そして、織田家による武田侵攻戦では、徳川と共に北条も甲斐に攻め込んだのでした。

つまり、この時点では、北条家は「織田家の従属的立場」となっていたのでした。

滝川一益と北条氏政の睨み合い:本能寺の変と関東の王のプライド

本能寺の変(歴史道vol.13 朝日新聞出版)

織田家の関東方面軍司令官・滝川一益に従属していた北条家。

本能寺の変で信長・信忠が自刃に追い込まれた事実を掴みます。

ここで、プライド高い北条氏政。

信長と嫡男・信忠のいない
織田など、どうでも良いわ!

関東の王は
俺だ!

織田の家臣である
滝川ではない!

織田家との断交を決断します。

ここぞとばかりに、滝川一益と断交し、北関東へ一気に勢力拡張を図ります。

そもそも北条領だった北関東:氏政の怨念

関東・甲信勢力図 1555年(歴史人 2020年11月号掲載図から一部抜粋

そもそも上野周辺の関東北部は30年ほど前は「北条家のものだった」のです。

その後、上杉謙信が突然関東に乱入してきたり、武田信玄が駿河に侵攻したりでゴタゴタしました。

一度は関東北部を手中に入れた北条家は、上杉家を継いだ上杉謙信に大きく領土を削られます。

関東・甲信勢力図 1561年(歴史人 2020年11月号掲載図から一部抜粋

その後、長野業政が西上野に勢力をはっていました。

業政に手こずっていた信玄が、業政死後に上野に進出してきて、上野は武田に奪い取られてしまったのです。

桶狭間の合戦後の武田・今川・北条三国同盟(別冊歴史人 戦国武将の全国勢力変遷地図 KKベストセラーズ)

一度は三国同盟を結んでいた武田・北条・今川家。

1560年の桶狭間の合戦で今川義元が討たれて今川家が凋落します。

桶狭間の合戦後の上杉・今川・北条三国同盟(別冊歴史人 戦国武将の全国勢力変遷地図 KKベストセラーズ)


本来、今川家を一緒に支えなければならないのに、海を目指して今川と断交した武田信玄。

この煽りを受けて、戦国時代の先駆け的存在であった北条早雲の念願の「関東制覇」がチラついた北条家。

地道に、少しずつ関東に勢力を伸ばしていった北条家でした。

戦国大名 北条早雲(Wikipedia)

北関東には「怨念のような」感情を持つ北条氏政。

もともと北関東は、
俺たち北条のものだ!

「本来自分達のものであった領土」を、上杉・武田に横取りされ、挙句の果てに織田家が乗り込んできました。

滝川、
お前は関東とは関係ない!

お前たちから、
返してもらうぜ!

大軍を率いた北条氏政は、滝川領へ一気に押し寄せてゆきます。

なんと・・・・・

北条が
裏切っただと・・・・・

北条家よりもはるかに寄騎の少ない滝川一益は、絶体絶命となります。

新歴史紀行

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