見通しが甘かった武田信玄〜難治の国越後守護代長尾家・川中島から目と鼻の先の春日山城・未知の若者だった景虎〜|武田信玄8・人物像・軍事能力・エピソード

前回は「川中島の戦いの真相〜「売られた喧嘩」を買わざるを得なかった景虎・景虎の川中島への強い思い・かつて長尾領であった川中島・まだまだ若造だった信玄・長尾家の防衛戦〜」の話でした。

戦国大名 武田晴信(信玄)(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)
目次

難治の国・越後守護代長尾家

戦国大名 上杉謙信(長尾景虎)(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

越後守護代の家柄だった長尾家。

我が長尾家は
かなりの名門なのだ!

この「守護代」の家柄の長尾家に対して、中世的思考が強かった信玄は、

我が武田家は
甲斐守護だ!

そして清和源氏の流れを
くむ名門中の名門なのだ!

と考えていたでしょう。

本音では、

長尾家と比較されることすら、
煩わしいわ!

こう考えていたであろう武田信玄。

そもそも、越後はもともと北部の揚北衆が反乱を繰り返すなど、家臣や国衆の統率に大変苦労する国柄でした。

越後は
反乱に次ぐ反乱・・・

いやはや、
もう参ってしまう・・・

関東・甲信勢力図 1555年(歴史人 2020年11月号掲載図から一部抜粋)

とにかく反乱に次ぐ反乱に悩まされ続けた景虎(謙信)。

特に、北方の揚北衆は独立心が強く、長尾家などなんとも思っていません。

長尾が何だ!
上杉が何だ!

このような状況において、越後の国衆たちは長尾家に従っていたとしても、景虎に弱みが見えたら、

よっしゃ!
独立だ!

こう考えるであろう人物が多数いたのでした。

困り果てた若き景虎は、

こんな反乱ばかりの
国は納められない・・・

一度は、長尾家当主の座を放棄する寸前まで追い詰められました。

この中、

何としても、
我が長尾家、私が頼りになるところを見せければ!

そのため、村上義清の要望を受け入れざるを得なかったでしょう。

謙信としては上杉家・国衆の統率のためにも、絶対に。

川中島から目と鼻の先の春日山城

1542年頃の武田家領土および周辺(歴史街道2020年11月号 PHP研究所)

さらになんといっても、川中島は謙信の拠点の春日山城から近すぎます。

上図を見ればわかる通り、川中島の位置は武田・上杉両家にとって全く異なる位置でした。

川中島と謙信の拠点:春日山城の距離と、川中島と信玄の拠点:躑躅ヶ崎館の距離は、まるで違います。

上杉謙信にとっては、

川中島は「春日山城から目と鼻の先」
ではないか!

と思ったに違いないでしょう。

川中島を
獲られては敵わん!

武田に、喉元に刃物を突き立てられている状況に
なってしまうではないか!

謙信からすると、

川中島は
絶対に譲れん!

という気持ちになるのは当然だったのでした。

見通しが甘かった武田信玄:未知の若者だった景虎

第四次川中島の戦い(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

誰しも本拠地の近くを敵に奪われるのは、絶対に避けたいことです。

そもそも、

私が強く、信玄を追っ払うところを
越後の国衆に見せる!

と、かなり高いテンションであった景虎(謙信)。

これに加えて、

川中島は、我が本拠地の
春日山城を守るためには必須の地!

我が本拠地・春日山城の
安定化のためにも、川中島は守らねばならん!

本拠地近くに敵軍がいれば、おちおち自分は関東などに遠征できなくなります。

川中島を獲って、
信濃全土を固めるぞ!

信玄にとっては、侵略戦争以外のなにものでもありません。

なんの!
負けてたまるか!

景虎にとっては「絶対に負けられない戦」であったのでした。

川中島を獲られては、
上杉家は終わりだ!

名前生年
毛利元就1497年
北条氏康1515年
今川義元1519年
武田信玄1521年
長尾景虎(上杉謙信)1530年
織田信長1534年
戦国武将大名の生年

武田信玄は上杉謙信よりも9歳年上です。

第N次
第一次1553年
第二次1555年
第三次1557年
第四次1561年
第五次1564年
川中島の戦い

最初の第一次川中島の戦いは1553年に勃発し、この時は信玄が32歳、対する景虎は23歳の若者でした。

景虎という男の戦闘能力は、
よく分からんが・・・

信濃侵攻で苦渋を舐め続けた、
ワシには敵わないだろう!

景虎が「軍神である」とは、露とも思わなかった信玄。

そして、それは「信玄の見通しが甘かった」のではなかったのでした。

越後の長尾景虎って、
どんな人?

ニューフェース・景虎に関しては、未知数のことが多すぎたのです。

そして、この「信玄の見通しの甘さ」は武田家にとって致命傷となりました。

新歴史紀行

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