海を目標に南下を決断した武田信玄〜凋落した今川家への姿勢・激怒した北条氏康・甲相駿三国同盟崩壊・上杉と北条の越相同盟・敵の敵は味方〜|武田信玄4・人物像・軍事能力

前回は「盤石の武田家を築いた武田信玄の軍略〜越後の龍との死闘・神がかりの軍神長尾景虎・武田典厩信繁の戦死〜」の話でした。

武田晴信(信玄)(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)
目次

海を目標に南下を決断した武田信玄:凋落した今川家への姿勢

桶狭間の戦い(Wikipedia 歌川豊宣画)

1560年の桶狭間の戦い後、凋落した今川家。

兼ねてから評判が、非常に悪かった今川義元の後継の今川氏真は、弔い合戦すらしようとしません。

戦国大名 徳川家康(松平元康)(Wikipedia)

今川に「従属」というよりも、「臣従していた」に近い状況であった松平元康。

氏真様は、
弔い合戦すらしようとしない・・・

これでは、超名門・今川家も
終わりだろう・・・

こうなったら、
独立するぞ!

元康は、今川に反旗を翻して独立大名となります。

そして、義元の元を捨て、徳川家康と名乗ります。

今川の呪縛から逃れ、
独立だ!

当時の徳川家(松平家)は、三河の国人レベルの弱小勢力でした。

いわば「はるかに格下の徳川から反旗を翻された」形の今川氏真。

氏真は、
徳川を叩き潰すのか?

ところが、「温室育ち」だった今川氏真は、モタモタしているだけでした。

もはや今川家は
持たぬな・・・

今川は我が武田を上回る
名家であり、同盟も大事だが・・・

ここで、熟慮する武田信玄でしたが、信玄の瞳が光りました。

ならば、我が武田が
今川の領土を頂こう!

そして、念願の海を
手に入れよう。

今川家との断交を考える晴信。

それに対して、反対したのは長男の武田義信。

三国同盟の際に、今川義元の娘を正室に迎えている義信からすれば、断交に反対するのは当然のことでした。

義信には、父信玄の発想は理解できません。

なぜ、
そんな非道を考えるのですか?

戦国の世は、
弱肉強食なのだ!

よいから、
わきまえよ!

嫌です!
断固反対です!

ならば・・・・・
仕方ない・・・・・

信玄は断固反対する義信を、切腹に追い込んだ信玄。

そして、武田家は今川家と断交します。

激怒した北条氏康:甲相駿三国同盟崩壊

甲相駿三国同盟(歴史人 別冊「戦国武将の全国勢力変遷地図」)

信玄は武田・北条・今川の三国同盟を破棄・今川家と断交し、南下して「念願の海」を手に入れようと企みます。

今川義元の軍師であった太原雪斎が具体的な進行役となったと言われる「甲相駿三国同盟」は完璧な同盟でした。

「お互いの背後を固める」意味では、これより優れた同盟構築は当時なかったでしょう。

1554年に締結された甲相駿三国同盟でしたが、1568年に

南下して、
今川家の駿河を奪取する!

武田信玄の一方的な裏切りにより、一気に崩壊しました。

桶狭間の合戦後の武田・今川・北条三国同盟(別冊歴史人 戦国武将の全国勢力変遷地図 KKベストセラーズ)

これに怒り心頭だったのが、三国同盟の一角だった北条氏康。

戦国大名 北条氏康(Wikipedia)

信玄め!
血迷ったか!

北条家は、公然と武田家と敵対します。

北条家は今川家との同盟を維持し、新たな対策を考える氏康。

武田を
ブチのめすためには・・・

どうするのが
ベストか・・・

1568年時点では、国力・石高では武田・今川を凌いでいたと考えられる北条家。

だが、あの武田信玄率いる
武田の軍事力・・・

武田と正面切って
戦うのは、危険すぎる・・・

・・・・・

ここで、しばらく考えた氏康。

一人の人物が頭に浮かびました。

v
戦国大名 上杉政虎(謙信)(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

うむう・・・
奴しかいないか・・・

憎いやつだが、
アイツしかいない・・・


関東管領を継いだ長尾景虎改め、上杉政虎に白羽の矢を立てます。

新たに武田家と敵対関係にある上杉家と同盟を結び、氏康は信玄と対抗しようと考えます。

上杉と北条の越相同盟:敵の敵は味方

桶狭間の合戦後の上杉・今川・北条三国同盟(別冊歴史人 戦国武将の全国勢力変遷地図 KKベストセラーズ)

この少し前には、上杉政虎に小田原まで攻め込まれて、北条家は一時は滅亡寸前まで追い込まれました。

あの時は、
本当に滅亡寸前まで追い込まれた・・・

上杉政虎に対しては憤懣やるせない氏康。

政虎に侵食された関東は、政虎が越後に帰ると「鬼のいぬ間に」と北条は再び関東の勢力圏を大きく取り戻しました。

関東の国衆たちは、
ほぼ戻ってきたが・・・

上杉め・・・

上杉政虎(謙信)に対して、怒り心頭の思いが強い氏康。

その張本人である
上杉政虎と結ぶとは・・・

北条のプライドが
許さんが・・・

ところが、そんなことは言っていられません。

それよりも、
晴信が許せん!!

「敵の敵は味方」と言わんばかりに、信玄と鋭く敵対する政虎との同盟交渉を進めます。

そして、因縁の政虎と結んだ氏康。

信玄が選んだ「今川との断交」、
絶対に許し難い!

北条が上杉と
同盟を結んだか・・・

まあいい、
今川領を切り取れ!

駿河を手に入れた信玄は、得意の絶頂だったでしょう。

徳川家と
領土を折半するのだ!

長尾(上杉)と戦うために、「後背を固める」意図で成立した三国同盟。

晴信は、この同盟を自ら潰し、武田家は北条・今川・上杉に包囲された形になります。

念願の海と
海運が我が手に!

勇躍した晴信は、織田・徳川と結んで今川領に侵入します。

戦国大名 織田信長(歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研)

信玄とは、もうしばらく
結んでおこう・・・

ところが、長男義信を切腹に追い込んだことは「信玄の浅慮」でありました。

その後の武田家の運命を考える時、このことは武田家にとって致命傷となりました。

新歴史紀行

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