前回は「真珠湾奇襲攻撃 78〜ルーズベルト大統領の演説・原稿・来栖三郎・野村吉三郎〜」の話でした。
凱旋帰国した南雲機動部隊


山本長官!
ただいま戻りました!



我らは大戦果を
挙げてきました!



我が連合艦隊に
損失艦はありません!



うむ・・・
良くやってくれた!
こう褒めちぎる山本長官。
その脇には、宇垣参謀長が轟然とした姿で立っていました。



・・・・・



・・・・・
連合艦隊司令部の命令を、事実上無視した草鹿参謀長。
ちょっとした沈黙が流れます。



宇垣さんは、
しつこい性格だから・・・



まだ、ミッドウェー攻撃の
ことを根に持っているんだろう・・・
対して、宇垣参謀長は、



この馬鹿が・・・
一体、命令をなんだと思っているんだ・・・
もともと仲が極めて悪い宇垣参謀長と草鹿参謀長。
しばし、沈黙が流れ「睨み合い」の状況となります。
ここで、山本長官が、



とにかく、
我が艦隊の損失がない、のは素晴らしいことだ!



そうだろう!
宇垣参謀長!



はっ!
おっしゃる通りです。



不在の米空母は、
残念だが・・・



機動部隊は
大戦果を挙げた、のだ!



しかし、ここで
「勝って兜の緒を締めよ!」だ!



奢っては、
ならんぞ!



はっ!
愕然とする山本長官


山本長官が「事後通告」を知ったのが、いつかは定かではありません。
おそらく、南雲長官たちが凱旋帰国した少し頃でしょう。
山本長官!
外務省の話では・・・
奇襲攻撃の通告が、
「攻撃開始後」だったとのことです!



なんだと!!



そんな馬鹿な!!
愕然とする山本長官。



そんな・・・



そんなはずはない!



きちんと定刻通りに、
通告するように念を入れていた!



そして、我らの攻撃は
「予定の5分前」だったのだ!



時差の
計算ミスではないのか?
間違い
ありません!



なんたる、
なんたること・・・
「米空母不在」だけでも、内心「痛恨の一撃」である山本長官。
挙げ句の果てに、「想像すらしていなかった」宣戦布告前の奇襲攻撃に愕然とします。
懊悩する山本長官





我らは、時間通り
攻撃を行いましたが・・・



我らが攻撃開始したのは、
事前に取り決めていた13:30の5分前・・・



13:25に攻撃開始したのは
間違いありません!



なぜ、
このようなことに?



まさか、
野村さんが・・・


海軍大将である野村吉三郎大使は、山本長官の大先輩です。
しかも、両者の仲は良好でした。
米大使が陸軍ではなく、海軍であることもまた「万全期した」結果だったのです。
これは、中国などで戦線を拡大していた陸軍が「米国から嫌われていた」も大きな理由です。



むう・・・





事後通告は、
大失態ですが・・・



やむを
得ません!



次の作戦計画に
万全期すべきです!



まあ、
そうだが・・・
曖昧な日本海軍の作戦計画が、意外な形で結末を迎えることになりました。



この事実を、
どう米国が利用するか・・・
頭を切り替えようとするも、



こんなことが・・・
まさか・・・
苦しむように声を絞り出して、懊悩する山本長官でした。