「通告前の奇襲攻撃」に愕然とした山本五十六長官〜懊悩する山本長官・事前計画通りに攻撃した赤城司令部・凱旋帰国した南雲機動部隊・睨み合う宇垣参謀長と草鹿参謀長〜|真珠湾奇襲攻撃79・太平洋戦争

前回は「ルーズベルト大統領の米議会演説〜推敲を重ねた演説原稿・何度もチェックしたルーズベルト・日本が全く思っていなかった方向へ・野村と来栖の表情の謎〜」の話でした。

目次

凱旋帰国した南雲機動部隊:睨み合う宇垣参謀長と草鹿参謀長

左上から時計回りに、山本五十六 連合艦隊司令長官、南雲忠一 第一航空艦隊司令長官、草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長、山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研、Wikipedia)

真珠湾奇襲攻撃に向かっていた南雲機動部隊が「ほぼ無傷」で、内地に帰還しました。

山本長官!
ただいま戻りました!

我らは大戦果を
挙げてきました!

我が連合艦隊に
損失艦はありません!

うむ・・・
良くやってくれた!

こう褒めちぎる山本長官。

その脇には、宇垣参謀長が轟然とした姿で立っていました。

・・・・・

・・・・・

連合艦隊司令部の命令を、事実上無視した草鹿参謀長。

ちょっとした沈黙が流れます。

宇垣さんは、
しつこい性格だから・・・

まだ、ミッドウェー攻撃の
ことを根に持っているんだろう・・・

対して、宇垣参謀長は、

この馬鹿が・・・
一体、命令をなんだと思っているんだ・・・

もともと仲が極めて悪い宇垣参謀長と草鹿参謀長。

しばし、沈黙が流れ「睨み合い」の状況となります。

ここで、山本長官が、

とにかく、
我が艦隊の損失がない、のは素晴らしいことだ!

そうだろう!
宇垣参謀長!

はっ!
おっしゃる通りです。

不在の米空母は、
残念だが・・・

機動部隊は
大戦果を挙げた、のだ!

しかし、ここで
「勝って兜の緒を締めよ!」だ!

奢っては、
ならんぞ!

はっ!
承知しました!

「通告前の奇襲攻撃」に愕然とした山本五十六長官

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山本長官が「事後通告」を知ったのが、いつかは定かではありません。

おそらく、南雲長官たちが凱旋帰国した少し頃でしょう。

山本長官!

外務省の話では・・・

奇襲攻撃の通告が、
「攻撃開始後」だったとのことです!

なんだと!!

そんな
馬鹿な!!

愕然とする山本長官。

そんな・・・
それはないはずだ!

そんな
はずはない!

きちんと定刻通りに、
通告するように念を入れていた!

そして、我らの攻撃は
「予定の5分前」だったのだ!

時差の
計算ミスではないのか?

我々も
何度か確認致しましたが・・・

「通告前の奇襲攻撃」に
間違いありません!

なんたる、
なんたること・・・

「米空母不在」だけでも、内心「痛恨の一撃」である山本長官。

挙げ句の果てに、「想像すらしていなかった」宣戦布告前の奇襲攻撃に愕然とします。

懊悩する山本長官:事前計画通りに攻撃した赤城司令部

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

我らは、時間通り
攻撃を行いましたが・・・

我らが攻撃開始したのは、
事前に取り決めていた13:30の5分前・・・

13:25に攻撃開始したのは
間違いありません!

なぜ、
このようなことに?

まさか、
野村さんが・・・

野村吉三郎 米国大使(連合艦隊 勃興編上巻 世界文化社)

海軍大将である野村吉三郎大使は、山本長官の大先輩です。

しかも、両者の仲は良好でした。

野村さんなら
きっと上手くやるはずだが・・・

海軍兵学校卒業期名前役職
26野村 吉三郎米国大使
32山本 五十六連合艦隊司令長官
36南雲 忠一第一航空艦隊司令長官
38三川軍一第三戦隊司令官
40宇垣 纏連合艦隊参謀長
40山口 多聞第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介第一航空艦隊参謀長
42加来 止男飛龍艦長
連合艦隊幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(1941年12月)

米大使が陸軍ではなく、海軍であることもまた「万全期した」結果だったのです。

これは、中国などで戦線を拡大していた陸軍が「米国から嫌われていた」も大きな理由です。

むう・・・
そうか・・・

「米空母を撃ち漏らした」ことは、何とか自身で納得した山本長官でしたが、

こんなことが
あるのだろうか・・・

まさに「予想もしなかった事態」に、思わず顔を顰めました。

宇垣纏 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

事後通告は、
大失態ですが・・・

やむを
得ません!

次の作戦計画に
万全期すべきです!

まあ、
そうだが・・・

曖昧な日本海軍の作戦計画が、意外な形で結末を迎えることになりました。

この事実を、
どう米国が利用するか・・・

頭を切り替えようとするも、

こんなことが・・・
まさか・・・

苦しむように声を絞り出して、懊悩する山本長官でした。

新歴史紀行

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