唇噛む山口司令官が感じた「嫌な予感」〜戦果ゼロのウェーク島攻撃・和を重視した山本五十六長官・「違う方向を向いていた」連合艦隊司令部〜|真珠湾奇襲攻撃77・太平洋戦争

前回は「演説原稿を慎重に作成するルーズベルト大統領〜スターク作戦総長に「Nagumo対策」の判断任せたハル・引き上げるハルゼー・連合艦隊司令部の交錯する思い〜」の話でした。

目次

「違う方向を向いていた」連合艦隊司令部

左上から時計回りに、山本五十六 連合艦隊司令長官、南雲忠一 第一航空艦隊司令長官、草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長、山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研、Wikipedia)

とにかく、お互いが「違う方向を向いていた」としか言いようがない連合艦隊幹部。

空母を逃したのは残念だが、
ハワイは大いに叩いた!

続けて、ハワイに第二次攻撃を
すべきだ!

「積極的に攻撃しよう」と主張する山本長官と山口司令官。

もう十分だ!
十分すぎるくらいだ!

ここまで艦隊を
無事に出動させるだけでも大仕事だった・・・

対して、「ある程度の戦果で十分」とする南雲長官と草鹿参謀長。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

これ以上の攻撃は
「下衆の戦法」だ!

沈没する戦艦アリゾナ(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

米空母は
不在であったのは事実だが・・・

多数の戦艦を撃沈し、
真珠湾の基地を破壊し尽くした!

おそらく、
米軍の将兵の戦死者も1,000名は有に超えるだろう・・・

この草鹿参謀長の考えは、事実でした。

事実、米海軍・米太平洋艦隊の真珠湾基地には大ダメージを与えていたのでした。

第一航空艦隊(ビッグマンスペシャル 連合艦隊上巻 勃興編 世界文化社)

さらに、
我が艦隊からは損失艦が一艦もない!

確かに、この「日本軍側にほとんど損失がないのに、米軍側に大ダメージ」という戦果。

これが
大戦果でなくて、なんなのだ!

大いに勇む草鹿参謀長。

戦果ゼロのウェーク島攻撃

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

この草鹿参謀長の意見に大いに同感である南雲長官。

確かに、
草鹿君の言う通りだ!

ここで、下衆の戦法で、
ミッドウェーなど攻撃して・・・

我が軍の空母が
撃沈されたら、それこそとんでもないことです!

うむ。
山本長官の指令に対しては・・・

山本長官の顔を立てて、
ウェーク島は攻撃しましょう。

うむ・・・
それが良いな・・・

それでは、ウェーク島攻撃は
任せる・・・

はっ
お任せください!

草鹿参謀長は一部の艦隊を分け、ウェーク島を攻撃に向かいます。

ウェーク島には
大した米軍はいないだろう・・・

南雲機動部隊のハワイ奇襲攻撃の航路図(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

和を重視した山本五十六長官:唇噛む山口司令官が感じた「嫌な予感」

宇垣纏 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

南雲機動部隊からの「ウェーク島を攻撃する」電信を受信した連合艦隊司令部。

機動部隊がウェーク島を
攻撃に向かう模様!

な、
なんだと!

なぜ、ミッドウェーを
やらない?

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

・・・・・

やはり、南雲は
やらないか・・・

やむを得ん!
ここで、我が連合艦隊司令部と赤城司令部が・・・

この二つの司令部で
関係が不味くなるのは避けねば・・・

日本海軍の中で、抜群に「人情味あふれる」人物であった山本長官。

非常に「部下思い」であり、将兵の一人一人を大事にしてきました。

海軍兵学校卒業期名前専門役職
32山本 五十六航空連合艦隊司令長官
36南雲 忠一水雷第一航空艦隊司令長官
38三川軍一水雷第三戦隊司令官
40宇垣 纏大砲連合艦隊参謀長
40山口 多聞航空第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介航空第一航空艦隊参謀長
42加来 止男航空飛龍艦長
連合艦隊幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(1941年12月)

そして、

米国と
戦うからには・・・

我が将兵全てが、
全てが大いなる力を発揮せねば・・・

と考えた山本長官。

山本長官は、宇垣参謀長に話しかけます。

宇垣
参謀長・・・

まあ、
仕方あるまい・・・

ミッドウェーを攻撃して、
大きな被害を与えれば満点だが・・・

ハワイまで攻撃に行って、
我が空母が無傷であることは、喜ぶべきだ。

はっ!

山本長官はガッカリするも、

まずは
大戦果だ!

と喜びます。

第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)

ウェーク島は大した艦艇もなく、爆撃はすぐに終了しました。

ウェーク島、
爆撃完了!

よし!
凱旋だ!

全ての
艦艇へ!

速やかに内地へ
帰投せよ!

これで、長かった真珠湾奇襲攻撃が終了しました。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(WIkipedia)

なんと
中途半端な・・・

落胆する第二航空戦隊を率いる山口司令官でした。

ここで、中国大陸などで戦い続けた百戦錬磨の将軍であった山口司令官。

その高い能力だけではなく、その豊富な経験から独自の勘が身についていました。

嫌な予感が
する・・・

ひょっとすると、
ひょっとするとだが・・・

ミッドウェー島が、
連合艦隊に災いをもたらすのでは・・・

この山口司令官の直感は、半年程後に現実のこととなったのでした。

新歴史紀行

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