着艦失敗の懸念に悩む山口多聞〜自身の生命懸ける戦争・イライラが募る山口司令官と逡巡する南雲長官・諦観する連合艦隊司令部・山本五十六長官と宇垣纏参謀長〜|真珠湾奇襲攻撃57・太平洋戦争

前回は「赤城へ直談判に乗り込むことを目論む山口多聞司令官〜大きくズレる山口司令官と南雲長官の思惑・悩む山本長官と積極派の宇垣纏参謀長〜」の話でした。

目次

イライラが募る山口司令官と逡巡する南雲長官

山口多聞 第二航空戦隊司令官(WIkipedia)
山口多聞

はやく第二次攻撃を
しなければ、戦機が去ってしまう!

新歴史紀行
真珠湾攻撃で損傷を受けた米国艦船(歴史街道2021年12月号 PHP研究所)

米空母不在とは言え、戦艦や航空機に多大な損害を与えた真珠湾奇襲攻撃。

さらには、これだけの打撃を与えている中、

山口多聞

かなりの打撃を与えたから、
米海軍の死傷者数は、かなりのものだろう・・・

米海軍・海兵隊の将兵にも多数の死傷者が出ていることは確実です。

山口多聞

だが、さらに
さらに米海軍を叩かねば!

新歴史紀行
真珠湾攻撃(歴史人2021 年8月号 ABCアーク)
山口多聞

あと一歩、もう一撃を加えれば、
米海軍に致命傷を与えられる!

山口多聞

攻撃した艦船の修理を行う工廠か、
石油を備蓄する石油タンクの攻撃がベストだ!

山口多聞

どちらでも良いから、
とにかく早急に攻撃を!

新歴史紀行
第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)

ところが、南雲長官・草鹿参謀長率いる赤城司令部は、第二次攻撃に異常に消極的でした。

山口多聞

戦争は
積極的でなければならん!

優れた頭脳を持ち、極めて先見性に富んだ山口司令官の考えは非常に正当でした。

山口多聞

ここで、司令部と私が
揉めていては、戦機は去る・・・

そして、周囲に米軍機が飛んでいる中、

山口多聞

私が、赤城の南雲長官に
直談判にゆく!

命を懸けてでも赤城に乗り込んで、時間談判に向かうことを決意した山口司令官。

山口多聞

とにかく、
私を乗せて赤城へ向かえ!

蒼龍幕僚A

ははっ!
承知しました!

激昂する山口司令官の異常なまでのド迫力に、押されてしまう幕僚たち。

山口多聞

赤城の
草鹿参謀長へ伝えよ!

山口多聞

今から、
山口がそちらへ行く、とな!

蒼龍幕僚A

ははっ!
今すぐに!

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
赤城幕僚B

飛龍より
入電!

赤城幕僚B

山口司令が、
こちらへ向かう模様!

草鹿龍之介

米軍機が飛び回っていて、周囲を
敵味方の銃弾や爆弾が飛び交っているのに・・・

草鹿龍之介

司令官クラスの提督が
飛行機に乗って空を移動するのか・・・

草鹿龍之介

到底
考えられんことだ・・・

海軍兵学校卒業期名前専門役職
32山本 五十六航空連合艦隊司令長官
36南雲 忠一水雷第一航空艦隊司令長官
37小沢 治三郎航空南遣艦隊司令長官
38三川軍一水雷第三戦隊司令官
40宇垣 纏大砲連合艦隊参謀長
40大西 瀧治郎航空第十一航空艦隊参謀長
40福留 繁大砲軍令部第一部長
40山口 多聞航空第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介航空第一航空艦隊参謀長
連合艦隊幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(1941年12月)

そして、海兵で山口の一期後輩の草鹿は、山口の性格をよく知っていました。

草鹿龍之介

山口さんは学生時代から、
異常に熱かった・・・

草鹿龍之介

あの人の
ことだ・・・

草鹿龍之介

本当に赤城に
飛んでくるかもしれん・・・

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
草鹿龍之介

山口さんが
赤城へ来るならば・・・

草鹿龍之介

現場の指揮系統が混乱しますが、
いかがしますか?

南雲忠一

うむ・・・
困ったな・・・

南雲長官は逡巡を続けまていました。

南雲忠一

山口を止めるには、
第二次攻撃するしかないのか?

南雲忠一

第二次攻撃に関しては、
やらなくて良いだろうか?

草鹿龍之介

もう攻撃は
十分です・・・・

草鹿龍之介

これ以上攻撃しては、
我が軍の損害も大きくなります。

草鹿龍之介

加えて、不在の敵空母が後方から
攻撃してくる可能性があります。

南雲忠一

うむ・・・

着艦失敗の懸念に悩む山口多聞:自身の生命懸ける戦争

新歴史紀行
第二航空戦隊 空母蒼龍(Wikipedia)

後に第二戦隊の旗艦は空母飛龍に変更となりますが、真珠湾奇襲攻撃時の旗艦は蒼龍でした。

その蒼龍に座乗して、式をとっていた山口司令官。

山口多聞

確かに米軍機と味方の航空機が飛んでいる中、
赤城へ行くのは非常識かもしれん・・・

山口多聞

だが、私の生命を懸けてでも
戦い抜くのだ!

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)

戦争である以上、指揮官である司令官といえども「自身の生命を懸ける」ことを考え続ける山口司令官。

蒼龍幕僚A

山口司令!
準備完了しました!

蒼龍幕僚A

しかし、大変な強風で、発艦はできても、
着艦に非常な困難があります!

山口多聞

な、
なんだと!

蒼龍幕僚A

赤城に、
うまく着艦できない可能性があります・・・

山口多聞

そうか・・・
う〜む・・・

第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)
蒼龍幕僚A

加えて、敵機来襲もあり、味方の同士討ちを
起こす可能性があります。

蒼龍幕僚A

赤城へ行くのは、なんとか見直して
頂けないでしょうか・・・

山口多聞

うむ・・・
そうか・・・

山口多聞

赤城へ行くのは、
難しいか・・・

山口多聞

赤城に着艦失敗しても、
私がどうなっても良い・・・

山口多聞

だが、若い搭乗員たちを、
巻き込むわけにはいかぬ・・・

自身の生命は「勝つためにはどうでも良い」が、若い部下を道連れにするわけにはいきません。

諦観する連合艦隊司令部:山本五十六長官と宇垣纏参謀長

宇垣纏 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
宇垣纏

第二次攻撃出撃に関して、前線の司令部で
揉める可能性があります・・・

傲岸な性格でしたが頭脳明晰であり、山口司令官の海兵同級生であった宇垣参謀長。

南雲長官・山口司令官・草鹿参謀長の性格はよく理解していました。

宇垣纏

おそらく、性格が合わない南雲さん、山口、
草鹿は言い争っているのではないでしょうか・・・

宇垣纏

ここは連合艦隊司令部として、
攻撃命令を出しますか?

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
山本五十六

いや・・・・・

山本五十六

・・・・・

天を仰いで諦観する山本長官。

山本五十六

泥棒だって、
帰りは怖いものさ・・・

山本五十六

奇襲攻撃した後の南雲も
そんな気持ちだろう・・・

諦めるかのように、ポツンとつぶやく山本長官。

宇垣纏

放っておいて、
良いでしょうか?

山本五十六

うむ・・・
まあ・・・

なんとなく煮え切らない山本長官。

乾坤一擲の奇襲攻撃は、戦術としては成功していました。

奇襲攻撃を「泥棒の行為」に喩えた山本長官。

この時、山本長官は、まさか「宣戦布告が攻撃後」であったことは知る由もありませんでした。

それでも、「奇襲攻撃は騙し討ちに近い行為」であることを認識していた山本長官。

だからこそ、自らの機動部隊を「泥棒」に例えたのでしょう。

山本長官の真意は不明ですが、この先の日本海軍の運命を予感させるものだったのかもしれません。

山本五十六

とにかく、米軍に勝つためには、
奇想天外なことを実行しなければ!

「米軍に勝つためならばなんでもやる」意思を強く持っていた山本長官。

これほどまでに強き意思で真珠湾奇襲攻撃を強行したならば、第二次攻撃も強行すべきでした。

山本長官は、南雲司令部に対し、

山本五十六  (架空)

真珠湾への
第二次攻撃を命ずる!

「第二次攻撃の命令」をハッキリと出すべきでした。

いずれにしても、もはや連合艦隊司令部の姿勢は、

宇垣纏

ならば、前線の一航艦の
赤城司令部に判断を任せましょう・・・

「前線の判断に任せる」と決まりました。

そして、この判断は日本海軍にとって凶となり、米海軍にとって吉と出ることになります。

次回は上記リンクです。

新歴史紀行

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次