前回は「赤城へ直談判に乗り込むことを目論む山口多聞司令官〜大きくズレる山口司令官と南雲長官の思惑・悩む山本長官と積極派の宇垣纏参謀長〜」の話でした。
イライラが募る山口司令官と逡巡する南雲長官
はやく第二次攻撃を
しなければ、戦機が去ってしまう!
米空母不在とは言え、戦艦や航空機に多大な損害を与えた真珠湾奇襲攻撃。
さらには、これだけの打撃を与えている中、米海軍・海兵隊の将兵にも多数の死傷者が出ていることは確実です。
あと一歩、もう一撃を加えれば、
米海軍に致命傷を与えられる!
攻撃した艦船の修理を行う工廠か、
石油を備蓄する石油タンクの攻撃がベストだ!
どちらでも良いから、
とにかく早急に攻撃を!
ところが、南雲長官・草鹿参謀長率いる赤城司令部は、第二次攻撃に異常に消極的でした。
戦争は
積極的でなければならん!
優れた頭脳を持ち、極めて先見性に富んだ山口司令官の考えは非常に正当でした。
ここで、司令部と私が
揉めていては、戦機は去る・・・
そして、周囲に米軍機が飛んでいる中、命を懸けてでも赤城に乗り込んで時間談判に向かうことにした山口司令官。
とにかく、
私を乗せて赤城へ向かえ!
ははっ!
承知しました!
激昂する山口司令官の異常なまでの迫力に、押されてしまう幕僚たち。
赤城の
草鹿参謀長へ伝えよ!
今から、
山口がそちらへ行く、とな!
ははっ!
今すぐに!
飛龍より
入電!
山口司令が、
こちらへ向かう模様!
米軍機が飛び回っていて、周囲を
敵味方の銃弾や爆弾が飛び交っているのに・・・
司令官クラスの将軍が
飛行機に乗って移動するのは考えられん・・・
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 専門 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 航空 | 連合艦隊司令長官 |
36 | 南雲 忠一 | 水雷 | 第一航空艦隊司令長官 |
37 | 小沢 治三郎 | 航空 | 南遣艦隊司令長官 |
38 | 三川軍一 | 水雷 | 第三戦隊司令官 |
40 | 宇垣 纏 | 大砲 | 連合艦隊参謀長 |
40 | 大西 瀧治郎 | 航空 | 第十一航空艦隊参謀長 |
40 | 福留 繁 | 大砲 | 軍令部第一部長 |
40 | 山口 多聞 | 航空 | 第二航空戦隊司令官 |
41 | 草鹿 龍之介 | 航空 | 第一航空艦隊参謀長 |
ところが、海兵で山口の一期後輩の草鹿は、山口の性格をよく知っています。
山口さんは学生時代から、
異常に熱かった・・・
あの人の
ことだ・・・
本当に
赤城に飛んでくるかもしれん・・・
山口さんが
赤城へ来るならば・・・
現場の指揮系統が混乱しますが、
いかがしますか?
うむ・・・
困ったな・・・
南雲長官は逡巡を続けます。
山口を止めるには、
第二次攻撃するしかないのか?
第二次攻撃に関しては、
やらなくて良いだろうか?
もう十分です。
これ以上攻撃しては、
我が軍の損害も大きくなります。
加えて、不在の敵空母が後方から
攻撃してくる可能性があります。
うむ・・・
着艦失敗の懸念に悩む山口多聞:自身の生命懸ける戦争
確かに米軍機と味方の航空機が飛んでいる中、
赤城へ行くのは非常識かもしれん・・・
だが、私の生命を懸けてでも
戦い抜くのだ!
戦争である以上、指揮官である司令官といえども「自身の生命を懸ける」ことを考え続ける山口司令官。
山口司令!
準備完了しました!
しかし、大変な強風で、発艦はできても、
着艦に非常な困難があります!
なんだと!
赤城に、
うまく着艦できない可能性があります・・・
う〜む・・・
加えて、敵機来襲もあり、味方の同士討ちを
起こす可能性があります。
赤城へ行くのは、なんとか見直して
頂けないでしょうか・・・
そうか・・・
赤城へ行くのは、
難しいか・・・
赤城に着艦失敗しても、
私がどうなっても良い・・・
しかし、若い搭乗員たちを、
巻き込むわけにはいかぬ・・・
自身の生命は「勝つためにはどうでも良い」が、若い部下を道連れにするわけにはいきません。
諦観する連合艦隊司令部:山本五十六長官と宇垣纏参謀長
第二次攻撃出撃に関して、前線の司令部で
揉める可能性があります・・・
傲岸な性格でしたが、頭脳明晰であり、山口司令官の海兵同級生であった宇垣参謀長。
南雲長官・山口司令官・草鹿参謀長の性格はよく理解していました。
おそらく、性格が合わない南雲さん、山口、
草鹿は言い争っているのではないでしょうか・・・
ここは連合艦隊司令部として、
攻撃命令を出しますか?
いや・・・・・
・・・・・
天を仰いで諦観する山本長官。
泥棒だって、
帰りは怖いものさ・・・
奇襲攻撃した後の南雲も
そんな気持ちだろう・・・
諦めるかのように、ポツンとつぶやく山本長官。
放っておいて、
良いでしょうか?
うむ・・・
まあ・・・
なんとなく煮え切らない山本長官。
乾坤一擲の奇襲攻撃は、戦術としては成功していました。
奇襲攻撃を「泥棒の行為」に喩えた山本長官。
この時、山本長官は、まさか「宣戦布告が攻撃後」であったことは知る由もありませんでした。
それでも、「奇襲攻撃は騙し討ちに近い行為」であることを認識していたからこそ「泥棒」に例えたのでしょう。
山本長官の真意は不明ですが、この先の日本海軍の運命を予感させるものだったのかもしれません。
とにかく、米軍に勝つためには、
奇想天外なことを実行しなければ!
この「米軍に勝つためならばなんでもやる」意思を強く持っていた山本長官。
これほどまでに強き意思で真珠湾奇襲攻撃を強行したならば、第二次攻撃も強行すべきだったかもしれません。
いずれにしても、もはや連合艦隊司令部の姿勢は、
ならば、前線の一航艦の
赤城司令部に判断を任せましょう・・・
と決まりました。
そして、この判断は日本海軍にとって凶となり、米海軍にとって吉と出ることになります。
次回は上記リンクです。