赤城へ直談判に乗り込むことを目論む山口多聞司令官〜大きくズレる山口司令官と南雲長官の思惑・悩む山本長官と積極派の宇垣纏参謀長〜|真珠湾奇襲攻撃55・太平洋戦争

前回は「ブル・ハルゼーの出番〜活路を見出すキング司令官・世界最強艦隊Nagumo・石油タンクを優先防衛へ・合理的思考の米海軍〜」の話でした。

目次

大きくズレる山口司令官と南雲長官の思惑

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
草鹿龍之介

大勝利だ!
乾坤一擲の大勝負に勝ったぞ!

根が軽い草鹿参謀長は、戦艦などを撃沈して意気揚々です。

新歴史紀行
沈没する戦艦アリゾナ(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

ところが、第二航空戦隊を率いる山口司令官は「第二次攻撃を強く要望」しています。

草鹿龍之介

もう十分だ!
内地(日本本土)へ帰ろう!

と思っている赤城司令部ですが、山口司令官に続く「第二次攻撃支持者」が登場しました。

三川軍一 第三戦隊司令官(Wikipedia)
三川軍一

南雲長官、
今こそ第二次攻撃を!

第三戦隊司令官の三川軍一司令官は、歴戦の提督であり、その能力は高く評価されていました。

三川司令官までもが、強く「第二次攻撃の要望」を出してきたじょうきょうになった赤城司令部。

それでもなお、

草鹿龍之介

第二次攻撃は
不要だ・・・

顔をしかめた草鹿参謀長。

草鹿龍之介

そんな悠長なことをやっていたら、
こちらの空母が大打撃を受ける可能性がある・・・

これも正論と言えば正論でした。

赤城幕僚B

どうやら、飛龍の山口司令官が
赤城に来る模様です!

こうして赤城司令部が逡巡しているのに苛立って、山口司令官が直談判にやってくることになりました。

草鹿龍之介

ふむう・・・
山口司令官が来るのか・・・

草鹿龍之介

この敵機がうろついている中、
本当に来るのだろうか・・・

半信半疑ながら、草鹿参謀長は、

草鹿龍之介

無茶なことだが、山口さんなら
やりかねない・・・

海兵で山口と一期しか違わない草鹿龍之介は、山口多聞の性格をよく知っていました。

草鹿龍之介

長官!山口司令官が、赤城へ来る
飛行機を準備させています・・・

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
南雲忠一

あいつの
ことだ・・・

南雲忠一

上空を敵機が飛んでいようと、
本気で来るつもりだろう。

草鹿龍之介

山口司令官が、ここへ乗り込んできたら、
いかがしますか?

南雲忠一

・・・・・

南雲忠一

山口が、
優秀なのは認める・・・

南雲忠一

だが、
山口は生意気すぎる・・・

ここで、真珠湾奇襲攻撃の具体的作戦を軍令部で検討していた時のことを思い出す南雲長官。

この時も、山口司令官は、

山口多聞

真珠湾の石油タンク・工廠も
攻撃すべきです!

「石油タンク・工廠の攻撃」を主張していたのです。

南雲忠一

大体、私は海兵36期卒業に対して、
山口は40期卒業・・・

南雲忠一

4年も違うことに加え、
私の方がベテランなんだ!

南雲長官と山口司令官の間で、感情的な行き違いが発生していたのでした。

赤城へ直談判に乗り込むことを目論む山口多聞司令官

山口多聞 第二航空戦隊司令官(WIkipedia)
山口多聞

遅い!
何やってるんだ!

蒼龍幕僚A

山口司令!
飛行機の準備が整いました!

山口多聞

よしっ!
準備できたか!

山口多聞

すぐに
赤城へ行くぞ!

新歴史紀行
第二航空戦隊 空母蒼龍(Wikipedia)
蒼龍幕僚A

し、しかし、
山口司令!

蒼龍幕僚A

敵機が付近にいるので、護衛戦闘機の
準備をお待ち下さい・・・

山口多聞

そんなもの、
待ってられるか!

蒼龍幕僚A

しかし、
山口司令が飛ぶとなると・・・

蒼龍幕僚A

少なくとも、
護衛戦闘機3機は必要です!

山口多聞

護衛なんぞ、
いらん!

第二航空戦隊 空母飛龍(Wikipedia)
山口多聞

米軍に撃ち落とされたら、
それまでだ!

山口多聞

すぐに
出動!

蒼龍幕僚A

し、
しかし・・・

山口多聞

聞こえんのか!
これは命令だ!

蒼龍幕僚A

ははっ!
ただちに!

上官から「命令」と言われては反論できません。

山口司令官の搭乗する飛行機を、準備する部下達。

蒼龍幕僚A

本当に
大丈夫だろうか?

新歴史紀行
第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)

赤城では、山口司令官が来る準備をしていました。

海軍兵学校卒業期名前専門役職
32山本 五十六航空連合艦隊司令長官
36南雲 忠一水雷第一航空艦隊司令長官
37小沢 治三郎航空南遣艦隊司令長官
38三川軍一水雷第三戦隊司令官
40宇垣 纏大砲連合艦隊参謀長
40大西 瀧治郎航空第十一航空艦隊参謀長
40福留 繁大砲軍令部第一部長
40山口 多聞航空第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介航空第一航空艦隊参謀長
連合艦隊幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(1941年12月)
草鹿龍之介

こんな戦闘中に、
司令官クラスの将官が飛行機で移動するのは、異常だが・・・

草鹿龍之介

本気で山口司令官は、
来るかもしれん!

草鹿龍之介

山口司令官の飛行機は、
決して攻撃せぬよう!

赤城幕僚B

ははっ!

悩む山本長官と積極派の宇垣纏参謀長

宇垣纏 連合艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

前線の第一航空艦隊をはじめとする攻撃隊の報告を待つ連合艦隊司令部。

宇垣参謀長と山本長官が話し合っていました。

宇垣纏

ここは
ぜひ第二次攻撃をやって頂きたいですが・・・

宇垣纏

南雲さんは消極的な
ところがあります・・・

宇垣纏

南雲さんに、
第二次攻撃の命令を出しますか?

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
山本五十六

うむ・・・

ここで、唇を強く噛み締める山本長官。

山本五十六

しかし、
命令を出したところで・・・

山本五十六

南雲は、
やらないだろう・・・

新歴史紀行
南雲機動部隊のハワイ奇襲攻撃の航路図(歴史人2021年8月号 ABCアーク)
山本五十六

真珠湾まではるばる行って、
攻撃が成功しているだけでも、良いのかもしれん・・・

宇垣纏

しかし、米海軍をもう一押しすれば、
大打撃を与えられます・・・

山本五十六

うむ・・・

真珠湾奇襲攻撃の実行は軍令部の反対を押し切るだけでも、大変なことでした。

そして、第一航空艦隊の人事でも揉めに揉めたこの奇襲作戦。

海軍・軍令部・連合艦隊の意思疎通は、とても万全と言えるレベルではなかったのが実情でした。

次回は上記リンクです。

新歴史紀行

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