前回は「石油タンク保全に動く米軍〜救援を止められるハルゼー司令官・キンメル長官の反撃・決め手に迷うキング司令官〜」の話でした。
前人未到の「大空母部隊」の大航海
数多くの米戦艦を撃沈し、米軍の基地航空隊にも痛撃を与えた南雲機動部隊。
もはや米海軍を、
十分叩いただろうか・・・
単冠湾をひっそりと出撃した機動部隊は、米海軍に気づかれずに遥か彼方のハワイ真珠湾まで到着しました。
これは当時「前代未聞のこと」でした。
空母がこれほど遠くに「攻撃に向かう」ことは「考えられなかった」のでした。
現実としては、ルーズベルト大統領は既に「日本が攻撃する」ことを知っていました。
そろそろ、
Japanが攻撃してくるな!
HawaiやPhilippineの基地に
Japanの動きを通知しますか?
いや、
その必要はない・・・
「日本軍の攻撃」を見越しておきながら、「わざと」ハワイ真珠湾に事前通告をしなかったルーズベルト大統領。
このことを考える時、南雲機動部隊が「隠密にハワイまで到達できた」のは、「米軍の意図」であった面もあります。
そうはいっても、これほどの大部隊を引き連れて、米国含む様々な国の艦船に気づかれなかった機動部隊。
ここまで
やっとの思いできたんだ・・・
南雲長官は、神経が張り詰めた日々を過ごし、目前で攻撃が大成功しているのを目の当たりにして、
もう戦果は
十分ではないだろうか・・・
と感じていました。
そして、同様に「もう十分だ」と考える草鹿龍之介参謀長。
もう
十分です!
第二次攻撃隊に攻撃させれば、
米軍の猛反撃を受けるでしょう。
現時点で、我が空母のダメージは
ほとんどありません!
現実問題としては、「空母1,2隻の大破・撃沈」を覚悟していた南雲機動部隊。
それに対して「空母がほぼ無傷」というのは奇跡的なことでした。
うむ。
それでは、そろそろ引き上げるか!
歴戦の将・三川軍一司令官の「第二次攻撃」具申を却下した赤城司令部
第一航空艦隊司令部が、このような状況の中、苛立つ山口司令官。
ええい!
一体、南雲司令長官は、何をぐずぐずしているのだ!
我らは、
攻撃準備完了しているのだ!
第二次攻撃を意見具申していたのは、山口司令官だけではありませんでした。
第一航空艦隊の南雲司令長官に次ぐ次席指揮官である、三川軍一第三戦隊司令官。
戦艦金剛などを率いる、歴戦の提督である三川司令官は、南雲機動部隊の次席指揮官でした。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 専門 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 航空 | 連合艦隊司令長官 |
36 | 南雲 忠一 | 水雷 | 第一航空艦隊司令長官 |
37 | 小沢 治三郎 | 航空 | 南遣艦隊司令長官 |
38 | 三川軍一 | 水雷 | 第三戦隊司令官 |
40 | 宇垣 纏 | 大砲 | 連合艦隊参謀長 |
40 | 大西 瀧治郎 | 航空 | 第十一航空艦隊参謀長 |
40 | 福留 繁 | 大砲 | 軍令部第一部長 |
40 | 山口 多聞 | 航空 | 第二航空戦隊司令官 |
41 | 草鹿 龍之介 | 航空 | 第一航空艦隊参謀長 |
海兵38期卒の三川司令官は、南雲長官の2期下であり、山口司令官の2期上でした。
そして、南雲長官と同じ「水雷のプロ」であった三川司令官は、戦艦や巡洋艦の優れた指揮官でした。
三川司令官もまた、第二次攻撃実施を主張します。
米軍基地に、
さらなる攻撃をするべき!
今こそ、
その戦機だ!
南雲長官!
ご決断を!
・・・・・
いや、
もういいのだ!
ところが、南雲司令長官は、次席指揮官である三川司令官の具申も退けます。
長官!
真珠湾の石油タンクなどを攻撃すべきです!
もはや十分。
これ以上、我が軍の被害を拡大してはならぬ。
長官!
ご再考ください!
いや、これ以上戦果を拡大しようとすると、
米軍から大きな反撃を受けるだろう・・・
赤城司令部へ直談判へ臨もうとする山口多聞司令官
南雲長官と三川司令官がやり合っている間も、山口司令官はイライラして待っていました。
ええい!
南雲長官に「第二次攻撃準備完了」の発光信号を再度送れ!
はっ!
了解です!
我レ、第二次攻撃準備完了!
・・・・・
赤城から
返信ありません!
なんだと・・・
ええい!
埒があかぬわ!
私自ら
赤城に乗り込む!
南雲長官に、
第二次攻撃を直談判するのだ!
私を赤城まで乗せる飛行機を、
大至急用意せよ!
承知しました。
焦る山口司令官でした。
この頃、山本長官は米空母不在にガッカリしながらも、機動部隊が敵基地を攻撃するかどうか、ヤキモキしていました。
南雲は真珠湾の基地を、さらに
攻撃するだろうか・・・
いや、奴のことだ・・・
第二次攻撃はしまい・・・
南雲長官の性格を知っている山本長官は、「第二次攻撃を期待」しながらも不安視して待っていました。