前回は「アナポリス海軍兵学校の同期の仇討ちへ〜怒り狂うブルハルゼー司令官・ハワイ真珠湾へ全速力で向かうハルゼー〜」でした。
大戦果に湧く第一航空戦隊
真珠湾奇襲攻撃において、数多くの戦艦などを撃沈して大興奮の第一航空艦隊司令部。
これは想定以上の
大戦果だ!
大戦果です!
見ろ!
敵の戦艦が沈んでゆくぞ!
一航戦の南雲司令長官・草鹿参謀長も大興奮です。
空母赤城・加賀を擁する第一航空戦隊では、皆が喜びの嵐の中にありました。
思った以上の
大戦果ですね!
我が帝国海軍が
世界最強よ!
特に、調子に乗りやすい性格の草鹿参謀長。
よしっ!
してやったり!
と、草鹿は瞳を輝かせます。
まさに剣術の極意の如き、
凄まじい奇襲攻撃だ!
剣道の達人であった草鹿龍之介の目指す「極意」を具現化したような攻撃でした。
内地(日本)で戦果報告を受け、空母不在にガッカリした山本長官。
・・・・・
とりあえず、奇襲攻撃の成功にまずは一安心していました。
米空母不在は
残念だ・・・
だが、奇襲攻撃がうまくゆき、
良かった・・・
苦悩極める山口多聞司令官:軍機と戦艦大和と戦艦武蔵
ここで、大幹部の中でただ一人、唇をかみ苦悩続けていたのが山口司令官です。
・・・・・
後世有名な巨大戦艦大和は、海軍内部でも非常に限られた人間しか知りません。
軍隊の秘密事項は「軍機保護法」によって定められ、機密ランクが定められていました。
ランクの上から「軍機」「軍極秘」「極秘」「秘」「部外秘」の5ランクに分かれていました。
ランク | 名称 |
5 | 軍機 |
4 | 軍極秘 |
3 | 極秘 |
2 | 秘 |
1 | 部外秘 |
この上に「国家機密」があります。
「国家機密」は軍ではなく、政府の外交上極めて重要な事項で「例外的扱い」です。
「極秘」は基本的に「超秘密」という意味ですが、上から3番目。
そして、巨大戦艦大和・武蔵建造に関する機密度は、なんと最上ランク「軍機」扱いだったのです。
もちろん、山口司令官は「軍機」である戦艦大和・武蔵の存在を知る立場。
我々、空母機動部隊が敵空母を叩かずに、
戦艦を攻撃してしまっては・・・
戦艦大和・武蔵は
一体何と戦うのだ?
山口は俯いて、飛行甲板を凝視しながら考えます。
戦艦と空母の役目:全く異なる戦術思想の砲撃と航空戦
米太平洋艦隊の戦艦を倒すのは、
戦艦大和・武蔵の役目だ!
それの敵戦艦を、
我々が撃沈してしまった・・・
そして、我々機動部隊が
倒さねばならない敵空母は不在・・・
南雲さんも、草鹿もバカだ!
これでは何もならない!
これでは、
何のために奇襲攻撃したのか・・・
この攻撃自体の意味が
なくなってしまうのではないか・・・・・
一人絶句する山口司令官を、幕僚たちは見守るしかありませんでした。
戦艦大和・武蔵は
一体何を攻撃するのだ?
戦艦は、敵艦・敵基地に砲弾を
喰らわせることは可能だ。
一人空を見つめ続けて、考えて続ける山口司令官。
だが、敵基地・敵空母から発艦した航空隊の
猛烈な攻撃を受けては、たまらない。
奇襲攻撃に喜ぶ南雲司令長官・草鹿参謀長らを横目に、悩み続ける山口司令官でした。
分厚い装甲に守られた
巨大戦艦大和・武蔵といえども・・・
航空機の波状攻撃には、
保たないだろう・・・
いつかは、いつかは
必ず撃沈されてしまう・・・
次回は上記リンクです。