前回は「「日本大嫌い」な将軍ブル・ハルゼー〜大衝撃受けるハルゼー・アナポリス海軍兵学校同期のキンメル長官・猛牛ブルの戦いの始まり・張飛の如き猛将の肖像〜」でした。
唇噛む山口多聞二航戦司令官
事前の諜報活動から、米空母発見を目論んでいた山口司令官。
まさか、
米空母がいないとは・・・・・
今日、この日に
米空母はいるはずなのだ・・・
事前にハワイ真珠湾の米太平洋艦隊基地付近に諜報者を多数派遣していた日本海軍。
吉川猛夫たちは、事前に「真珠湾を見下ろせる」場所を探し回りました。
真珠湾を明確に見下ろせる
場所が良い・・・
「真珠湾を見下ろせる」は沢山ありますが、「落ち着いて、米軍に気取られない」場所が良いです。
どこかの高台から、ジーッと真珠湾の基地を見ていたら、諜報員だとすぐに米軍に勘付かれてしまいます。
どこかの店が
良いのだが・・・
そして、「真珠湾を見張れる部屋」のある店の
馴染みの客となって・・・
私が「その場所の光景を見るのが好き」という
ことにして、ゆっくり監視するのが望ましい・・・
この視点から、ハワイの高台にある店を探し回った吉川たち。
あった!
この店が良い!
とある料理店で格好の「真珠湾の軍港を見渡す部屋」を見つけました。
そして、その店に何度も通って「馴染み客」となることに成功した吉川少尉。
吉川少尉は偽名の「森村正」という名前を名乗っていました。
こんにちは!
また来ました!
あら〜、Morimuraさん、
また来たのね!
僕はこのお店の
料理と景色が大好きなんです!
ゆっくりしていって
くださいね!
このような感じで、「格好の真珠湾監視場所」を得た吉川。
真珠湾の艦船の動きには
ある規則性があるな・・・
やはり、日本より週末を大事にする
米国の連中は、週末には戻ってくる・・・
そして、「日曜日には真珠湾に米空母がいる」という確信を得た吉川。
軍令部に向けて、吉川は、
日曜日には、米空母は
真珠湾にいるでしょう・・・
米空母レキシントン・ホーネット共に、
「ほぼ間違いない」でしょう・・・
と打電しました。
この吉川少尉の「確実な情報」から、海や月の自然現象を考慮して決定した12月8日の真珠湾奇襲攻撃。
攻撃に入る前には、
米空母レキシントン・ホーネットのうち、
どちらが真珠湾にいるか?
両方いてくれれば、
なお良い!
そう考えていた、山口司令官。
ところが、
米空母は
不在です!
米空母が
不在だと・・・・・
想定していなかった「空母が真珠湾不在」の確報を聞き、愕然とします。
唇を噛んで、虚空を睨む山口司令。
そんな
馬鹿な!
真っ向対立する山口司令官と草鹿参謀長:一期違いのぶつかるプライド
不在の米空母に対して、
米空母を
捜索すべし!
と赤城の第一航空艦隊司令部へ具申した山口司令官。
米空母捜索は
不要!
ところが、草鹿参謀長は山口司令官の具申をあっさり却下しました。
奇襲部隊において、航空派の大幹部である山口司令官と草鹿参謀長。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 専門 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 航空 | 連合艦隊司令長官 |
36 | 南雲 忠一 | 水雷 | 第一航空艦隊司令長官 |
37 | 小沢 治三郎 | 航空 | 南遣艦隊司令長官 |
40 | 宇垣 纏 | 大砲 | 連合艦隊参謀長 |
40 | 大西 瀧治郎 | 航空 | 第十一航空艦隊参謀長 |
40 | 福留 繁 | 大砲 | 軍令部第一部長 |
40 | 山口 多聞 | 航空 | 第二航空戦隊司令官 |
61 | 吉川 少尉 | 水雷 | 日本大使館付武官(諜報員) |
それぞれ海兵40期、41期です。
1期しか違いません。
敵戦艦を
これほど撃沈するとは!
これは
大戦果だ!
草鹿参謀長は、敵戦艦を数多く撃沈し、
大いに勇んでいます!
自他共に認める「航空派の第一人者」である草鹿参謀長。
それに対して、山口司令官は中国大陸で陸上の海軍航空隊を指揮した豊富な実績があります。
山口司令官と草鹿参謀長が「一期違い」というのも、ネガティブに作用しました。
山口さんは、確かに優秀で
戦闘でも極めて優れている・・・
だが、私は空母航空戦を
研究し尽くした「第一人者」なのだ!
同じ学校の先輩後輩は「二期以上離れている」と上下関係を双方が認識します。
ところが「一期違い」だと「上下関係を認識」するものの、プライドがぶつかる傾向があります。
航空隊の指揮は、
一航艦参謀長の私に任せてもらいたい!
なぜ、
いない米空母を探索しない!?
調子に乗りやすい草鹿参謀長に対して、極めて冷静で現実的な山口司令官でした。
空母の大きな打撃力:戦艦大和に託された役目
草鹿参謀長は、
大戦果を挙げた、と意気揚々です!
幕僚から、話を受ける山口司令官。
草鹿の
大バカめが!
空母がいなければ、
いくら戦艦を叩いたところで仕方ない・・・
敵戦艦を叩くために
巨大戦艦大和・武蔵を建造したのではないか・・・
日本海海戦以来、「敵を日本近海で迎撃する」方針を固く堅持してきた日本海軍。
戦艦大和は既にほとんど完成し、戦艦武蔵も間もなく完成します。
戦艦大和に託された役目は、敵の戦艦や巡洋艦などを撃沈することです。
敵戦艦を叩くのは、
戦艦大和・武蔵の役目ではないのか!
戦艦に
空母は倒せない・・・
いかに大和・武蔵の巨砲といえども、
砲弾の射程範囲内に敵空母がいないからだ!
遠隔からの猛烈な攻撃。
それこそが空母の本質。
これはまずい・・・
本当にまずい・・・・・
今、目前で空母航空隊の極めて大きな打撃力を、日本が実戦で示しています。
米空母を
討ち漏らしては・・・
これからの戦争に
大きな禍根を残す・・・
唇を噛み続ける山口司令官でした。
次回は上記リンクです。