遅すぎた宣戦布告〜国務省へ駆け込む野村大使・ハル国務長官の冷静な対応・万全体制だった米国の暗号解読・大喜びのチャーチル首相・米国という巨大ボイラー〜|真珠湾奇襲攻撃24・太平洋戦争

前回は「遅れに遅れた宣戦布告〜猛攻撃続ける南雲機動部隊・日本を甘く見ていたルーズベルト大統領・仰天するキング司令官・苛立ちながら待つハル国務長官・山本長官の信念のゆくえ〜」の話でした。

目次

遅すぎた宣戦布告:国務省へ駆け込む野村大使

野村吉三郎 米国大使(連合艦隊 勃興編上巻 世界文化社)

当初、12月7日(ワシントン時間、以下同様)13時にハル国務長官に面会予約していた野村大使。

野村吉三郎

すみません!
13時の面会時間を45分後にずらしてください!

大慌てで「ハル長官との面会時間を45分後ろ倒しにした」ものの、

野村吉三郎

やっと、
文書の清書が完成した・・・

45分後にずらした13:45にすら、間に合いませんでした。

野村吉三郎

だが、約束の時間には、
もう間に合わない・・・

野村吉三郎

奇襲攻撃は、
予定通り開始しているのだろうか・・・

日本から米国への宣戦布告である「帝国政府見解」を持参した野村大使は、

野村吉三郎

やっと、
国務省に到着した・・・

14:00頃、ようやく米国務省に到着します。

野村大使は慌てふためいて、駆け込むようにハル国務長官の待つ部屋へ向かいました。

野村吉三郎

遅れて
申し訳ございません!

Cordell Hull米国務長官(Wikipedia)
Hull

いえ・・・

Hull

どうぞ・・・
お入りください・・・

「いつも通りの外交儀礼」で応じたハル長官。

Hull

バカが、
待たせやがって!

Hull

Mr.Nomura,、ところで、
今日は何の御用でしょうか?

あくまで、「何も知らない」フリを貫くハル国務長官。

野村吉三郎

日本政府から
米政府への文書です。

そして、ハル国務長官に「帝国政府見解」を手渡しました。

14:20頃のことでした。

ハル国務長官の冷静な対応:万全体制だった米国の暗号解読

沈没する戦艦アリゾナ(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

数日前から、この事態を想定していたハル国務長官。

真珠湾奇襲攻撃開始の13:25から40分経過後に、ハル国務長官に宣戦布告文書を手渡されます。

Hull

・・・・・

誰にも見せたことのない、非常に険しい表情をハル国務長官。

既に全文を傍受・解読・英訳された文書を読み、内容は全て事前に把握していたハル国務長官。

あたかも「初めて読んだかのように」装って、文書に目を通します。

Hull

・・・・・

この時には、米艦隊の想像を絶するような大損害が、次々とハル長官の元に報告されていました。

すでに「奇襲攻撃」ではなく「騙し打ち」になってしまった事実を知っている野村大使。

唇を噛んで、ハル国務長官の反応を見守ります。

野村吉三郎

もう
遅かったか・・・

事前の傍受・解読内容とほぼ一致している文章を読んで、ハル国務長官は思います。

Hull

情報部から届いた文書と、
ほぼ一緒だ・・・

Hull

我が情報部の
傍受・解読能力は万全!

大損害に胸を痛めていたところに、情報部の能力の高さにほくそ笑むハル長官。

Hull

おっと、そうだった!
Nomuraがいたな・・・

Hull

目の前のバカの相手も
しなければな・・・

そして、ハル国務長官は目の前にいる野村大使に、極めて冷ややかに告げます。

大爆発する米駆逐艦ショー(歴史人2021年8月号 ABCアーク)
Hull

私は、
50年の公職生活を通じて・・・

Hull

これほど恥知らずで、これほど
虚偽と歪曲に満ちた文書を見たことがない!

Hull

こんなに大掛かりな嘘と、こじつけを言い出す国が、
この世にあろうとは・・・・・

Hull

今の今まで
夢想だにもしなかった!

Hull

我ながら
名セリフだな!

野村吉三郎

はっ・・・

野村吉三郎

しまった・・・
遅かったか・・・

大いに後悔した野村大使。

だが、全てが遅すぎたのです。

Hull

もう
お前には用がない!

心の内を全く表に出さず、淡々と「外交」をしたハル長官。

Hull

日本政府のご意向は理解したので、
私から大統領に報告します。

そして、ハル国務長官は、追い出すように野村大使を去らせます。

大喜びのチャーチル首相:米国という巨大ボイラー

Franklin Roosebelt米大統領(Wikipedia)
Hull

つい先ほど、Japanから最後通牒が、
届きました・・・

Hull

我々の
想定通りの内容でした・・・

Roosebelt

そうか!
これからだな!

ハル国務長官から連絡を受けたルーズベルト大統領。

Roosebelt

奇襲攻撃どころか、
騙し打ちをしたJap!

Roosebelt

どう
反撃してやろうか!

ルーズベルト大統領は、万全の手段を考えます。

Adolf Hitler独総統(Wikipedia)
Hitler

Europe全土を、
我がGermanyのものに!

1941年ヨーロッパ戦況地図(連合艦隊 勃興編上巻 世界文化社)

この頃、ヒトラー率いるドイツ軍から連日猛烈な爆撃を受け続けていた大英帝国。

首都ロンドンも壊滅的状態となり、絶体絶命の崖っぷちに追い込まれていました。

この40年ほど前までは、「世界最強国」であったはずの大英帝国。

今や「米国の後塵を拝する」立場とはいえ、「ヨーロッパ最強国」を自負していたのでした。

Winston Churchill英首相(Wikipedia)
Churchill

Europe大陸が、
ほとんどGermany・Axisとなってしまった・・・

Churchill

だが、だがだ!
私の辞書に「降伏」という文字はない!

Churchill

我がGreat Britainは負けん!
絶対に負けんぞ!

真珠湾で日本海軍が米海軍に猛烈な攻撃をしている間、

Churchill

なにっ!ついにJapanが
USを攻撃したか!

奇襲攻撃の連絡を受けた地球の裏側のチャーチル首相。

Churchill

やっと待ち望んでいた
展開になったぞ!

Churchill

これで、
世界最強のUSが参戦する!

Churchill

United Statesという
巨大ボイラーが動き出したのだ!

新歴史紀行
英戦艦 Prince of Wales(Wikipedia)
Churchill

Prince of Walesで
Japanを叩き潰してやる!

Churchill

よし!
これで我がGreat Britainの勝利だ!

Churchill

Hitlerめ!
見てろよ!

Churchill

HitlerもMussoliniも、
Japanも全て倒してくれるわ!

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
山本五十六

・・・・・

乾坤一擲の真珠湾奇襲攻撃は、山本五十六長官が予想だにしなかった方向に進みつつあったのでした。

次回は上記リンクです。

新歴史紀行

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