前回は「真珠湾奇襲攻撃 21〜新高山ノボレ1208〜」でした。

14通に分けられた、米国への宣戦布告となる最後通告書。
13通目までは、手渡す12月7日(ワシントン時間、以下同様)の前日、12月6日の夕方まで送られていました。
12月6日は土曜日で、本国からの電文の確認や清書もせずに大使館員は帰宅してしまいました。
さらに、一部の大使館員は送別会に出ていたのです。

週末は、のんびり過ごそう。
日米交渉が暗礁に乗り上げている中、緊張感が全くない野村大使たち、米国大使館員たち。
米国大使館がこのような状況の中、南雲司令長官率いる機動部隊は、少しずつ真珠湾に迫ります。


山本長官の指示通り、遠路はるばる「時間通りに」ハワイ真珠湾に到着しました。


南雲長官を補佐する草鹿龍之介第一航空艦隊参謀長。





もうすぐ真珠湾です。



いよいよだな!
「南雲は適任ではない」と考えていました山本長官。


しかし、大部隊を率いて米軍に悟られることなく、時間通りに敵地であるハワイ真珠湾に到達します。
南雲長官の統率力は、かなり高いでしょう。
12月7日13:30に、開始予定だった真珠湾奇襲攻撃。
綿密な計画通りに真珠湾に近づき、航空隊は静かに準備を進め、13:20頃に準備完了します。
攻撃隊指揮官の淵田美津雄 第一航空艦隊赤城飛行長。





各空母、攻撃準備完了です。
すぐにでも、攻撃開始できます!



分かった。
攻撃命令を待て!
ちらりと時計を見る草鹿参謀長。



今は13:20だ。



13:00に米国に宣戦布告文書が
手渡されているはず。
草鹿参謀長は、南雲長官に伝えます。



各空母、攻撃準備完了です。
すぐにでも、攻撃開始できます。



予定より5分早いですが。



構わん。
出撃せよ。



承知しました。
草鹿参謀長は、奮って各空母へ伝えます。



各空母へ!
攻撃開始せよ!



お任せ下さい!
少し早い13:25に真珠湾奇襲攻撃隊は攻撃を開始します。
幹部で最も戦意の高い、山口多聞第二航空戦隊司令官。





行け!
米海軍を壊滅してこい!
大戦果をお待ちください!


攻撃隊の第一弾が、真珠湾に投下されました。
奇襲攻撃を予想だにしていなかった、キンメル米太平洋艦隊司令長官。


激しい爆撃に驚愕します。



何事だ!
軍事演習にしては、大袈裟だが。



まさか。
何者かに奇襲攻撃されているのか!?
確認して参ります!
米海軍士官は急いで、現場へゆき、想像を絶する報告をキンメル長官に伝えます。
日本軍の奇襲攻撃です!



なんだと!!!



そんな馬鹿な!!
予想もしてなかった日本軍による奇襲攻撃にキンメル米太平洋艦隊司令長官は驚愕し、必死の防戦を指示します。
淵田美津雄 第一航空艦隊赤城飛行長率いる航空隊は奮って、米太平洋艦隊の艦船を多数の航空機で猛烈に攻撃します。



これはいける!


本来、この12月7日13:25には、すでにハル国務長官手渡されているはずの、最後通告書。
まだ、ハル長官に手渡されていなかったのです。
それどころか真珠湾攻撃開始した12月7日13:25の瞬間、ワシントンの日本大使館は大混乱でした。



まだ、清書が完了しないのか!



もうすぐ、真珠湾攻撃が始まってしまう・・・
米国政府への最後通告である「帝国政府見解」の、暗号電文の解読・翻訳・清書が遅れていたのです。
せめて、前日に届いていた13通の文書を前日中に解読・翻訳・清書していれば良かったのです。、
当日の、12月7日になって、最後通告書の重要性に気づいたのです。



なんだ、これは!!



最後通告書ではないか!



急げ!
急いで清書せよ!
そして、1通目から、解読・翻訳・清書作業を行っていたのです。
肝心の開戦通告は14通目にあり、13通目までは日米関係のこれまでの経緯でした。
さらに、覚書の機密保持から、外務省本省が大使館に通告してきました。



米人タイピストに、文章を打たせてはならない!



いつも米人タイピストに任せていたから・・・
タイプに慣れない日本人書記官が清書したため、時間がかかる一方です。


この少し前、野村大使は、ハル国務長官に面会を申し出ていました。



13時に伺います。



承知しました。
お待ちしております。



ふん。とうとう来るか!



どの面下げて、最後通告書を持ってくるのか。



それも見ものだな。
すでに前日に、外務省本省から大使館へ送られている13通の文書の内容を全て把握していたハル長官。
「宣戦布告してくる」ことを、すでに知っています。



来る理由は知っているが。



何も知らないフリだ。
文書の作成が全く間に合わないため、野村大使は国務省へ再度電話します。



会見時間を45分伸ばし、13:45に変更お願いします。



承知しました。
お待ちしております。



一体何考えているんだ?



これも日本の作戦のうちか?
野村大使は、大使館員に文書作成を急がせませました。



早く文書作成しろ!
分かりました。
懸命にやっておりますが、終わりません・・・



もう奇襲攻撃は始まっている・・・



こんなことなら、もっと文書に配慮しておくべきであった・・・
狂ったように焦る大使館員たち。
会見時間を45分伸ばした13:45は、「すでに奇襲攻撃が開始されている状況」なのです。


日本海軍が13:25に真珠湾を奇襲攻撃する前、ルーズベルト大統領もハル国務長官も「真珠湾攻撃」を予想していました



日本の奴らに、先に攻撃させてやろう!



米国民は、参戦に賛成するだろう。



大手振るって、参戦できる!
ハル長官から、連絡が入ります。



日本の野村大使から、面会希望の連絡です。



いよいよ、宣戦布告だな。



奇妙なことに、会見時間を後にずらしてきました。



日本の奴らが、何か企んでいるかもしれません。



情報部は、引き続き通信傍受・解読続けています。



分かった。
そっちは任せたぞ!
電話を切り、天井を見つめるルーズベルト大統領。



日本に先制攻撃させるのは良いが・・・



あまりに過大な損害を受けるのは避けたい。



適度な損害が、ちょうど良い。
ハワイ真珠湾が攻撃される可能性を、危惧するキング司令官。





もし、ジャップに真珠湾を奇襲攻撃されたら・・・



どこまでの損害が出るか。



我が太平洋艦隊は大丈夫なのか。
じっと注視しているキング司令官。
ちょうどこの頃、日本において真珠湾奇襲攻撃の大きな戦果を最も心待ちにしていた人物。
それは、他ならぬ山本五十六連合艦隊司令長官でした。

