宣戦布告文書を待つハル国務長官〜ルーズベルト大統領の狙い・遅れる宣戦布告通達・日本外務省からワシントン大使館へ・大混乱の大使館員たち・準備が全く出来てなかった野村大使〜|真珠湾奇襲攻撃22・太平洋戦争

前回は「緊張感が欠如していた日本大使館〜東郷外務大臣の発令と野村・来栖米大使の対応・ニイタカヤマノボレ1208・世界最強の空母機動部隊出撃・奮起する南雲長官と山口司令官〜」の話でした。

目次

遅れる宣戦布告通達:日本外務省からワシントン大使館へ

野村吉三郎 米国大使(連合艦隊 勃興編上巻 世界文化社)

14通に分けられた、日本政府から米国政府への宣戦布告となる「最後通告書」。

この「最後通告書」は、続々とワシントンの在米日本大使館に送られてきました。

13通目までは、手渡す12月7日(ワシントン時間、以下同様)の前日、12月6日の夕方まで送られていました。

12月6日は土曜日で、本国からの電文の確認や清書もせずに大使館員は帰宅してしまいました。

さらに、一部の大使館員は送別会に出ていたのです。

野村吉三郎

週末は、
のんびり過ごそう。

日米交渉が暗礁に乗り上げている中、緊張感が全くない野村大使たち、米国大使館員たち。

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

米国大使館がこのような状況の中、南雲司令長官率いる機動部隊は、少しずつ真珠湾に迫っていました。

南雲忠一

真珠湾へ向け、
進撃を続けよ!

南雲機動部隊のハワイ奇襲攻撃の航路図(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

山本長官の指示通り、遠路はるばる「時間通りに」ハワイ真珠湾に到着しました。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

南雲長官を補佐する草鹿龍之介第一航空艦隊参謀長。

草鹿龍之介

もうすぐ
真珠湾です・・・

南雲忠一

いよいよ、
いよいよだな!

新歴史紀行
山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
山本五十六

航空艦隊の長官は、
南雲ではなく・・・

山本長官は、実は「南雲は適任ではない」と考えていたと思われます。

南雲長官は、大部隊を率いて米軍に悟られることなく、時間通りに敵地であるハワイ真珠湾に到達しました。

南雲忠一

はるばるハワイまで
艦隊を引き連れてきたのだ!

この点で南雲長官の統率力は、かなり高かったでしょう。

12月7日13:30に、開始予定だった真珠湾奇襲攻撃。

綿密な計画通りに真珠湾に近づき、航空隊は静かに準備を進め、13:20頃に準備完了します。

攻撃隊指揮官の淵田美津雄 第一航空艦隊赤城飛行長。

淵田美津雄 第一航空艦隊赤城飛行長(Wikipedia)
淵田美津雄

各空母、攻撃準備完了です!
すぐにでも、攻撃開始できます!

草鹿龍之介

分かった!
攻撃命令を待て!

ちらりと時計を見る草鹿参謀長。

草鹿龍之介

今は
13:20・・・

草鹿龍之介

13:00に米国に宣戦布告文書が
手渡されているはずだ・・・

草鹿参謀長は、南雲長官に伝えます。

草鹿龍之介

各空母、攻撃準備完了です・・・
すぐにでも、攻撃開始できます!

草鹿龍之介

予定より
5分早いですが・・・

南雲忠一

構わん!
出撃せよ!

草鹿龍之介

はっ!
承知しました!

草鹿参謀長は、奮って各空母へ伝えます。

草鹿龍之介

各空母へ!
攻撃開始せよ!

淵田美津雄

はっ!
お任せ下さい!

少し早い13:25に真珠湾奇襲攻撃隊は攻撃を開始します。

幹部で最も戦意の高い、山口多聞第二航空戦隊司令官。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(WIkipedia)
山口多聞

行け!
米海軍を壊滅してこい!

蒼龍幕僚A

大戦果を
お待ちください!

真珠湾を攻撃する日本軍(歴史街道2021年12月号 PHP研究所)

攻撃隊の第一弾が、真珠湾に投下されました。

奇襲攻撃を予想だにしていなかった、キンメル米太平洋艦隊司令長官。

Husband Kimmlel米太平洋艦隊司令長官(Wikipedia)
Kimmlel

何事だ!
軍事演習にしては、大袈裟だが。

キンメル長官は、予想外だった激しい爆撃に驚愕しました。

Kimmlel

まさか。
何者かに奇襲攻撃されているのか!?

米海軍将兵P

確認して
参ります!

米海軍士官は急いで、現場へゆき、想像を絶する報告をキンメル長官に伝えます。

米海軍将兵P

Japanの
奇襲攻撃です!

Kimmlel

な、
なんだと!!!

Kimmlel

そんな
馬鹿な!!

予想もしてなかった日本軍による奇襲攻撃にキンメル米太平洋艦隊司令長官は驚愕し、

Kimmlel

とにかく、
防戦せよ!

米海軍将兵P

はっ!
ただちに!

必死の防戦を指示します。

淵田美津雄 第一航空艦隊赤城飛行長率いる航空隊は奮って攻撃を続けました。

そして、米太平洋艦隊の艦船を多数の航空機で猛烈に攻撃します。

山口多聞

これは
いける!

大混乱の大使館員たち:準備が全く出来てなかった野村大使

東郷茂徳 外務大臣(Wikipedia)

本来、この12月7日13:25には、すでにハル国務長官手渡されているはずの最後通告書。

まだ、ハル長官に手渡されていなかったのです。

それどころか真珠湾攻撃開始した12月7日13:25の瞬間、ワシントンの日本大使館は大混乱でした。

野村吉三郎

まだ、清書が
完了しないのか!

外務省職員E

一生懸命
書類を作成しています!

野村吉三郎

もうすぐ、真珠湾攻撃が
始まってしまう・・・

外務省職員E

もう少し
お待ちを!

米国政府への最後通告である「帝国政府見解」の、暗号電文の解読・翻訳・清書が遅れていたのです。

せめて、前日に届いていた13通の文書を前日中に解読・翻訳・清書していれば良かったのです。

当日の、12月7日になって「最後通告書の重要性」に気づいたのです。

野村吉三郎

なんだ、
これは!!

野村吉三郎

最後通告書では
ないか!

野村吉三郎

急げ!
急いで清書せよ!

そして、1通目から、解読・翻訳・清書作業を行っていたのです。

肝心の開戦通告は14通目にあり、13通目までは日米関係のこれまでの経緯でした。

さらに、覚書の機密保持から外務省本省が、

東郷茂徳

米人タイピストに、
文章を打たせてはならない!

「米人タイピスト使用不可」と、駐米大使館に通告してきました。

野村吉三郎

これでは、
全然進まない・・・

外務省職員E

ちょっと
不慣れでして・・・

野村吉三郎

いつも
米人タイピストに任せていたのだが・・・

タイプに慣れない日本人書記官が清書したため、時間がかかる一方です。

宣戦布告文書を待つハル国務長官:ルーズベルト大統領の狙い

Cordell Hull米国務長官(Wikipedia)

この少し前、野村大使は、ハル国務長官に面会を申し出ていました。

野村吉三郎

13時に
伺います!

Hull

承知しました・・・
お待ちしております・・・

Hull

ふん。
とうとう来るか!

Hull

どの面下げて、
最後通告書を持ってくるのか。

Hull

それも
見ものだな!

すでに前日に、外務省本省から大使館へ送られている13通の文書の内容を全て把握していたハル長官。

「宣戦布告してくる」ことを、すでに知っています。

Hull

「来る理由」は、
知っているが・・・

Hull

何も
知らないフリだ・・・

文書の作成が全く間に合わないため、野村大使は国務省へ再度電話します。

野村吉三郎

会見時間を45分伸ばし、
13:45に変更お願いします。

Hull

承知しました。
お待ちしております。

Hull

一体
何考えているんだ?

Hull

これも
Japanの作戦か?

野村大使は、大使館員に文書作成を急がせませました。

野村吉三郎

早く
文書作成しろ!

外務省職員E

はいっ!
分かりました!

外務省職員E

懸命にやっておりますが、
終わりません・・・

野村吉三郎

もう奇襲攻撃は
始まっている・・・

野村吉三郎

こんなことなら、
もっと文書に配慮しておくべきであった・・・

狂ったように焦る大使館員たち。

会見時間を45分伸ばした13:45は、「すでに奇襲攻撃が開始されている状況」なのです。

Franklin Roosebelt米大統領(Wikipedia)

日本海軍が13:25に真珠湾を奇襲攻撃する前、

Roosebelt

US国民は、
参戦に賛成するだろう。

ルーズベルト大統領もハル国務長官も「日本の先制攻撃」を予想していました。

「予想していた」と言うよりも、「日本が先制攻撃するように仕掛けていた」説もあります。

Roosebelt

US国民は、
参戦に賛成するだろう。

Roosebelt

大手振るって、
参戦できる!

そこへ、ハル長官から、連絡が入りました。

Hull

JapanのNomuraから、
面会希望の連絡です。

Roosebelt

いよいよ、
宣戦布告だな!

Hull

奇妙なことに、
会見時間を後にずらしてきました。

Hull

日本の奴らが、
何か企んでいるかもしれません。

Hull

情報部は、
引き続き通信傍受・解読続けています。

Roosebelt

分かった。
そっちは任せたぞ!

電話を切り、天井を見つめるルーズベルト大統領。

Roosebelt

Japanに先制攻撃させる
のは良いが・・・

Roosebelt

あまりに過大な損害を
受けるのは避けなければ!

Roosebelt

「適度な損害」が、
ちょうど良い。

ハワイ真珠湾が攻撃される可能性を、危惧するキング司令官。

Ernest King司令官(Wikipedia)
King

もし、Japanに
真珠湾を奇襲攻撃されたら・・・

King

どこまでの
損害が出るか・・・

King

我がUS太平洋艦隊は、
大丈夫なのか。

じっと、注視し続けるキング司令官。

ちょうどこの頃、虚空を睨んでいた人物が日本にいました。

真珠湾奇襲攻撃の「大きな戦果」を、最も心待ちにしていた人物でした。

新歴史紀行
山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)
山本五十六

・・・・・

それは、他ならぬ山本五十六連合艦隊司令長官でした。

次回は上記リンクです。

新歴史紀行

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