真珠湾奇襲攻撃 18〜宣戦布告通達時刻の行方〜|太平洋戦争

前回は「真珠湾奇襲攻撃 17〜奇襲攻撃のタイミング〜」でした。

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山本長官は悩み続けます。

「日本空母2,3隻撃沈の可能性あり」という図上演習の厳しい結果。

このを考えると、日本海軍の空母のダメージを最小限にするためには、「奇襲攻撃直前」に宣戦布告するのが良いのです。

奇襲攻撃の直前に、宣戦布告すれば良いのだが・・・

日本も批准していたハーグ条約では、「最後通牒・宣戦布告なしに戦争を始めてはならない」という規約があります。

政府と軍部の間で宣戦布告に関して議論がされ、東郷茂徳外相は「最後通牒」として米国へ交渉打ち切りを提言します。

東郷茂徳 外務大臣(Wikipedia)

交渉決裂の場合、いつ、米国に最後通牒を出しますか。

しかし、奇襲攻撃の発覚を懸念した山本長官はじめとする海軍は、出来るだけ直前の宣戦布告・最後通告を要望します。

ハーグ条約では宣戦布告を実際の戦闘の「どのくらい前の時間までにしなければならない」という規定はありません。

理論上は、戦争開始一分前でも良いのです。

危険を承知で、真珠湾奇襲攻撃を裁可した、永野軍令部総長。

永野修身 軍令部総長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

一分前というわけには、いかないから・・・

一時間前か、二時間前が妥当な線だろう。

作戦実行責任者の南雲第一航空艦隊司令長官。

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

あんな遠くまで、米海軍に見つからずに攻撃に行くだけで、大変です。

無理のない計画にして欲しい。

山本司令長官・南雲長官・永野総長で「1時間前か2時間前か」と相談します。

最終的に山本長官が、またもや押し切ります。

奇襲攻撃の30分前に、米国に宣戦布告して頂きたい!

30分前ですか・・・

海軍軍人は命をかけているのです!

分かりました。
何とかしましょう。

宣戦布告は、ギリギリの「奇襲攻撃30分前」と決まります。

「30分前」となると攻撃を実施する南雲機動部隊にとっても大変な重荷です。

奇襲攻撃30分前の宣戦布告は、無茶です。

「米海軍に気づかれずに、こっそりとハワイ真珠湾に近づく」だけでも大変な苦労です。

さらに「時間をきちんと管理して、宣戦布告前に攻撃してはならない」のです。

きちんと時間を管理して、真珠湾近くに早く到達してしまったら「宣戦布告まで周辺で待つ」必要があります。

第一航空艦隊旗艦 空母赤城(Wikipedia)

海流などによって進路・速度を制御する海上航行を行い、戦場に向かう。

それは、極めて大きな困難です。

せめて奇襲攻撃1時間前に、宣戦布告として下さい。

南雲司令長官を補佐する、草鹿龍之介第一航空艦隊参謀長。

草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山本長官。
それは、無茶というものですよ。

しかし、山本はまたここで押し切ります。

出来ないなら、今すぐ辞表を出せ!

・・・

分かりました。
何とか、やってみせます。

真珠湾奇襲攻撃はワシントン時間で13:30でしたが、その30分前の13:00に米国に宣戦布告することに決定しました。

これには作戦実施部隊の幹部全員が

流石に、それは難しいのでは・・・

と考えますが、山本司令長官が、強行に進める以上仕方ありません。

山本長官に再考を求めたところで、

出来ないなら、今すぐ辞表を出せ!

となるのは、目に見えています。

剣術の達人であった草鹿参謀長。

もう、えいやっとやるしかないな。

日本側の代表であるものの、統帥権が天皇にあり、権力が対してない東條英機 内閣総理大臣兼陸軍大臣。

東條英機 内閣総理大臣兼陸軍大臣(国立国会図書館)

奇襲攻撃の30分前に、宣戦布告か・・・

そんなに直前で、大丈夫なのか?

東條首相も不安を感じます。

しかし、首相といえども陸軍軍人である東條首相。

海軍には、あまりモノを強くは言えない状況です。

まあ、海軍が「やる」というなら、やるんだろう。

とにかく、宣戦布告が遅れて、
卑怯者呼ばわりされることだけは絶対に避けろ!

承知しました。

東條首相は、東郷外務大臣に厳命します。

米国で「最後通牒を出す責任者」の野村米大使。

野村吉三郎 米国大使(連合艦隊 勃興編上巻 世界文化社)

前線の体制を万全にしておけ!

分かりました。

と答えた野村大使でしたが、米国大使館は、それとは裏腹な雰囲気でした。

野村大使以下の館員たちは「国家の命運を左右する」という緊張感を持たずに、日々過ごしていたのでした。

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