前回は「真珠湾奇襲攻撃のタイミング〜奇襲攻撃と宣戦布告・ハルノートへの日本の対応見つめる米国・極めて投機性が強い危険な賭け・図上演習の厳しい結果を無視した山本長官〜」の話でした。
奇襲攻撃と宣戦布告通達時刻の行方

山本長官は悩み続けます。

日本空母が2、3隻撃沈の
可能性あり!
「日本空母が2〜3隻喪失」の可能性を示唆した図上演習の厳しい結果。
この結果を考えると、日本海軍の空母のダメージを最小限にするためには、一つしかありません。


それは、「奇襲攻撃直前」に宣戦布告するのが良いのです。



奇襲攻撃の直前に、
宣戦布告すれば良いのだが・・・



直前であればあるほど、
米海軍への打撃が大きい・・・



そして、我が日本海軍の
ダメージは小さい・・・
日本も批准していたハーグ条約では、「最後通牒・宣戦布告なしに戦争を始めてはならない」という規約があります。
政府と軍部の間で、宣戦布告に関して議論が続けられました。


そして、東郷茂徳外相は「最後通牒」として米国へ交渉打ち切りを提言します。



交渉決裂の場合、いつ、
米国に最後通牒を出しますか?
奇襲攻撃の発覚を懸念した山本長官はじめとする海軍は、



宣戦布告は、
可能な限り直前が良い・・・
出来るだけ直前の宣戦布告・最後通告を要望します。
ハーグ条約では、宣戦布告を、実際の戦闘の「どのくらい前の時間までに」という規定はありません。
理論上は「戦争開始一分前」でも良いのです。


危険を承知で、真珠湾奇襲攻撃を裁可した永野軍令部総長。



一分前というわけには、
いかないから・・・



一時間前か、
二時間前が妥当な線だろう・・・
この永野総長の意見は、極めて常識的でありました。


作戦実行責任者の南雲第一航空艦隊司令長官。



あんな遠くまで、
米海軍に見つからずに攻撃に行くだけで、大変です!



無理のない
計画にして欲しい!



やはり、
2時間前か3時間前くらいが良いかと・・・
南雲長官の「2,3時間前」という意見もまた、至極真っ当でした。
「30分前」の超直前となった米国への宣戦布告


山本司令長官・南雲長官・永野総長で、



ギリギリを狙うなら、
一時間前だろうな・・・



もう少し
ギリギリを!



海を航海するのに、
時間を限定されてはたまらない!
「いつ米国に宣戦布告するか」の相談が続けられました。



とにかく、我が連合艦隊の
正規空母は守りたい!
最終的に山本長官が、またもや押し切りました。



奇襲攻撃の30分前に、
米国に宣戦布告して頂きたい!



30分前
ですか・・・



・・・・・
ここで、黙ってしまう東郷外務大臣。



海軍軍人は、
命をかけているのです!



分かりました・・・
何とかしましょう・・・
宣戦布告は、ギリギリの「奇襲攻撃30分前」と決まります。
「30分前」となると攻撃を実施する南雲機動部隊にとっても、大変な重荷となる事態でした。



奇襲攻撃30分前の宣戦布告は、
無茶です!
強行に押し切る山本五十六長官:「出来ぬなら辞表を」の強行姿勢


「米海軍に気づかれずに、こっそりとハワイ真珠湾に近づく」だけでも大変な苦労です。
さらに「時間をきちんと管理して、宣戦布告前に攻撃してはならない」のです。
きちんと時間を管理して、真珠湾近くに早く到達してしまったら「宣戦布告まで周辺で待つ」必要があります。
海流などによって進路・速度を制御する海上航行を行い、戦場に向かうこと。
それは、極めて大きな困難です。



せめて奇襲攻撃1時間前に、
宣戦布告として下さい!


南雲司令長官を補佐する、草鹿龍之介第一航空艦隊参謀長。



山本長官。
それは、無茶というものですよ!
ここで、山本はまたここで押し切ります。



出来ないなら、
今すぐ辞表を出せ!



・・・



分かりました。
何とか、やってみせます!
真珠湾奇襲攻撃は、ワシントン時間で13:30に決定します。
そして、その30分前の13:00に「米国に宣戦布告する」ことに決定しました。
これには作戦実施部隊の幹部全員が、



流石に、
それは難しいのでは・・・



30分前にドンピシャで、
米海軍に奇襲攻撃か・・・
「実行は、かなり難しい」と考えていました。
ところが、山本司令長官が、強行に進める以上、もはや仕方ありません。
山本長官に再考を求めたところで、



出来ないなら、
今すぐ辞表を出せ!
こうなるのは、目に見えていました。
剣術の達人であった草鹿参謀長。



もう、
えいやっとやるしかないな!


日本側の代表であるものの、統帥権が天皇にあり権力が大してない東條英機 内閣総理大臣兼陸軍大臣。



30分前
だって?



奇襲攻撃の30分前に、
宣戦布告か・・・



そんなに直前で、
大丈夫なのか?
東條首相も不安を感じます。
ところが、首相といえども陸軍軍人である東條首相。
海軍には、あまりモノを強くは言えない状況です。



まあ、海軍が「やる」というなら、
やるんだろう・・・



とにかく、宣戦布告が遅れて、
卑怯者呼ばわりされることだけは絶対に避けろ!



確かに
承知しました・・・
東條首相は、東郷外務大臣に厳命します。


米国で「最後通牒を出す責任者」の野村米大使。



前線の体制を
万全にしておけ!



はっ!
分かりました・・・
この野村大使でしたが、米国大使館は、それとは裏腹な雰囲気でした。



まあ、細かいことは
部下に任せておけば良い・・・



週末は、
どこに遊びにいこうかな・・・
野村大使以下の館員たちは「国家の命運を左右する」という緊張感を持たずに、日々過ごしていたのでした。
次回は上記リンクです。