前回は「真珠湾奇襲攻撃 16〜揺れる真珠湾奇襲攻撃のゆくえ〜」でした。

日本は「米国からの最後通牒」と受けたとった「ハル・ノート」。
「ハル・ノート」には期限がなかったので、ハル国務長官は交渉の余地は一応残していました。

これに対して、どう出てくるかは、日本次第。
米国は全ての暗号を傍受・解読して、日本を見つめます。



日本陸軍は、フィリピンを攻撃してくるだろう。



日本海軍はどうか。



アメリカ太平洋艦隊の根拠地ハワイに先制攻撃してくるかもしれない。
日本との戦争の準備をしつつも、交渉を続けます。


日本を侮っていたマッカーサー元帥。
米国本土に陸軍兵士や軍需物資の増加を求めるも、それほど強い緊張感はもっていませんでした。



俺がいるんだから、大丈夫だって!
米国がじっと日本の出方を待ち構えている間に、日本は奇襲攻撃検討の最終段階です。
「日米交渉決裂の場合、奇襲攻撃のどのくらい前に米国へ宣戦布告するか」が問題となります。


「奇襲攻撃の成功」もさることながら、山本司令長官はじめ陸海軍軍人が最も危惧していたこと。



必ず、宣戦布告後の攻撃とすること!
根が真面目な東條英機総理大臣兼陸軍大臣。





奇襲攻撃は良いが、
卑怯者になってはならない!
宣戦布告前に奇襲攻撃をしては米国を怒らせるだけではなく、世界中の恥さらしとなります。
山本と奇襲攻撃の人事で揉めた永野軍令部総長。





騙し打ちはいかんだろう。



とにかく、宣戦布告を、
必ず攻撃前に行うように!


陸海軍は、「奇襲攻撃前の宣戦布告」を外務省に強く要請します。





承知しました。



必ず奇襲攻撃前に、宣戦布告を行います。
真珠湾奇襲攻撃は「極めて投機性が強い危険な賭け」の大博打であったことは、他ならぬ山本司令長官が最も分かっていました。



真珠湾奇襲攻撃は私の信念であるが・・・



果たして、本当に上手く行くだろうか。
内心心配する山本司令長官。


事前に図上演習で検討をすると、攻撃前に米軍に見つかってしまう可能性が高かったのです。
図上演習では示唆されたこと。
それは、米軍に大きな打撃を与えるも、日本海軍虎の子の正規空母が、2,3隻撃沈される可能性です。


特に大型空母である旗艦赤城、あるいは加賀を撃沈されては、大変なことになります。
日本海軍にとって極めて大きな、取り返しのつかない大打撃となります。


しかし、山本五十六連合艦隊司令長官は強気を押し通して、図上演習の結果を無視します。



とにかく緒戦で米海軍を叩くのだ!
と強く主張して、真珠湾奇襲作戦案を押し通しました。
実際に、真珠湾に奇襲攻撃に向かう南雲忠一 第一航空艦隊司令長官。





・・・
海軍の作戦を統括し、真珠湾奇襲攻撃に反対を続け、今もなお反対の伊藤軍令部次長。


これには流石に、伊藤軍令部次長も唖然とします。
もはや「山本長官が全てを決定する空気」となります。
もともと優等生肌の山本司令長官。



確かに図上演習の結果は厳しい。



出来ることなら、奇襲攻撃直前の宣戦布告が望ましいのだが。
しかし直前を狙い過ぎて宣戦布告が「奇襲攻撃後」になることは絶対に避けねばなりません。





難しい。
どうしたものか・・・
山本長官は悩み続けますが、東條英機首相とは気安く話す間柄ではありません。



海軍が何をやっているのか、情報が上がってこない。


日本政府内で海軍と外務省で、奇襲攻撃と宣戦布告のタイミングの協議が続きます。
その間も、ルーズベルト大統領とハル国務長官は、じっと日本を見つめていました。



日本は、いつ、どう出てくるのだ?
外務省本省と米国日本大使館の間の無電の暗号を、ほぼ全て傍受・解読・翻訳して。