真珠湾奇襲攻撃指揮官に悩む山本五十六〜一切妥協しない及川海軍大臣・山本五十六と堀悌吉・肝胆相照らす仲・堀悌吉を追った艦隊派幹部・艦隊派と条約派の熾烈な争い〜|真珠湾奇襲攻撃9・太平洋戦争

前回は「航空艦隊長官人事に悩みに悩む山本五十六〜先任順序という不文律と軍令承行令・航空のプロの草鹿参謀長と源田参謀・ハンモックナンバー・人生を左右した卒業期と卒業席次〜」の話でした。

目次

真珠湾奇襲攻撃指揮官に悩む山本五十六:一切妥協しない及川海軍大臣

永野修身 軍令部総長(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山本が、それほど言うなら、
やらせてみよう!

山本を可愛がっていた永野軍令部総長。

実は、山本五十六は永野修身をあまり好きではありませんでした。

新歴史紀行
山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

永野さんとは
あまり合わないが・・・

山本を可愛がっていた永野は海軍大臣だった時に山本を海軍次官に任命しますが、

永野さんとは
合わないので・・・

と辞退しようとしていた山本に対して、

君は私が
そんなに嫌いなのかね?

「山本大好き」な永野は、山本に直接ねじ込んで、

分かりました・・・
次官になります・・・

と山本海軍次官が誕生した経緯がありました。

その永野総長をなんとか説得して、裁可を得た真珠湾奇襲作戦。

及川古志郎 海軍大臣(Wikipedia)

司令長官は、
予定通り南雲!

人事において、頑固者の及川古志郎海軍大臣は山本長官の説得に一切応じません。

もともと航空専門ではない南雲司令長官。

そもそも、山本は南雲とはウマが合わず、ロクに口をきく間柄ですらありません。

山本五十六 連合艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

日本海軍にとって「最重要作戦」とも言える作戦を実施する責任者である航空艦隊司令長官の人事です。

なんとか別の人物にしたい。
南雲の代わりに小沢が最適だがダメか・・・

誰か他に
いないか・・・

山本長官は、考え込みます。

山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

山口は優れた男で、
人望もある・・・

それこそ、優秀で熱血漢の第二航空戦隊の山口多聞司令官を、昇格させて司令長官にしたいくらいです。

海軍兵学校卒業期名前専門役職
32山本 五十六航空連合艦隊司令長官
36南雲 忠一水雷第一航空艦隊司令長官
37小沢 治三郎航空南遣艦隊司令長官
40山口 多聞航空第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介航空第一航空艦隊参謀長
連合艦隊幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(1941年9月)

山口多聞は、小沢治三郎よりもさらに3期後任(年下)です。

海兵を2位で卒業した抜群の優等生の山口ですが、卒業期も大きな要素であり、「山口は南雲・小沢の後任」です。

「山口を航空艦隊司令長官に」は、
及川さんは、検討すらしないだろう・・・

その通り!
あり得ない!

検討する
価値もない!

山本五十六と堀悌吉:肝胆相照らす仲

山本五十六(左)と堀悌吉(右)(Wikipedia)

かつて山本長官は、海軍兵学校同期の堀悌吉と大変親しい仲でした。

「肝胆相照らす仲」とは、山本五十六と堀悌吉のためにあるような言葉でした。

私は、堀という友人を
得たことを誇りに思う!

学生時代から優秀であった山本五十六は海軍兵学校卒業時11番、対して堀は首席卒業です。

堀は非常に
優秀だ!

山本は頭脳明晰で性格が穏やかな堀を尊敬もし、同期の仲間として非常に大事にしていました。

堀は、勉強ができるだけではない!
非常に優れた頭脳を持っている!

私は堀を
信頼している。

堀は、
日本海軍を引っ張る人物だ!

ロンドン軍縮条約の際に、米英に対して日本の艦船比率が抑えられそうになりました。

条約推進派の堀に対して、

艦隊は、
出来るだけ多くすべきだ!

条約派は一体
何を考えているんだ!

という艦隊派が、海軍内で争った時期がありました。

1934年のロンドン軍縮条約に海軍首席代表として出席する山本五十六(Wilipedia)

山本は日本海軍代表として米英と協議していましたが、海外においても、不穏な空気を感じ取っていた山本。

堀は
大丈夫か?

山本は、堀の身をとても心配していました。

後になって、艦隊派が大勢を占め、居場所を失った堀悌吉は海軍を追われることになります。

「追われる」とは「クビ」になったということです。

優れた頭脳を持つ堀を予備役(退官)とした連中を、山本は許せない気持ちです。

堀が
予備役・・・

・・・・・

堀がいなくなった
海軍など未練がない・・・

一度は「日本海軍を辞めよう」とすら考えた山本五十六。

堀をクビにするとは、日本海軍の
極めて大きな損失だ!

絶対に
許せん!

堀を心の友としていた山本五十六にとってそれは、心底痛恨とも言えることでした。

堀悌吉を追った艦隊派幹部:艦隊派と条約派の熾烈な争い

南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社)

艦隊派の馬鹿どもは、
一体何考えているんだ!

堀よ・・・

この時、軍令部の幹部として「艦隊派」の大物だったのが南雲長官です。

つまり、山本の考えていた「艦隊派の馬鹿ども」の一人であった南雲忠一。

山本長官にとって南雲は「堀を追った憎き連中の一人」なのです。

だいたい南雲は、私の大親友の堀を
追った一派ではないか!

「性格が全く合わず」「親友を追った連中の一人」である南雲忠一長官。

さらに極め付けは、「ズブの素人で、司令長官として全く不適任な」人物である南雲忠一。

山本は、どうしても南雲を、ハワイ奇襲部隊を率いる第一航空艦隊司令長官として是認できません。

南雲では
ダメだ・・・

最強国・米国の
太平洋艦隊の本拠地・ハワイ・・・

そのハワイを攻撃する
司令長官が南雲では・・・

どうにか
ならぬか・・・

山本長官は途方に暮れます。

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