前回は「真珠湾奇襲攻撃 1〜山本五十六の狙い〜」でした。
山本が、いつ頃からハワイ奇襲攻撃を考えていたのかは不明です。
日独伊三国軍事同盟締結直前に連合艦隊司令長官となった山本。
この頃から、日米開戦を念頭に考えていたに違いないでしょう。

山本から作戦実施計画を任された大西瀧治郎、源田実らは困難を極める中、なんとか実施計画をまとめ上げます。
そして、奇襲攻撃成功のため、「月月火水木金金」の猛訓練を行います。

しかし、このハワイ奇襲攻撃は「危険すぎる」として作戦を統括する軍令部から猛反対を受けます。

作戦を統括する永野修身 軍令部総長が反対します。

真珠湾奇襲攻撃は、
投機的要素が強すぎる。
作戦実施予定の最高指揮官である南雲忠一 第一航空艦隊司令長官も猛烈に反対していました。


そもそも米太平洋艦隊の総本部のハワイへ近づくことすら容易ではないのです。



悟られないようにこっそりと大部隊で近づいて、
米海軍と基地を奇襲攻撃をしろ!
航空に関しては素人同然の南雲司令長官を補佐する、南雲機動部隊の草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長。





そんな無茶なこと、出来るわけないだろう!
山本長官は一体何を考えているんだ!



そう。
無理!
草鹿参謀長もまた、真っ向から反対します。
連合艦隊へ作戦を指示する軍令部の事実上の最高意思決定者である伊藤整一次長。





こんな無茶な案を、
裁可することはできない。
山本長官以外、皆が猛反対です。



山本長官は博打が好きだから、
こんな投機的なことを考えるのだ。



日本海軍の虎の子の空母を全部ハワイに行かせて、
やられてしまったらどうするんだ?
みな、どうあっても賛成しません。


軍令部が同意しなければ、「作戦実行部隊」に過ぎない連合艦隊はハワイ奇襲攻撃を実施することは、許されません。
米国と断絶・戦争となった時には、米国に大きく依存していた軍需物資の確保が喫緊の課題です。
なかでも、ほとんど「米国に頼っており、内地(日本本土)でほとんど産出しない原油」の確保は最優先です。



ハワイ奇襲攻撃なんて無茶なこと言ってないで、
南方を攻撃・占領して、早く原油を確保して下さい。



危険なことは百も承知だ。
しかし、これをしなければ米海軍には勝つことは絶対にできない。



米海軍に勝つのは、通常のやり方では、絶対に不可能なのだ。
山本五十六長官には、「真珠湾奇襲攻撃こそ日本の生きる道」という信念がありました。



通常の手段では、
ハワイ奇襲攻撃の了承を得ることは不可能。
悟った山本長官は、遂に奥の手を考えます。
その「奥の手」は組織、とりわけ軍においては「禁じ手」とも言える事でした。



この手しかないが、これを使って良いものか。
山本長官は懊悩し、悩みに悩んだ事でしょう。
悩み抜いた挙句、山本五十六は米国と対峙するため、あえて「禁じ手」を使う事を決意します。



この手は、本当は禁じ手だ。



本意ではないが、この手を使うしかない。


山本長官は、海軍省及び軍令部幹部に伝えました。



ハワイ奇襲攻撃を了承頂けないなら、
私は連合艦隊司令長官を辞任します。