前回は「井伊直弼 13〜条約の行方〜」の話でした。

当時、清国(中国)と大英帝国中心とする欧米との間で勃発したアロー戦争。

近代兵器を有する欧米列強に対し、清軍は瞬く間に押されます。
そして、屈辱的な内容を含む天津条約を押しつけられます。


Japanも隣国Chinaのことは、
大いに関心があるはずだ。



そもそもChinaは、Japanの
兄貴分的存在だ。



そのChinaが、Great Britainに
ここまでやられている。



「我がUSがJapanを
Great Britainから守ってやる」と言ってやろう。
そう考えたハリス。
目付の岩瀬忠震に提案します。





Iwaseさん。
Great BritainとChinaのことは知っていますね。



もちろんです。



今、Great Britainの大艦隊が
Chinaにいます。



そのGreat Britainの大艦隊が
Japanに来たら、どうしますか?



そ、そんなことが
あるのですか。
非常に頭脳明晰で、各国事情に通じていた岩瀬。



ありえるな。
と考えます。



そこで、もしGreat Britainが
武力を背景に、Japanに不利な条約を求めたら・・・



我がUSが、
間に入りましょう。



それは有難いですな。
岩瀬は江戸城にゆき、井伊大老と相談します。
元々は優秀な頭脳を持ち、開国派だった井伊直弼。





井伊大老。
これ以上の引き伸ばしは難しいです。



しかし、勅許は
得なければならん!
井伊大老は、「きちんとした手続きを」と考えていたのです。



しかし・・・



ハリスを怒らせたら、
大変だ。
と考えた岩瀬は、言質を取ろうと考えます。



井伊大老のお考えは、
分かりました。



しかし、どうしようもない時は、
締結に踏み切って良いでしょうか?



どうしようもない時・・・



確かに、
今は国内外で何が起きてもおかしくない・・・



やむを得ない時は、
仕方あるまい。
「どうしようもない時」の判断は、個々によります。
後に「ハリスとの日米修好通商条約を強行した」と言われる大老 井伊直弼。
しっかり国学を学び、教養ある井伊大老。
井伊大老は「勅許獲得」という、きちんとしたステップを踏もうと努力していました。


第十四代将軍将軍決定において、明確な「南紀派」だった井伊大老。
しかし、日本古来の文化・歴史を学ぶ「国学を尊重する」立場としては、一橋派だったのです。
この点において、井伊大老は「両方の立場を理解する」人間であり、微妙な立場でもありました。
その中、井伊とハリスの間に挟まれた岩瀬外国奉行は、



私が「やむを得ない」判断したら、
「条約締結して良い」と言質を得た。
と理解します。
ハッキリした欧米では、あまり見受けられない「日本的な曖昧さ」が表面化した瞬間でした。
そして、この日本的な曖昧さが、のちに大きな禍根を残します。