前回は「余裕たっぷりだったチャーチル首相〜大英帝国の切り札 Phillips中将・最強コンビの投入・熾烈なバトルオブブリテン・大英帝国vsドイツ帝国〜」の話でした。
戦艦も空母もない「貧弱艦隊」南遣艦隊:完全に東を向いていた連合艦隊
真珠湾奇襲攻撃の1941年12月8日を間近に控えた、12月4日、陸軍はマレー・シンガポール攻略部隊を派遣しました。
いよいよ日米戦が始まろうとしている時、日米両方が万全の開戦準備を進めていました。
この2日前の12月2日に正式な開戦通知「ニイタカヤマノボレ一二〇八」を受信した南雲機動部隊。
いよいよ・・・
いよいよ対米戦が始まるな!
乾坤一擲の大打撃を
米海軍に喰らわせてやるのだ!
正式空母六隻を含む大部隊である南雲機動部隊=第一航空艦隊。
現実として、当時の日本海軍・連合艦隊の目は完全に東へ向いていました。
強大な米海軍に勝つのは、
至難の技だ・・・
米海軍以外の英海軍などならば、
我が連合艦隊で勝てるだろう・・・
とにかく、米海軍を
なんとかしなければならん!
そして、マレー方面の海軍の司令長官は、小沢治三郎 南遣艦隊司令長官でした。
「空母機動部隊の父」と言われる小沢は、南雲の海兵一期下です。
海軍兵学校卒業期 | 名前 | 専門 | 役職 |
32 | 山本 五十六 | 航空 | 連合艦隊司令長官 |
36 | 南雲 忠一 | 水雷 | 第一航空艦隊司令長官 |
37 | 小沢 治三郎 | 航空 | 南遣艦隊司令長官 |
40 | 山口 多聞 | 航空 | 第二航空戦隊司令官 |
41 | 草鹿 龍之介 | 航空 | 第一航空艦隊参謀長 |
対米戦は南雲さんに
お任せして・・・
私は英海軍を
叩き潰して見せよう・・・
戦艦も空母もない南遣艦隊は重巡洋艦「鳥海」など巡洋艦と駆逐艦で構成されていました。
当時、盛況を誇っており、実際「世界一の海軍力」を保有していた連合艦隊。
その視線は「完全に東の米海軍」に向かっており、南のマレーに向ける艦船は少なかったのでした。
いわば「貧弱艦隊」であったのが南遣艦隊でした。
航空戦に未来を見た山本五十六長官:「戦艦増派」却下と雷撃機への期待
この「貧弱艦隊」に対して、英海軍は初っ端から全力で乗り込んできました。
・英国における王位の法定(推定)である王子に与えられる称号
「英国皇太子」を意味する戦艦Prince of Walesをマレーに派遣した英国海軍。
この少し後に連合艦隊旗艦となる超巨大戦艦「戦艦大和」は、まだ未就役でした。
いわば、「日本の別名」である「大和」を関した戦艦大和は、文字通り「戦艦日本」でした。
本来であれば、「英国皇太子」=Prince of Walesとは「戦艦日本」である戦艦大和が戦うべきでした。
戦艦大和は
もうすぐ完成だ!
最新鋭の戦艦Prince of Walesに対して、重巡洋艦 鳥海などでは「いかにも心もとない」のが現実でした。
戦艦大和・武蔵が就役する前に、連合艦隊でPrince of Walesに対抗しうるのは戦艦長門と陸奥でした。
長らく連合艦隊の旗艦を勤めてきた長門は「連合艦隊の顔」とも言える象徴的な存在でした。
最新鋭で「完成したまもない」Prince of Walesに対して、少し旧型の戦艦長門と陸奥。
それでも、巨大な大砲を備え、Prince of Walesには十分対抗しうる存在でした。
山本長官!
Prince of Walesに対して、重巡では仕方ありません!
ここは、戦艦長門か陸奥を
マレーに派遣すべきです!
参謀・幕僚たちからは「当然の提案」が山本長官にされました。
この時点で、最重要作戦である真珠湾奇襲攻撃に向かっていない戦艦長門か陸奥はマレーに向けることが可能です。
Repulseも
かなり強力な巡洋戦艦です!
うむ・・・
たしかにな・・・
戦艦Prince of Walesと巡洋戦艦Repulseが強力な艦船であることは、山本長官は百も承知でした。
ここで、山本長官が、
では、戦艦長門を
マレーに向けよ!
と答えると思っていた幕僚たち。
ところが、山本長官の返答は意外でした。
いや・・・
戦艦長門も陸奥もマレーには不要だ・・・
えっ?それでは、小沢艦隊が
英海軍に押されてしまうのでは?
航空隊の雷撃機で十分
戦艦Prince of Walesと巡洋戦艦Repulseを倒せるだろう・・・
このように「戦艦増派」を思い切り却下した山本長官。
山本長官の回答に対して、幕僚たちは、
はあ・・・
そうでしょうか・・・
まあ、見ていよ・・・
これからは航空隊の時代だ!
こう言って、自らの信念を具現化した航空隊による航空戦に未来を見ていた山本長官。
そして、山本長官の瞳は一点を見据えて、キラリと光っていました。
次回は上記リンクです。