欧米における「小柄なYamamoto」の圧倒的存在〜慎重すぎるほど熟慮するキング司令官・イライラが爆発するハルゼー司令官〜|真珠湾奇襲攻撃64・太平洋戦争

前回は「大いに揺れる山本長官の思い〜大いに奮う赤城司令部・勇躍する南雲忠一長官と草鹿龍之介参謀長・荒れる第二航空戦隊・唇を真一文字にして考え込む山口司令官〜」の話でした。

目次

イライラが爆発するハルゼー司令官

William Halsey第二空母戦隊司令官(Wikipedia)

風貌通り、もともとかなり猪突猛進型のハルゼー司令官。

「ゴー」と言われたり「ストップ」と言われたりで、ひたすらイライラが募ります。

俺たちの出番はあるのか、
ないのか?

一体
どっちなんだ?

緊迫する中、攻撃ストップの命令を受けて、イライラするハルゼー司令官。

我々だって、
洋上にいる身・・・

我らがJapに攻撃される可能性だって
あるんだぞ!

確かに、「Nagumo攻撃」を企図するハルゼー司令官率いる空母が「攻撃される」可能性も大きいです。

新歴史紀行
第一航空艦隊(ビッグマンスペシャル 連合艦隊上巻 勃興編 世界文化社)

Nagumoの航空部隊は、
正規空母6隻で、こちらは2隻・・・

Japごときに負けるのは悔しいが、
単純な戦力では分が悪い・・・

キング司令官はハルゼー司令官を、

Halseyは
単なる猪武者!

であり「バカ」呼ばわりしていましたが、歴戦の士であるハルゼーは状況を的確に理解していました。

Nagumoに勝つには、
奇襲攻撃しなければならん!

そのためには、こちらの体制は
早急に、1秒でも早く決めるのだ!

それを「攻撃しろ」と言ったと思ったら、
「やめろ」とは、バカか?

前線で生命を張って戦っているハルゼー司令官は、イライラが爆発してしまい、

クソッ!
この馬鹿どもめが!

一人怒声をあげていました。

慎重すぎるほど熟慮するキング司令官

Ernest King司令官(Wikipedia)

真珠湾攻撃後のNagumoの不自然な
動きの理由は何だ?

Nagumo機動部隊の動きが、どうしても理解できないキング司令官。

左上から時計回りに、南雲忠一 第一航空艦隊司令長官、草鹿龍之介 第一航空艦隊参謀長、三川軍一 第三戦隊司令官、山口多聞 第二航空戦隊司令官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、歴史群像シリーズ 図説・戦国武将118 学研、Wikipedia)

山口司令官と南雲司令長官の間で、いざこざがあったとは露とも思わないキング司令官。

これは
おかしい・・・

なんらかの
理由があるはずだ・・・

こんな動きをする
Nagumoの意図はなんだ?

Nagumoは、
今どうしている!

真珠湾から
離れつつあります!

ふむう・・・

Harold Stark米海軍作戦総長(部長)

キング司令官よ・・・

Nagumoの攻撃は終了した
のではないか?

はい。
そうとも考えられます。

しかし、攻撃完了したら、
直ちに戦線を離れるでしょう。

それも
そうだ。

なにか、
理由があるはずだ・・・

海軍兵学校卒業期名前専門役職
32山本 五十六航空連合艦隊司令長官
36南雲 忠一水雷第一航空艦隊司令長官
38三川軍一水雷第三戦隊司令官
40宇垣 纏大砲連合艦隊参謀長
40山口 多聞航空第二航空戦隊司令官
41草鹿 龍之介航空第一航空艦隊参謀長
42加来 止男航空飛龍艦長
連合艦隊幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(1941年12月)

日本の連合艦隊・軍令部司令部は皆海軍兵学校卒業生で、「先輩後輩」の仲です。

海軍兵学校卒業期名前役職
Frank Knox海軍長官
29Earnest King哨戒部隊司令官
31Harold Stark米海軍作戦総長
32William Halsey第二空母戦隊司令官
32Husband Kimmel太平洋艦隊司令長官
33Chester Nimitz海軍省航海局長
米海軍幹部の専門・役職・海軍兵学校卒業期(卒業期は日本の海軍兵学校と合わせている:1941年12月)

日本同様に、米海軍の幹部たちもまたみな海軍兵学校卒業生でした。

新歴史紀行
Frank Knox海軍長官(Wikipedia)

日本海軍・連合艦隊と大きく異なる点は、フランク・ノックス海軍長官(大臣)が海兵卒でないことです。

元々、新聞記者と実業家を経て、海軍長官となったノックス長官。

海軍の実務には
詳しくないが・・・

軍政や人事は
任せてくれ!

この「外部の人間が海軍省トップ」というのは、いかにも米国らしいバランスでした。

空母Enterprise(Wikipedia)

とにかく、イライラが募るばかりのハルゼー司令官。

それで、
俺たちの役目はどうなるんですか?

とにかく
「万全の準備」だ!

はあ・・・・・

一体、
何考えてやがる!

空母Lexington(Wikipedia)

欧米における「小柄なYamamoto」の圧倒的存在

1934年のロンドン軍縮条約に海軍首席代表として出席する山本五十六(Wilipedia)

Nagumoは、
ともかく・・・

あのYamamotoが、
こんな手ぬるい攻撃をするだろうか・・・

海軍軍縮条約などで、八面六臂の活躍をした山本司令長官。

日本国内でも「海軍の顔」として有名でしたが、むしろ海外でYamamotoの名は非常に高かったのです。

身長160cmと当時の日本人男性の中でも、それほど大きくなく、海外では「小柄」な方のYamamoto。

大柄な米軍人から見れば、とても華奢なイメージです。

日米の海軍首脳・真珠湾奇襲攻撃:左上から時計回りに、山本五十六 連合艦隊司令長官、Ernest King司令官、William Halsey第二空母戦隊司令官、南雲忠一 第一航空艦隊司令長官(連合艦隊司令長官 別冊歴史読本 新人物往来社、Wikipedia)

Yamamotoは
全然違うのだ・・・

それでもなお、山本の強い信念は、米国・英国などの海軍首脳部に強い印象を与えたのでした。

あの
Yamamotoが・・・

「組織」を重視しがちな日本に対して、「個人」を重視する米英。

「Yamamotoがボスの連合艦隊」は、それほど海外に強い印象を刻んでいたのでした。

南雲機動部隊のハワイ奇襲攻撃の航路図(歴史人2021年8月号 ABCアーク)

そして、太平洋の米海軍基地や南雲機動部隊の位置を地図上で睨みながら考え続けます。

あのYamamotoが、この程度の
手ぬるい攻撃をするはずはない!

何か、
何か企んでいるはずだ!

どこか、
他に攻撃目標があるのでは?

熟慮するキング司令官でした。

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